MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

MUCC "鵬翼"

鵬翼(通常盤)

鵬翼(通常盤)

  • アーティスト:ムック
  • ユニバーサル シグマ
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 4人組ヴィジュアル系ロックバンドの5thアルバム(2005年)。

 

 前作「朽木の灯」で内なる暗黒面を出し切り、行き着くところまで行ってしまった反動なのか今作では大幅に路線変更。これまでの彼らの代名詞とも言えた重さ・ねじれ感・アクの強さなどから解放され、彼らの持つ色や世界をより普遍的な視点で表現し外へ広げる方向へ本格的に舵を切ることで、結果として大きな転機を迎えるきっかけにもなった作品に。憂慮や懐古や希望などがありのまま綴られた情景を思い浮かべやすい歌詞の言葉選びや、それを具現化するような暖かみと軽やかさ(と一定のヘヴィさ)が同居するサウンドには驚かされつつも、クセの強さが抜けたことで彼らの武器でもある歌謡的なメロディもスッと身体に馴染みやすくなり、新たなアプローチも映えるなどしっかりと成果は上がっており、心を掴まれるような引きの強さと聴きやすさを見事に両立させています。リアルタイムでの印象は「明るくなった」だったけど、より沢山のディスコグラフィを重ねた今になって聴き返すと意外とそうでもなく、明るさというよりは、より何でもありになっていった後のMUCCとは一味違うシンプルさだったり、揺れ動きながら真っ直ぐ一方向を見つめ直している何とも言えない感情の機微だったり、そういう独特の切なさにも似た色合いの方が強いかも。それが逆に彼らの作品群の中でもある種異質たらしめているというのも面白い現象。本作がなかったら次作「極彩」やそれ以降のMUCCはなかったと思えるほどに重要な岐路を刻んだ作品で、個人的にはかなり好きな一枚。