girugamesh / engrave

engrave

engrave

  • Wolves anchor DC
Amazon

 4人組ロックバンドの配信シングル(2022年)。

 

 2016年に解散したロックバンド・girugameshによる約6年ぶりの新曲。所属レーベルの40周年イベントに合わせ公開された予告映像を経て、その後正式に配信。MUCCのトリビュート盤(2017年)にシークレット参加したりもしたけど、人気を保ったまま惜しまれつつ解散しその後も長らく音沙汰がなかったため、ファンにとってはまさに青天の霹靂とも言える出来事でした。そしてその楽曲は、まさしく解散する前のあのgirugameshがそのまま蘇ったかのよう。予兆のような導入を経て、溜まりに溜まった力と怒りが迸るようなヘヴィサウンド&シャウトの幕開け。打ち込みやシンセを細部に組み込んで時折表情を変えながらも、ボーカリスト・左迅の真っ直ぐな歌で全体を引っ張るというある種の熱さ/泥臭さも健在。どこか末期の代表曲「鵺 -chimera-」を彷彿とさせる曲調だけど、パンデミックと彼らにとっての空白の6年の両方を想起させるような世界の在り様と、自らを省みそこから立ち上がろうとする意志を描いた歌詞が示す力強さは、混沌と悲しみにまみれた彼らのかつての最終曲「period」の印象を塗り替え吹き飛ばすようなポジティブさに溢れ、世相的な意味でも刺さるものがあり、多くのファンを勇気づけたことかと思います(「終わり」と「未来」というバンドの原点とも言える単語を歌詞にまたさりげなく忍ばせているところも嬉しい)。2022年末の所属レーベルのイベントライブへの参戦が話題を集めたのも記憶に新しいけど、あくまでも限定復活とのこと。しかしこの曲を胸に、またいつか彼らが表舞台に集まる日を待ち続けようと思います。

 

 

 元々大好きで聴いていた彼らをこのブログで扱い始めたのも、彼らがインダストリアル・メタルのWikipediaに名前が挙がっているのを発見したことがきっかけでした。

 出自はヴィジュアル系シーンではあるけど、バンドコンセプトに "男魂" を掲げるラウドロックをベースとした音楽性であり、早い段階でラップやシーケンシャルなビートを駆使するミクスチャーロック的な方向性を固め、2013年以降はエレクトロニックやダブステップの要素を強めたメタルコア/ヘヴィロックを展開。特にその辺りの作品は、ヴィジュアル系バンドというよりもラウドロック界隈のバンドとしてだったり、インダストリアルメタル寄りのロック/メタルとして聴ける部分もあるのではないかと。個人的にはより好みド真ん中どストライクになって歓喜したし、ブログで記事を書くのもめちゃくちゃ楽しかったです(笑)。

 彼らの主だったアルバム作品は過去に一通り紹介記事を書いているので、よろしければ合わせてご覧ください。

 

 

 これ以前の作品の紹介記事へのリンクはこちらから。

続きを読む

HAZUKI / EGØIST

EGØIST 通常盤

EGØIST 通常盤

  • アーティスト:HAZUKI
  • ベルウッドレコード
Amazon

 lynch.のボーカリストによるソロアルバム(2022年)。

 

 数年前よりバンド本隊と並行していたクラシカル編成&カバー曲中心という "葉月" 名義の活動とは別に、バンドを正式に活動休止させ本格始動した "HAZUKI" 名義での初アルバム。名義が使い分けられている通り、展開される音楽は全く別物。こちらはlynch.の延長上とも言えるバンド体制ながら、そのアレンジに制約を設けず、シンセやホーンやピアノなど多くの楽器を重用した華やかさが際立っています。lynch.ではメンバーが出す音を重視するという基本の型があり、長年の活動で一つの限界や齟齬を迎えてしまったことがソロへ向かう契機になったという前提のもと、まさにその反動が炸裂。HYDEやLiSAなどのサポートギタリストとして活躍中のPay money To my painのPABLOと協力し、制作の体制からアレンジのアイデアまで遠慮なく思うさま自由に暴れるような奔放な内容になっています。中でもアジアンテイストのダンスロックという新境地を見せたリード曲「七夕乃雷 -Shichiseki no rai-」の印象は強烈。他にもジャジー/スウィングバンド風の楽曲、ヘヴィなエレクトロコアに至るまで幅を広げている一方で、あえてlynch.では憚られるようなタイプの楽曲だけをやるというわけではなく、ミドルバラードやライブ向けの暴れ曲などほとんどlynch.のイメージと重なる楽曲も点在。そこはバンドでも全体の8割以上の楽曲を手掛けている彼ならではの味であり、その時々で自分が作りたいものや影響を受けたものを素直に打ち出すというスタンスの表れでもあるように思います。色々な意味でまさにタイトル通りだし、バンド・葉月名義のソロを含め20年以上のキャリアの上に完成した、従来のファンには全く違和感なく受け入れられ、そしてそれ以外の人にもバンドと同等以上の入りやすさと聴きやすさを備えた充実の一枚と言えるでしょう。

 

 

 「葉月」名義でのアルバムの紹介記事はこちらからどうぞ。そちらにはlynch.の簡単な紹介&お勧め作品記事やライブレポートのリンクもありますので、ご興味がありましたら合わせてご覧ください。

 

KMFDM / Extra Vol. 3

EXTRA Volume 3

EXTRA Volume 3

  • Metropolis Records
Amazon

 ドイツ出身のインダストリアルバンドの編集盤(2008年)。

 

 シングルB面曲を中心としたオリジナルアルバム未収録の楽曲(ほぼリミックス)を集めた2枚組コンピレーションの第三弾。本作には1994年~1997年の音源を収録。「Vol. 2」ほどの数ではないにしろ今作でも同じ曲の別リミックスが多いけど、彼らのセールス面での最盛期を彩ったシングル曲だったりするのでさもありなんといった感じ。それでも資料的価値が優先された余計な手の加えられていない選曲のメリットの方が有り難いし、一口にリミックスと言っても原曲の良さを生かしたものからかなり作り変えたものまで緩急のついた内容で、なかなか新鮮に楽しめます。曲によってはガバやブレイクビーツっぽさを強調したり、リミキサーの趣味を遠慮なく注入したり、特徴的だったフレーズをあえて無くしたりと攻めた内容が多く、特にDisc-2は全体的にテクノ/トランス方面への接近が分かりやすく見て取れます。思えば「Vol. 1」の終盤では逆にスラッシュギターをバンバン取り入れたりしていたので、彼らはアルバムごとにスムーズに音楽性を変化させているように見えて、実はシングル盤が次作へ繋がる試行錯誤や新たなチャレンジの実験場として機能していた一面もあったのかもと思わせられます。そして彼らの根幹となる音楽性自体、ロックバンド的でもエレクトロニック音楽でもあるので、色んな形のリミックスに作り変えられても割と違和感なく収まるという柔軟さや面白さも再確認できました。2カ月おきにリリースされた「Extra」シリーズは本作で終了。いずれもコアファン向けではあると思うけど、彼らの裏の歴史が余すことなく刻まれた実に魅力的なアイテムです。

 

 

 今回の記事に合わせ、過去に書いた8th・9thアルバムの紹介記事の文章を少し見直していますので、よろしければご覧ください。書いたのは最近だけど「Extra」のVol. 1~2も合わせてどうぞ!

 

Devin Townsend Project / Ki

Ki

Ki

Amazon

 カナダ出身のマルチミュージシャン/プロデューサー・Devin Townsendのソロ通算11作目、Devin Townsend Project名義での1作目(2009年)。

 

 Strapping Young LadやThe Devin Townsend Bandといった自身のバンドを解散させ、完全ソロで制作した前作を境に音楽活動を一旦休止したものの、僅か2年のインターバルを経て復活。なんと自身の人生や音楽のアイデンティティをテーマにした4部作を展開する新プロジェクト "Devin Townsend Project" を発表。その1作目となる本作は、それまで共に演奏したことがなく、かつヘヴィな音楽ともほぼ無縁だったようなメンバーを集めたのだとか。そしてそれも頷けるような音楽性で、しっとりとしたギターインストの幕開けに続く「Coast」はブルージーなギターとウィスパーなボーカルが印象的だし、続く「Disruptr」も最小限の歪み演奏と呟きのような歌で進行し、徐々に盛り上がってもすぐに静かなトーンに戻っていくという。ほぼ全曲がこのように意図的に抑制され、音の隙間を活かすアンサンブルと、地中に沸々と存在するマグマのような爆発しきらないラウドなパートを行き来しながら、どこか物憂げで退廃的な美すら感じさせる独特な音や曲を形成しています。強烈な分厚さや高速連打によるエクストリームメタルを得意としていた過去作との乖離を思うと驚きを隠せないけど、アルコールやドラッグの影響もあったというそれら過去作との訣別(克服)、4部作の序章という壮大なる位置づけが、本作の特殊性を生み出したと言えるのかも。それに音への神経質なまでのこだわりや追求は、今も昔も方向性が違っても全然変わらないという証明でもあるかのよう。単なるアコースティックやアンビエントでは括れない、彼ならではの新しい音世界「氣」。興味深い一枚です。

 

 

 今回の記事に合わせ、だいぶ前に書いた彼が主宰するエクストリームメタルバンド・Strapping Young Ladでも名作と名高い2作目と、Devin Townsend名義での1作目となるソロ通算3作目の紹介記事の文章を少々見直していますので、よろしければ合わせてご覧ください。