Vampire Rodents / Premonition

Premonition

Premonition

  • 発売日: 2020/01/03
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 US出身の実験音楽/サウンドコラージュユニットの2ndアルバム(1992年)。

 

 全21曲と驚きのボリュームだけど、彼らの作品ではこれくらいがむしろ平常運転なので、前作の全17曲はまだ控えめだった(?)。それも含め前作を「持ち味開花前」と書いたけど、それでも彼らの掴みどころのない音楽性には面食らうばかりでした。そして今作ではその特性に更に磨きがかかり、いよいよ理解不能の領域。もともと30分程度の同名カセット作品を作り、それをチェリストのゲストと協力して広げ完成させたというだけに、大部分に渡ってチェロ/バイオリン、ひいてはクラシックの要素も大きく融合。しかしただ壮大感を煽るような用い方だけに留まるはずもなく、無軌道なフレーズの切り貼りで執拗に繰り返されたり突然差し込まれたりと色々カオス。彼らなりのガシャガシャとしたインダストリアル(ロック)の基調はあるんだけど、楽曲が増えてボーカルの割合が減っている分サウンドの方に耳がいくし、それもどこまでがコラージュ/サンプリングか分からない、分かることに意味があるのかすらも分からない、曲調すらも途中で変わったりもする、ついでに最後はアンビエント曲の連発で煙に巻くように終わっていく…と、何がなんだか。でも元々が独特なだけに、これこそが彼らの進化や本領なんだろうなと思わされる説得力も十分。孤独のグルメの主人公のように「けっしてキライじゃないぞ!!」としかめっ面で鑑賞したくなる…かも。特に「Dresden」は4分50秒の中でどれだけ曲がりくねるねんと言いたくなる、聴いていていい感じに頭がおかしくなりそうになる好きな1曲(オイ)。 強引に例えるならSkinny Puppy + 初期Laibachか(余計分からん)。

 

 

 彼らの作品を管理人が聴いた順(3rd→1st)でその説明も含め紹介記事にしましたが、今回この2ndでとりあえず3rdまでは埋まったので、過去記事の余分なところを省いて平たく書き直しました。「War Music」の方は感想の部分は手をつけていませんが、「Lullaby Land」の方は半分くらい書き直しています。一応リンクを貼っておきますのでよろしければ合わせてどうぞ。

 

MUCC / 志恩

志恩

志恩

  • アーティスト:ムック
  • 発売日: 2008/03/26
  • メディア: CD
 

 4人組ヴィジュアル系ロックバンドの8thアルバム。

 

 初のベスト盤を挟んでのリリース。そのせいかは分からないけど、また一つ新たなアプローチへ切り込んだ作品。その軸となるものは「ダンスビート」と「民族音楽」の2つで、前者はまさに本作の試金石になったであろう1つ前のシングル「ファズ」や弦の音色が颯爽とした「空忘れ」、後者で言うならメタルと融合した「塗り潰すなら臙脂」やパーカッションが乱打される大曲「志恩」。またその2要素が合体したような「アンジャベル」に至っては、歌謡曲どころか古典音楽にまで行っちゃったようなメロディとリズミックさの融合が何ともクセになる不思議な存在感の一曲。かように、これらの楽曲の存在がアルバムを特徴づけ、雰囲気づくりに大きく貢献しています。アニメのOPとかにでもありそうなくらいキャッチーな「フライト」や、オーケストラを導入した悲痛のバラード「小窓」なんかもあったりして、全部が全部ではないけど、幅広かった前作「極彩」とは対照的に一つの色でまとめられたような統一感もあり(唯一大きく浮いてる「フライト」は休憩ポイント?)。この辺りは、彼らの器用さや重ねてきたキャリアの賜物でしょう。ひと口にダンス/エレクトロニックと言ってもバンドの有り様がまるっきり変わってしまったわけではないけど、これまでのアナログな手法やヘヴィネス重視のサウンドと比べると大きな一手だし、その要素はここからも続いていくので、一つの転換点・起点とも言えそう。初めて聴くような人には不向きかも知れないけど、しっかり良作。

 

 

 突然のMUCCのアルバム紹介でしたが、当ブログが現在のはてなブログに移行する前に、基本的に古いものから何作か紹介記事を書いていました。移行の際にミスか何かで非公開になっており、それに後から気づくも「インダストリアル要素が特別あるわけでもない完全趣味のバンドの記事だし、このままでいいかな…」と放置していたんですが、ネタに困ってきたのでここに復活させてみることにしました。まぁギルガメッシュやディスパも扱ったし、いいか!くらいの気分で。過去に書いた非公開記事は、目を通し文章を少し整理しての公開をするつもりですが、そこそこ数があるので少しずつ手をつけていきます。ということで、よろしければまずはこちらの2作を合わせてどうぞ。

 

Ray / Little Trip

Little Trip(初回限定盤 CD+Blu-ray)

Little Trip(初回限定盤 CD+Blu-ray)

  • アーティスト:Ray
  • 発売日: 2016/06/08
  • メディア: CD
 

 アニメソング系ボーカリストの3rdアルバム。

 

 あーれいたそかわいい。というわけで、そんなれいたその2年ぶり3作目でございます。まずは何と言ってもデビュー曲と同作品向けの2年半ぶり新タイアップにて、同じく再び「折戸伸治 × 高瀬一矢」タッグで制作された「季節のシャッター」が、期待通り郷愁感溢れる名曲度の高い逸品でした。そしてそれを中心とし、前半は主に元気いっぱいのハイテンポな曲、後半はI'veの高瀬一矢による2曲も含む正統派の楽曲が並ぶ流れ(厳密にではなくざっくりとだけど)。特に前半は合いの手の入ったジャズサンバ?というのかそれっぽい「初めてガールズ!」や、ビッグバンドにエレキに木琴の音までが乱舞する、おもちゃ箱を引っくり返したような高速ガールポップ「Wonder Little Trip」と、勢いのついた佳曲の連発が爽快。過去作にも1つは電波ソングに通じるような遊び心のある曲はあったけど、今回はその色が掴みで強めに出ていて、また新しい感覚。とはいえ、全体的には音楽的に挑戦の幅を広げているというよりも、得意とする範囲やイメージに沿うものの中から丁寧に選択し提示してきたような安定感のある仕上がり。作品全体を「旅」に見立てるという(歌詞の)コンセプトや、楽曲を手掛けた作家が過去最高の10名ほどになっているというポイントは、そこまで重視するものではないかも。でも不満は全くないんです。最初にも言った通りかわいいから。いや真面目な話、アーティスト活動が5年目に入っても、これまで通り楽しくかわいく突っ走るという意気込みを体現してくれたのは素晴らしいことです。彼女が初めて単独で作詞した「星」に込められた思いも合わせて受け止めると更に感動することひとしおですよ。こんなレビューでいいのか。

 

Static-X / Project Regeneration Vol. 1

Project Regeneration 1

Project Regeneration 1

  • アーティスト:Static-X
  • 発売日: 2020/07/10
  • メディア: CD
 

 US出身のWayne Staticを中心とするインダストリアルメタルバンドの7thアルバム。

 

 休止、分裂を経て2013年に解散、その翌年にはフロントマンであるWayne Staticが逝去という悲劇的な形でバンドの幕が一度は閉じたものの、1stアルバムであり代表作「Wisconsin Death Trip」を制作した最初期のオリジナルメンバー3名が集結し、ライブ活動も含めたバンド再生プロジェクトが2018年に立ち上がります。そして、Wayne Staticが遺していたデモを元にレコーディングを行い、約11年ぶりのニューアルバムとして完成したのが本作。これが驚くほどの快作に仕上がっていて思わず拍手!発表から発売までやたら長かった(しかも一度延期した)のを待ち続けた甲斐もあったってもんです。まさに初期の爆発力を思わせるヘヴィサウンドは、正直イマイチだったと言わざるを得ないバンド末期の作品を軽く吹き飛ばすような迫力とスピードに溢れ、ノリ優先でシンプルに徹するが故に単調になりがちな全体像は、楽曲をアシストするプログラミング/SEによって絶妙に奥行きが与えられ、時折フレーズが浮き出たり、場面によっては不協和音のような異物感をもたらすように暴走するシンセによって、エレクトロニックとの"Evilな"融合でも見せ場を作ります。歌に関しても、Xer0という謎に包まれた覆面ボーカリスト(ヘアスタイルはWayne Staticを再現!)を新たに迎え、Wayne Staticとほぼ半々の割合(中には混合も)になっているんですが、バンドの特徴を捉えつつ声も寄せているお陰で違和感なくStatic-Xとして一塊で聴けちゃいます。「悪のディスコ」と呼ばれた彼らの全盛期っぽさを現代なりに蘇らせ、MinistryのAl Jourgensenが参加したシューゲイザー風(!)のラスト曲まで緊張感を維持し飽きさせないという、まさに「こういうのが聴きたかった!」と諸手を挙げて歓喜したくなる作品です。再結成は絶望的とも言われていた彼らが、色々な障害や苦労を乗り越えこんなに愛とリスペクトに溢れた新作を作ってくれたことに感謝。Vol. 2までの制作が予定されているので、楽しみに待とうと思います。

  

 

 

 Static-Xは管理人が"インダストリアルメタル"というジャンルを認識するかしないかあたりの頃に知って一気にハマったというのもあって、思い入れがちょっと深かったりします。まぁ4thアルバム以降は今ひとつだと思ったし、このブログでもあまり良く書いてはいませんが(苦笑)、それも愛ゆえに、みたいなところはあるつもりです。今回の記事に合わせ、だいぶ前に書いた過去記事を見直して文章を少しだけ整理しました。「Cannibal」については半分くらい改稿しています(評価を変えたりはしていません)。よろしければ合わせてご覧ください。

 

THE MORTAL / Spirit

Spirit

Spirit

  • アーティスト:THE MORTAL
  • 発売日: 2015/10/14
  • メディア: CD
 

 BUCK-TICKのボーカリストによるソロプロジェクトのミニアルバム。

 

 約11年ぶりとなった櫻井敦司のソロプロジェクトでありながらも、様々なアーティストから様々な楽曲の提供を受けた前回とは異なり、固定された5人編成のバンド形態という全く異なるフォーマットにて旗揚げされたもの。メンバーは村田有希生など前回のソロ活動にも何らかの形で参加した人物が名を連ね(ドラマー・秋山タカヒコのみ初対面だったとか)、基本的には信頼のおける顔見知りで結成したような形。そしてバンドは明確に「ゴシック」という方向性一本に振り切れており、前回のソロ活動で見せた一面の更なる追及、またはやりきれなかった部分への挑戦を思わせます。本作はオリジナル2曲にカバー3曲という構成で、Siouxsie & The Banshees「CITIES IN DUST」、The Damned「SHADOWS OF LOVE」、そしてタイトルにもなったBauhaus「Spirit」と界隈を代表する楽曲をカバー。前者2曲は櫻井敦司の訳詞によって日本語で歌われ、漆黒の世界がより鮮明に分かりやすく表現されています。こういった音楽が櫻井敦司のルーツなのはファンには周知の事実であっても、過去の活動でここまで直接的に表現した例は珍しく、またここでしか聴けないものなのでそれだけでも貴重。この1カ月後にフルアルバムが発売することから本作はあくまでも予告編的な位置づけだろうけど、カバー曲に負けない存在感を示すオリジナル2曲も含め、名刺代わりとしては十分すぎるほど十分な一枚。

 

 

 合わせて読みたい…と書いちゃうと大げさですが、ソロ名義での2004年作「愛の惑星」の紹介記事をだいぶ前に書いていたので、リンクを貼っておきます(文章を見直してちょっとだけ整えました)。よろしければこちらもご覧ください。