Foetus / Thaw

Thaw

Thaw

 

 オーストラリア出身のJG Thirlwellによるインダストリアルプロジェクトの5thアルバム(1988年)。本作においては「Foetus Interruptus」名義となっています。

 

 「手にした日から、誰にだって、プロ感覚でシンセが弾けるようになる画期的なシンセ講座ができたんだ!!」の有名な文句でお馴染みの一作。活動の拠点をロンドンからニューヨークに移しての1作目で、エンジニアリングにはSwansやSonic Youthらを手掛けたMartin Bisiがクレジット。元SwansのRoli Mosimannと結成したWisebloodの活動を経た後ということもあり、その辺り──NYアンダーグラウンドの文化/人脈の影響が十分に成果として上がったアルバムと言えます。最も耳につくポイントは、とにかく重い。とりわけリズムトラックを中心に低音の層の一音一音がビシバシとお腹に響くような重さだし、明るく狂っていたかのような過去作の歌い方から、より迫真に迫るかのようなボーカルの変化もあり、聴こえてくる全ての重さ・密度・濁りっぷりが尋常じゃない。その上で、知性と本能を同時に封じ込めるような雑多な音楽構築センスは健在だし、戦々恐々としたインダストリアル・オーケストラな複数のインスト曲も、決して勢いを分断することなくアルバムの要所に散らばり、全体でひとつの凶暴な音塊を形成するかのように収まっています。画期的なシンセ講座かどうかはともかくとして(えっ)、本作以降オリジナルアルバムの発表がしばらく途絶えるのを鑑みても、彼の一つのターニングポイントを迎えた作品であり、名作とされる「Hole」「Nail」のいずれにも劣らない存在感を示す傑作。 凄みがダイレクトに伝わる分、その中では意外と一番聴きやすいかも?