Foetus / Thaw

Thaw

Thaw

 

 オーストラリア出身のJG Thirlwellによるインダストリアルプロジェクトの5thアルバム(1988年)。本作においては「Foetus Interruptus」名義となっています。

 

 「手にした日から、誰にだって、プロ感覚でシンセが弾けるようになる画期的なシンセ講座ができたんだ!!」の有名な文句でお馴染みの一作。活動の拠点をロンドンからニューヨークに移しての1作目で、エンジニアリングにはSwansやSonic Youthらを手掛けたMartin Bisiがクレジット。元SwansのRoli Mosimannと結成したWisebloodの活動を経た後ということもあり、その辺り──NYアンダーグラウンドの文化/人脈の影響が十分に成果として上がったアルバムと言えます。最も耳につくポイントは、とにかく重い。とりわけリズムトラックを中心に低音の層の一音一音がビシバシとお腹に響くような重さだし、明るく狂っていたかのような過去作の歌い方から、より迫真に迫るかのようなボーカルの変化もあり、聴こえてくる全ての重さ・密度・濁りっぷりが尋常じゃない。その上で、知性と本能を同時に封じ込めるような雑多な音楽構築センスは健在だし、戦々恐々としたインダストリアル・オーケストラな複数のインスト曲も、決して勢いを分断することなくアルバムの要所に散らばり、全体でひとつの凶暴な音塊を形成するかのように収まっています。画期的なシンセ講座かどうかはともかくとして(えっ)、本作以降オリジナルアルバムの発表がしばらく途絶えるのを鑑みても、彼の一つのターニングポイントを迎えた作品であり、名作とされる「Hole」「Nail」のいずれにも劣らない存在感を示す傑作。 凄みがダイレクトに伝わる分、その中では意外と一番聴きやすいかも?

 

Skrew / Burning In Water, Drowning In Flame

Burning in Water

Burning in Water, Drowning In Flame

  • アーティスト:Skrew
  • 発売日: 1999/04/06
  • メディア: CD
 

 US出身のインダストリアルメタルバンドの1stアルバム(1992年)。

 

 元々は別のバンドで活動していたAdam GrossmanとDanny Lohnerを中心に結成されたバンド。Danny Lohnerは別の名義でも活躍していたり、後にギタリストとしてNine Inch NailsMarilyn Mansonの制作に関与したり、またベーシストやプログラマーとして他の界隈の著名ミュージシャンにも広く関わった凄腕の人物。ただ、Skrewとして活動したのは本作限りのようです。そんな立ち上がりの1作目。どう聴いてもMinistryです、本当に(ry や、このヘヴィでメタリックなギターリフと無機質に響き渡るマシーナリービートはドンピシャすぎる。しかし本作の場合ただのフォロワーというよりも、そもそもMinistryのAl Jourgensen、Paul Barker、Mike Scacciaが制作に関わっているようで、そりゃそうなるかというか、これも一種のお墨付き(?)と言っていいんだろうか。注意深く見ると、Ministryの冷たさや鋭さの再現というよりも、全体のバンド感や一体感でモリモリとグルーヴメタルのように突き進むアグレッシブさが特徴的か。10曲目「Poisonus」では突如スクラッチを用いたラップメタルも披露(謎)。ミッドテンポの多さと薄味な作り&無骨さで内容も位置づけも地味な印象の拭えない一作だけど、彼らの中では最も評価も高く好セールスの作品でもあるんだとか。Ministryファンならどうぞ。

 


 先に書いていた(すっかり忘れていた)2ndアルバムの記事はこちら。よろしければ合わせてご覧ください。 

Decree / Moment Of Silence

Moment of Silence

Moment of Silence

  • アーティスト:Decree
  • 発売日: 2004/04/06
  • メディア: CD
 

 Front Line Assemblyでも活躍した音楽プロデューサー・Chris Petersonを中心としたインダストリアルユニットの2ndアルバム。 

 

 元々はツアーメンバーで、1997年からは制作にも携わったFront Line Assemblyを(一時的に)離脱した時期に制作されたアルバム。自身以外の制作メンバーも前作とは入れ替わっている模様。音楽的には基本的に前作を踏襲したもので、強烈なノイズやノイズギター、怒号や呟きのようなボーカルを激しいリズムトラックが蹂躙していくという刺激的かつ攻撃的なインダストリアル。狂気的にアンビエントを放出するパートも健在ながら、ノイズアンビエントな方向性だった前作とは変わりジャケットから連想できるような(?)ダークアンビエントに舵を切っており、静寂の中に地鳴りのような轟音が響き渡り世界が闇に呑まれるような不気味さ、ひいては退廃的な世界観を強化しています。これはこれで良いのだけど、ブレイクビーツを走らせたりしてガリガリと進むパートときっちり線引きされた構成はいささかウェルメイドな印象もあり、音楽的に近そうな初期Numbなんかと比べると、どこか頭の良い人が計算して作り上げたような小奇麗さを感じる部分も。 個人的にはこの音の迫力だけでもかなり楽しめるんだけど、前作の方が凄かったのも確かだし、筋金入り(?)のインダストリアルリスナーには意外と物足りないかも。

 

 

 前作の紹介記事はこちら。よろしければ合わせてご覧ください。

SMAP "全アルバム" プチ紹介

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 出典:SMAP - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/SMAP

 

 今はなき国民的アイドルグループ・SMAPの全アルバム(たぶん)のプチ紹介記事です。読んで字の如くだし、長くなりそうだしで、前置きは不要ということで。では、どうぞ!

 

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The Dreaming / Puppet

Puppet

Puppet

  • アーティスト: The Dreaming
  • 発売日: 2011/11/01
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 元Stabbing WestwardのChristopher Hallを中心としたロックバンドの2ndアルバム。

 

 結成から最初のフルアルバムまでは約7年もかかった計算だけど(なんせ前身バンドのStabbing Westwardの解散前から始動しているようなので)、2作目は1作目から約2年半ぶりと、割と順当な間隔でのリリース。その間にベーシストの入れ替わりがあったようだけど、むしろそこじゃない部分が大きく変化。勢い重視のギターロックという基本的なラインはそのままだけど、唯一決定的に違うのが前作ではほとんど皆無だったストリングスやシンセなどとエレクトリックな要素の追加で、導入部やギターリフの後ろなどで味つけ程度に薄っすらと鳴らすばかりでなく、前奏やサビに大きく組み込まれ全体を彩ったり、内部に取り込んでグルーヴのベクトルを変えたりとあちこちで耳につく重用っぷり。1作目がそういったものを明らかに排除し、ザクザクとしたギターリフと勢いでとにかく突っ走る音楽だったので、この新バンドでは脱インダストリアルロックというかそういう方向性なんだと一旦認識していただけに「あ、封印したわけではなかったのね」と意識が引き戻される思い。1作目のみあえてそういう(シンセに頼らない)チャレンジがあったということなのか、それとも試行錯誤なのか。こういう方向性は嫌いではないし、実際彼らの過度なまでの感情的な歌メロ放出ロックを更にドラマチックにもしているけど、一方で勢いが削がれたことで単調さも浮き彫りになり、曲単位ならまだしもトータルだと物足りなさを僅かに感じなくもない。前作比だと足し算的な発想の内容の筈なのに。

 

 

 1作目の紹介記事はこちら。よろしければ合わせてご覧ください。