MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

LUNA SEA "MOTHER" "STYLE"

MOTHER (ALBUM(スマプラ対応))

MOTHER

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STYLE (ALBUM(スマプラ対応))

STYLE

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 5人組ロックバンドのセルフカバーアルバム(2023年)。

 

 言わずと知れたレジェンドでありながら現役を貫くロックバンド・LUNA SEAの1994年・1996年に発売された代表作4th・5thアルバムの30年近い時を経てのセルフカバー盤。元の作品は彼らの音楽を世に広く知らしめ、当時まだ夜明け前だったヴィジュアル系シーンに絶対的な金字塔を打ち立てたとされる名盤で、今なお語り継がれるその完成度や影響力から半ば伝説にすらなっているけど、それだけに今セルフカバーされることに対しては、単純にヤバ!燃える~!みたいな人もいれば、原盤への深い思い入れや近々のRYUICHI発声障害などから期待半分不安半分みたいな心持ちだった人も少なくなかっただろうと思います。

 そもそもがこれら2作の再現デュアルツアーを機に企画されたという背景があり、色々な思いや事情やタイミングを見据えてのことだったろうとは思うけど、何ならスタッフとかも交えて反対意見も汲みつつ深い話し合いがなされただろうし、その上で実行するだけの材料がここで丁度揃ったのだと思います。個人的には、発売前に耳にした某メンバーの「当時できなかったけど今やれること、当時と同じにはできない失ってしまったもの、それら全てが表現できている」という発言で、当たり前だけど超えるべきハードルに対して真摯に向き合い、決して超えられないであろう部分も自覚しつつ、どうあれ後悔のない作品づくりを終えた手応えのようなものを感じたので、好意的に待ち望んでいました。

 

 実際に聴いてみると、それはもう鳥肌が立つくらいに "あの頃の" LUNA SEAであり、しかも "新しかった" 。矛盾するかもしれないけど、本当にそう感じたので仕方がない。作り手側にしか分からないような無数の変更点はあるだろうけど、基本的にはオリジナルにリスペクトを捧げるように曲の運びや流れ、特長的な演出など大筋で再現度が高く、でも歌唱や演奏から伝わる楽曲のパワーやポテンシャルは、確実に年輪を感じさせる仕上がり。RYUICHIの歌声も想像以上にパワフルで一安心だし、今の声質の方が映えるというか豊かに聴こえる楽曲も少なくない。楽器隊にしても、飛び抜けて難しいことはしていないはず──というかアンサンブルやフレーズはとことんシンプルなのにとことんまで格好良く響くというあの5人ならではのバンドマジックが嬉しいくらいに健在だし、それを "当時のLUNA SEAを知らない" 世界的プロデューサーのStephen Lillywhiteが「CROSS」に引き続き手掛け、フラットな目線と確かな手腕でまとめ上げることで、今の時代に照準の合ったサウンドが実現したように思います。

 勝手な想像ではあるけど、原盤がメンバー間のライバル心や世の中をあっと言わせてやる的な野心で制作されたとすると、今2作はメンバーの音楽的/人間的な成長やそこからくる信頼がベースにあり、今ここで代表作を改めて世に出すことへの自信と覚悟が原盤制作時とは違う意味合いでの緊張感を生むことで、より太く立体的に聴こえてくる実際の音像以上に厚みや頼もしさを醸し出しているように思います。だからこそ、擦り切れるくらい何度も繰り返し聴いてきたオールドファンにも「これだよこれ!」と言いたくなるくらい期待に応えてくれて、一方で新たに聴くような人に対して「これが最新型のLUNA SEAだよ」と出しても恥ずかしくない、そんな理想的なセルフカバーになっているのではないかなと。美しい彫刻のような「MOTHER」ブラックホールのような重力を帯びる「STYLE」、控えめに言ってどちらも最高である。

 

 「FACE TO FACE」みたいに新しい解釈が分かりやすく出たような楽曲や、若さが出た部分がものを言うような楽曲は原曲の方がまだ好みだなというケースもあるかもしれないけど、個人的にはもう今後「MOTHER」「STYLE」を聴くなら基本的にはセルフカバー盤でいいやと思えるくらいにブッ刺さりました。管理人はちょうどこの頃がリアルタイムだっただけに思い入れもひとしおだったけど、何と言うか彼らを好きになって良かった、好きで居続けて良かったなと、ある意味で音楽人生を肯定してくれるような思いというか、大袈裟に言うとそんな感想すらも抱くほどに。というかヴィジュアル系の雛型を作ったとか云々以前に、ロックとして純粋に格好いい!それだけでも十分すぎた。あとは唯一ライブで一度も演奏されていないことで別の意味で伝説化している楽曲「FAKE」がどうなるか。一応今後の可能性を匂わせている発言もあったようだけど…果たして。