MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Slipknot "9.0: Live"

9.0: Live

9.0: Live

  • アーティスト:Slipknot
  • Roadrunner
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 アメリカ/アイオワ出身のニューメタル/オルタナティブメタルバンドのライブアルバム(2005年)。

 

 突然の自分語りですが、Slipknotは管理人がヘヴィミュージックにおける大きな洗礼を受けたバンドであり、初体験が音源とライブ映像がほぼ同時だったということもあって、その衝撃たるやもの凄かったわけです。なんせあの表情の読めないグロテスクマスクとお揃いのツナギを着用したメンバーが9人もいて、怒涛のライブチューンを連発しながら所狭しと圧巻のパフォーマンスで暴れ回るわけで。何よりも当時の管理人の思い込み──ニューメタル=地面にめり込みそうなくらい重たくした音をじっくりと鳴らしていく、みたいな価値観を一掃していく速さ・重さ・激しさの三位一体と、体を無条件に預けたくなるキャッチーさの不思議な同居がとても鮮烈で、一瞬で虜になってしまいまして。で、普段はよほど好きとか気になるとかコレクション癖が発揮された対象でもない限りはライブ盤まで追うことはあまりないのだけど、彼らの初のライブ盤である本作は、前述したライブ映像とのセットである思い入れも手伝って、そりゃもう迷わず手に取ったわけであります。これで脳裏に焼きついたライブ映像がいつでも脳内再生できる!(?)

 ここに収められたCD2枚分の楽曲は、28ヵ月に渡るワールドツアーの中から、衝撃のデビュー作やそれを上回るヘヴィネスの2作目、新たなアプローチを加え叙情性を高めた3作目と、ここまでの抜群の名作3枚のキラーチューンを等しく選出。ここだけでご飯3杯いける圧巻の代表曲連打の序盤、痛々しいまでの「Vermilion」、著作権問題でカットされた1st収録曲「Purity」、ドラムソロ、ライブ初演奏らしい「Skin Ticket」、6分半の長さに抑えられて気軽に聴ける長尺ドス黒曲「Iowa」、ライブならではのやり取りが垣間見える「Spit It Out」「Wait And Breed」…どこから何を再生してもこれ全て聴きどころ。ライブ効果で音源時では気づかなかった良さを発見するかも知れないし、黄金期のメンバーによるここまでの歩みの集大成としても楽しめそうな、ある意味ベスト盤よりベストしてるとも言える満足度の高さ。彼らの本質は奇妙な見た目やパフォーマンスではなく、ライブにおける底力だということを証明する逸品!

 

 

 ブログの過去記事の見直しをしていたところ、大昔(17年前…!)ちょっとだけ書いたSlipknotの記事に辿りつき一人懐かしく眺めながら久々にヘビロテし、今回の更新作業をしておりました。というわけで、よろしければ文章を少し直した過去記事のほうも合わせてご覧ください。

 

Hellsau "Vain"

Vain

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 元Swamp TerroristsのSTRを中心とするエレクトロニック/インダストリアルロックユニットの1stアルバム(1997年)。

 

 1995年にSwamp Terroristsからプログラマー・STRが脱退し、新たに結成した3人組のグループ。もの凄く大雑把に捉えると、Swamp Terroristsの延長というかエレクトロニック/打ち込みを中心としたインダストリアルダンスという点では共通しているけど、こちらではヒップホップ的な要素を無くし、4つ打ちのテクノ/ガバを基調とした直線的なビートを軸にグイグイと進む攻撃性がストレートに出ています。うち数曲ではSwamp TerroristsのAne H.がボーカルを執っているものの、あまりボーカルを全面に出すような形はとっておらず、インストもしくは半インストのような楽曲も多め。しかし、代わりに?より破壊力を増したスラッシュギターが主役のように陣取り、ジャングルビートやドラムンベースなどのアプローチを時折取り入れるなど、ソリッドな音使いや多彩な展開が秀逸。実験的というか色々手を出している・試している感はあるけど、決して途上ではなくこれはこれで一つの形を成し得ていると思えるし、退屈することなく聴き通せる…どころか、否応なく身体を突き動かされてしまいます。滾るゼ!Swamp Terroristsが好きであれば全く違和感なく入れるだろうし、CubanateやPitchshifterあたりにも通じるものを感じます。ポテンシャルを感じるだけに、本作限りで活動を終えたっぽいのが残念。

 

 

 このバンドはX(旧Twitter)で勧めていただきました。その時には「ああ、そう言えば音源持ってたっけな、結構好きだったし久々に聴いてみるかな」と思って後で確かめてみたら、HellsauではなくてHiltと勘違いというか混同していまして(なんじゃそりゃ)、Hellsauは未聴でした。しかしSwamp Terroristsのメンバーが違うバンドをやっていたというのは何となく知っていたので、昔どこかのレビューサイトで情報だけ知って、音源は未入手のままだったということなのかな多分。で、今回ちょろっと調べてみたら配信で容易に入手できるジャン!ってことで手を出してみました。良いきっかけを与えてもらい、有り難く思います。

 

 今回の記事に合わせ、過去に書いたSwamp Terroristsの紹介記事の文章を少々見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。久々にSwamp~を聴き直したらかなり格好良かったし、この勢いで未所持の音源揃えちゃおうかな。

 

LUNA SEA "MOTHER" "STYLE"

MOTHER (ALBUM(スマプラ対応))

MOTHER

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STYLE (ALBUM(スマプラ対応))

STYLE

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 5人組ロックバンドのセルフカバーアルバム(2023年)。

 

 言わずと知れたレジェンドでありながら現役を貫くロックバンド・LUNA SEAの1994年・1996年に発売された代表作4th・5thアルバムの30年近い時を経てのセルフカバー盤。元の作品は彼らの音楽を世に広く知らしめ、当時まだ夜明け前だったヴィジュアル系シーンに絶対的な金字塔を打ち立てたとされる名盤で、今なお語り継がれるその完成度や影響力から半ば伝説にすらなっているけど、それだけに今セルフカバーされることに対しては、単純にヤバ!燃える~!みたいな人もいれば、原盤への深い思い入れや近々のRYUICHI発声障害などから期待半分不安半分みたいな心持ちだった人も少なくなかっただろうと思います。

 そもそもがこれら2作の再現デュアルツアーを機に企画されたという背景があり、色々な思いや事情やタイミングを見据えてのことだったろうとは思うけど、何ならスタッフとかも交えて反対意見も汲みつつ深い話し合いがなされただろうし、その上で実行するだけの材料がここで丁度揃ったのだと思います。個人的には、発売前に耳にした某メンバーの「当時できなかったけど今やれること、当時と同じにはできない失ってしまったもの、それら全てが表現できている」という発言で、当たり前だけど超えるべきハードルに対して真摯に向き合い、決して超えられないであろう部分も自覚しつつ、どうあれ後悔のない作品づくりを終えた手応えのようなものを感じたので、好意的に待ち望んでいました。

 

 実際に聴いてみると、それはもう鳥肌が立つくらいに "あの頃の" LUNA SEAであり、しかも "新しかった" 。矛盾するかもしれないけど、本当にそう感じたので仕方がない。作り手側にしか分からないような無数の変更点はあるだろうけど、基本的にはオリジナルにリスペクトを捧げるように曲の運びや流れ、特長的な演出など大筋で再現度が高く、でも歌唱や演奏から伝わる楽曲のパワーやポテンシャルは、確実に年輪を感じさせる仕上がり。RYUICHIの歌声も想像以上にパワフルで一安心だし、今の声質の方が映えるというか豊かに聴こえる楽曲も少なくない。楽器隊にしても、飛び抜けて難しいことはしていないはず──というかアンサンブルやフレーズはとことんシンプルなのにとことんまで格好良く響くというあの5人ならではのバンドマジックが嬉しいくらいに健在だし、それを "当時のLUNA SEAを知らない" 世界的プロデューサーのStephen Lillywhiteが「CROSS」に引き続き手掛け、フラットな目線と確かな手腕でまとめ上げることで、今の時代に照準の合ったサウンドが実現したように思います。

 勝手な想像ではあるけど、原盤がメンバー間のライバル心や世の中をあっと言わせてやる的な野心で制作されたとすると、今2作はメンバーの音楽的/人間的な成長やそこからくる信頼がベースにあり、今ここで代表作を改めて世に出すことへの自信と覚悟が原盤制作時とは違う意味合いでの緊張感を生むことで、より太く立体的に聴こえてくる実際の音像以上に厚みや頼もしさを醸し出しているように思います。だからこそ、擦り切れるくらい何度も繰り返し聴いてきたオールドファンにも「これだよこれ!」と言いたくなるくらい期待に応えてくれて、一方で新たに聴くような人に対して「これが最新型のLUNA SEAだよ」と出しても恥ずかしくない、そんな理想的なセルフカバーになっているのではないかなと。美しい彫刻のような「MOTHER」ブラックホールのような重力を帯びる「STYLE」、控えめに言ってどちらも最高である。

 

 「FACE TO FACE」みたいに新しい解釈が分かりやすく出たような楽曲や、若さが出た部分がものを言うような楽曲は原曲の方がまだ好みだなというケースもあるかもしれないけど、個人的にはもう今後「MOTHER」「STYLE」を聴くなら基本的にはセルフカバー盤でいいやと思えるくらいにブッ刺さりました。管理人はちょうどこの頃がリアルタイムだっただけに思い入れもひとしおだったけど、何と言うか彼らを好きになって良かった、好きで居続けて良かったなと、ある意味で音楽人生を肯定してくれるような思いというか、大袈裟に言うとそんな感想すらも抱くほどに。というかヴィジュアル系の雛型を作ったとか云々以前に、ロックとして純粋に格好いい!それだけでも十分すぎた。あとは唯一ライブで一度も演奏されていないことで別の意味で伝説化している楽曲「FAKE」がどうなるか。一応今後の可能性を匂わせている発言もあったようだけど…果たして。

 

Devin Townsend Project "Ghost"

Ghost

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 カナダ出身のヘヴィメタルシーンのマルチミュージシャン/プロデューサー・Devin Townsendのソロ通算14作目、Devin Townsend Project名義での4作目(2011年)。

 

 13作目「Deconstruction」と同時発売で、当初アナウンスされた同プロジェクト4部作の最終作。「Deconstruction」がトチ狂ったメタルアルバムなのに対し、こちらは環境音楽の方面へ本格的に接続。これまでもソロ名義を中心にプログレッシブ志向やアンビエントなアプローチを積極的に取り入れてきたものの、ここまで作品を通して、かつ一方向に徹底したものは恐らく初。しかも過去にもソロ/別バンドでの異なる作風の同時期リリースはあったけど、同時発売の2作でここまで落差があるのも凄い。過去作でのそういった極端な作風の違いは自身の疾病や薬物によるものも大きかったと公言しており、既にそれを克服しているはずなのに今回の落差が過去最大なのは驚きを通り越して笑ってしまうし、それも最初にぶち上げた4部作の流れ──つまり計算通りなのだと思うと、彼の発想や手腕の図抜けっぷりを実感。フルートの音から始まり、アコギのストロークや絹糸のようなボーカルが優しく重なり、ピアノやシンセや民族楽器、自然環境音までも伴って映画のように進行していく楽曲群は、どの曲が~という感想が入る隙を与えないくらいに横一線で完結しており、音像には癒されつつも別の意味で圧倒されてしまうこと必至。再現ライブは教会で実施されたということで、さぞ映えたことでしょう。好みは分かれるかも知れないけど、完成度の高さや彼の作品としての収まりの良さには文句のつけようがない一作。

 

 

 今回の記事に合わせ、彼を中心に活動していたエクストリームメタルバンド・Strapping Young Ladの4作目、ソロとしては通算8作目となるThe Devin Townsend Band名義の2作目の過去記事の文章を少々見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。