X JAPANのギタリスト・hideによる編集盤(2002年)。
管理人にとってhide/HIDEは、バンド本隊のX JAPANより先に存在を認知したというちょっと珍しい存在でした。たまたま身近にあった(自分のものではない)hideの映像作品などを通して目にしたあの派手で奇抜なメイク姿や、過剰に煌びやかな極彩色のグッズなんかに「なんだこれ格好いい!」と「なんか毒々しくて怖い。でももっと見たいような見たくないような…」みたいな相反する気持ちを抱き、その間で揺れ動きながらも非常に興味や好奇心を掻き立てられたものでした。こういったメイクを施したバンドマンをちゃんと見たのは思えば彼が初めてだったというのもあるし、ソロデビュー後のテレビでの目を疑うような過激なパフォーマンス(有名な「DICE」など)や、1stアルバム『HIDE YOUR FACE』のただでさえインパクトのあるマスクジャケが立体&合成仕様になっているところにも衝撃を受けたりと、とりあえず(当時の自分にとって)刺激が強すぎた音楽面よりもまずあらゆる点で“視覚”情報から魅入られていったのをよく覚えています。X JAPAN『BLUE BLOOD』のジャケに記されているバンドのキャッチフレーズはhideの考案らしいけど、まさに自分はhideに“VISUAL SHOCK”を見事にぶちかまされてしまったのでした。そして4thシングル「TELL ME」を聴いて「こんな佇まいの人からこんな綺麗な楽曲が生まれるのか」と別の意味でまたショックを受け、その辺りから本格的に音楽の方にも心を掴まれることに。なにぶん音楽を聴き始めてちょっとくらいという相当昔の話なので正確な順序は若干曖昧だけど、自分のhideとの出会いや惹かれていった流れは大体こんな感じだったな~と書きながら一人懐かしんだり。
本作はそんなhideの2作目の編集盤/ベスト盤で、シングル表題曲を年代順に全曲収録したシングル集。1作目の編集盤であり純粋なベスト盤でもある『hide BEST ~PSYCHOMMUNITY~』については、オリジナルアルバムは3作しかないので全部聴けばいいじゃん的な気持ちからあまり惹かれなかったのだけど、こちらは編集意図が明快なのもあって割とよく聴く一枚だったりします。
そもそも管理人はシングルコレクション的な作品全般が好きなんですよね。もちろん前提として、シングル集=そのアーティストのベスト、とは必ずしもイコールではないし、何ならアーティスト非公認の作品も少なくないというのは一応理解しつつ。やっぱりその都度アーティストがシングル曲として発表する意図を込めてリリースしてきたものの積み重ねだし、総体的なベストアルバムとは異なる華やかさや魅力があると思います。ものによってはアルバム未収録曲やアルバム収録に際しバージョン違いになった楽曲のシングルver.の収録、90年代以前のものだともはや入手や鑑賞が困難と化した8cmシングルの曲なんかも回収できたりして資料的な意味でも有り難いし。
それはhideにとっても同じで。本作ではアルバム初収録となったシングルver.の楽曲や『Ja, Zoo』以降のシングル曲などが収録されることで、ソロ活動開始~没後のヒストリーをシングル曲を足掛かりに総ざらいできるとても有用な一枚に。打ち込みのリズム隊によってアルバム版とは少し違う感触を拝めるデビュー曲「EYES LOVE YOU」、ハードなリフと曲調の中を力強いメッセージがストレートに響く初期の傑作「DICE」、hideの後ろでコギャルやストリッパーが踊るというこれまた別の意味で驚愕の演出を見せつけたラテン曲「Hi-Ho」、言わずと知れた代表曲「ピンクスパイダー」etc...シングル曲がズラっと並ぶだけでも、hideの人並み外れたポップセンスと幅広いアプローチを十分に体感できちゃうのは流石。バラードからハードな曲まで揃いつつも、シングル集なので基本的な聴き心地が明るくキャッチーに収束していくというのがまた良いです。「TELL ME」は上述した通り個人的に思い入れの深い一曲で、1994年のオリジナル版と2000年のhide with Spread Beaver版の両方が収録され、両方を楽しんだり聴き比べたりできるのも嬉しい。
そもそも本作自体、2ndアルバム『PSYENCE』制作時期にお蔵入りとなっていた未発表音源「In Motion」が13thシングルとしてリリースされ、恐らくこれがhideの最後のシングルになるだろうから、それを収録したアルバムを作るという形で立ち上がった企画なんじゃないかな?と思うのだけど、どうか。いずれにせよ、ベスト盤的な楽しみ方も十分にできる上に、オリジナルアルバム3作だけではカバーできない範囲の主要な楽曲も収められたとても価値のある一枚ではないかなと。更にもうちょっと掘りたい人はここに『KING OF PSYBORG ROCK STAR』を加えれば、hideのほとんど全ての楽曲を極力被りなく効率的に揃えられる(たぶん)という点で攻守最強である。
この記事の公開日の少し前(2024年12月13日)はhideの生誕日で、存命であれば還暦を迎えていたのだとか。それを記念したリリースやイベントも行われたらしく、2025年5月にはhide with Spread Beaverのワンマンライブも予定されているとのことで、未だ続くhideの人気の根強さを思い知らされます。
今回の記事に合わせ、過去に書いていたhideのオリジナルアルバム3作の紹介記事の文章を少々見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。本当は前回(『KING OF PSYBORG ROCK STAR』)ここまでいっぺんに更新したかったのだけど、色々あってさすがに無理でした。