MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

MUCC "カップリング・ベスト" "カップリング・ワースト"

カップリング・ベスト

カップリング・ベスト

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 4人組ヴィジュアル系ロックバンドの編集盤(2009年)。

 

 文字通りシングルのカップリング曲などがまとめられた編集盤で、「カップリング・ワースト」なる作品と同日発売。タイトルの「ベスト」「ワースト」には深い意味はなく、約2年前に2作同時リリースされたベスト盤「BEST OF MUCC」「WORST OF MUCC」同様に収録曲が発表時期によって振り分けられたもので、本作は11th~当時最新の20thシングルの楽曲から主に選出。ちょうどMUCCがもっと分かりやすさやメロディの追求、アレンジの振り幅などに力を入れ出した頃で、それはカップリングにおいても同様。A面の皺寄せやら反動やら、また過度に実験に走ることもなく、創作意欲に素直に沿った実直な楽曲が満載。シングル級の爆発力を持つ「どしゃぶりの勝者」、ジャジーなレゲエから怒涛な展開で転がっていく「メディアの銃声」、カッティングギターとベースラインがハネる「心色」などは特に隠れた名曲と言って差し支えないし、既存曲の別アレンジ「ガーベラ -surf ver.-」「最終列車 -70'S ver.-」や極悪メタルコアが炸裂する「G.M.C」などの過去アルバムのボーナスCDから選出された曲は、彼らのより根幹の部分がディープに表現され興味深く聴けます。当時MUCCが暗い曲だけでなく色々手広くやり出したとはいえ、割とアルバムごとにきっちり作風が分かれがちではあるので、バラバラの楽曲がポーンと放り込まれた本作は彼らの雑食っぷりが顕著に表れており、改めて通して聴くことで彼らの魅力の再確認や新発見があるかも。「カップリング・ワースト」や「BEST OF MUCC」と対比しながらじっくり聴き込める裏ベスト的な一作。

 

 

 

 

 

カップリング・ワースト

カップリング・ワースト

  • アーティスト:ムック
  • ユニバーサル
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 4人組ヴィジュアル系ロックバンドの編集盤(2009年)。

 

 「カップリング・ベスト」と同日発売の編集盤で、こちらは11thシングル以前のカップリング曲などを収録。ただ単に発売当時までの候補曲全体から収録曲数の都合で区切って振り分けただけだとは思うし、特にキリが良いポイントでもないんだけど、これが不思議と丁度よくて、こちらは雑多な「~ベスト」とは違ってまるで一つの色で意図的に統一されたようなまとまり具合。しかも基本的に曲順が時代を遡る形で並んでいるため、聴き進めるごとにどんどん濃くなっていくという(笑)。まぁ「~ベスト」と違ってアルバム初収録曲ばかりではないというのもあるんだろうけど、その分手の行き届いた選曲と言えるし、"「WORST OF MUCC」に入りきらなかった古い曲の再構築" という側面は本作の価値を高めているかと。後に再録もされた感情を揺さぶる名曲「儚くとも」を筆頭に、もろに古き良きフォークを体現した「商業思想狂時代考偲曲 (70's ver.)」も同曲の(平成版)との聴き比べで必聴だし、アルバム初収録となった(多分)「五月雨」もインディーズ時代を代表するレベルの名曲だしで、初期や初期を思わせるMUCCの尖り具合や生々しさをまとう楽曲が矢継ぎ早に流れていく様は、他の編集盤とはまた一味違い、また内容的にも全く劣らない圧巻の一言。「~ベスト」と対の一枚として、また「WORST OF MUCC」の兄弟作的な存在として聴き逃せない、"ワルいムック" が堪能できる一作。

 

 

 紹介記事中にも出てきましたが、この両編集盤は同じく同日発売された「BEST OF MUCC」「WORST OF MUCC」の対というか続編というか、そういう位置づけの作品と思われます。そんな「BEST~」「WORST~」も、2作まとめて紹介した記事をだいぶ前に書いていまして(長いこと非公開状態だったけど)、半年ちょっと前に文章を少し見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。

 

Schulz "What Apology"

What Apology

What Apology

  • アーティスト:Schulz
  • Sudden Death
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 KMFDMの元ギタリスト、Slick Idiotの現ギタリスト/プログラマー・Günter Schulzによるソロプロジェクトのアルバム(2006年)。

 

 KMFDMが1999年に(一度)解散した後、中心人物の一人だったEn Eschと2人でSlick Idiotを結成し活動。その合間を縫ったお互いのソロ尽力期間中(?)にリリースされています。KMFDMには限られた期間の加入だったとはいえ、1990~1999年という音楽的な変革期・商業的な全盛期を支えた一人として、非常に重要な立ち位置にある人物でした。そんな彼のソロは、やはりというかお家芸のギターが縦横無尽に活躍という点では半分は想像通り。ただ思ったよりはKMFDMやSlick Idiotっぽさはないというか、ブリッジミュートのギター、8ビートのリズム、ノリのいい歌でかっ飛ばすという分かりやすいハードロックが展開。楽曲は2分台~5分弱で全11曲45分というコンパクトさもあって実に潔く、単調さを感じるよりも先に次へ次へと移行していくので聴き心地が途切れないところが良いです。キャリアもあり、バンドでは一部楽曲制作にも携わっていただけに実にこなれています。インダストリアルロックっぽさもほとんどないけど、中盤~終盤にかけてはかつてのMinistryのようなインダストリアルスラッシュ、かつてのKMFDMのようなフュージョン風、PIG風のアンビエントテクノなど、まぁ既視感の強い範疇ではあるけど軽いグラデーションで楽しませてくれたりも。現時点ではソロはこれ1作のみのようで、最近はこのソロで対バンツアーも行った昵懇のRaymond Wattsのサポートに終始しているようだけど、もし次回作があったら聴いてみたいですね。

 

 

 他のKMFDMメンバー(Sascha Konietzko、En Esch)のソロプロジェクト作品も過去に紹介記事を書いており、今回を機に文章を少し見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。

 

KMFDM "Don't Blow Your Top"

Don't Blow Your Top

Don't Blow Your Top

  • アーティスト:KMFDM
  • Metropolis Records
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 ドイツ出身のインダストリアルバンドの2ndアルバム(1988年)。

 

 彼らと長きに渡り蜜月関係を築き上げるシカゴのインダストリアル/ニューウェイブ系の有名レーベル・Wax Trax! Recordsからの第1弾作品。当時すでにCabaret Voltaire「Code」やMinistry「Twitch」などを手掛けていた名プロデューサー・Adrian Sherwoodがタイトル曲/シングル曲の「Don't Blow Your Top」ほか数曲をミックス/プロデュースしており、そこに関しては明らかに一つ抜けた出来。より硬くシャープに処理されたリズムトラックやメタルパーカッション的なジャンク音、女性コーラスの導入など、後のKMFDMの原型のような攻撃性と享楽性の萌芽が見受けられ、地味さや実験っぽさが拭えなかった前作からの中庸感をはみ出すことに成功しています。ただやはり他の楽曲に関しては前作の延長の域を出ておらず、特に本作を最後にソロプロジェクト(PIG)始動のために脱退するRaymond Wattsがボーカルで存在感を示す楽曲と、終始サンプリングボイスだったりボーカルなしだったりの楽曲との落差も大きく、全体としての聴き応えやメルクマール的な印象としては、あと一歩という物足りなさが残ります。しかし彼らのコアリスナーになった人であれば、後追いで聴いても何らかの発見がある作品ではないかと。

 

 

 これで彼らの初期オリジナルアルバムの紹介抜けが埋まった…かな?そして今回を機に4th・5thアルバムの記事の文章を少しだけ見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。

 

KMFDM "What Do You Know Deutschland?"

What Do You Know Deutschland

What Do You Know Deutschland

  • アーティスト:KMFDM
  • Metropolis
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 ドイツ出身のインダストリアルバンドの1stアルバム(1986年)。ちなみにバンド名は「Kein Mehrheit Furh Die Mitleid」(大衆に情け無用)の略。

 

 この界隈の先駆者であり、今日まで活動を続ける大御所・KMFDMの記念すべき一作目。元々は7曲入りの限定生産レコードで、翌年に別のレーベルからCD化した際にシングル曲などの大幅な楽曲追加やジャケットの一新が行われたようです。彼らがアメリカ進出した際に広く流通したWax Trax!盤もそれがベース。そうして実質的な完成を見たこの1stアルバム、楽曲の出来はまだまだまちまちといった感じ。「Kickin' Ass」やそのままSOFT BALLETが歌えそうな「Itchy Bitchy」など、シングル曲を中心としたアグレッシブな曲なんかはRaymond Wattsの若くも荒っぽい歌力もあって結構格好いいし、全体的に音も硬めで好みなんだけど、チープで簡素なビートに終始した曲も多くそこは退屈さが先行。実験性が強いせいなのか、ただ単に自分が理解できないのをそう感じているだけなのかはよく分からないけど(オイ)、そもそもが実験音楽を明確に展開していたプレデビュー作「Opium」とはやっぱり違って、それをEBMへ落とし込む上での試行錯誤が強く出ているような印象。なんでも主要メンバー・En Eschが加入する前の楽曲も多いみたいで、さもありなんという感じ。挑発的なタイトル(?)に反してそういった地味さが勝る一作。ただこの時点で、特に初期の彼らの特色でもあったダブ/レゲエの要素があったり、ギターやサンプリングを駆使していたりと、その先見性がしっかりと確認できます。

 

 

 前回の記事で紹介した「Extra Vol. 1」が初期KMFDMのコンピレーションという内容だったんですが、そもそもその肝心の初期KMFDMをまだ普通に紹介しきれてなかった!ということで、今回は1stアルバムの記事でした。KMFDMは歴史が長いだけに作品数も多く、このブログでもけっこう紹介済みなんですが、ゆっくりマイペースに過去記事を見直していこうと思います…多分。サボらなければ。

 というわけで、今回はプレデビュー作「Opium」と3rdアルバム「UAIOE」の過去記事を見直して少しだけ文章を修正しているので、よろしければ合わせてご覧ください。

 

KMFDM "Extra Vol. 1"

Extra 1

Extra 1

  • アーティスト:KMFDM
  • Metropolis Records
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 ドイツ出身のインダストリアルバンドの編集盤(2008年)。

 

 シングル盤等に収録されたアルバム未収録曲をかき集め2枚組でパッケージングした「Extra」シリーズ。その全3作の第一弾である本作は、古くは1986年の音源から始まり、1992年「Money」までを収録。楽曲は年代順で機械的にただ羅列されるのみとカタログ的なアイテムであり、そのため同じ楽曲のバージョン違いが何曲も続いたりもするので、その辺りには割り切りが必要。しかしそんな「Extra」の中でも本作のDisc-1は重複部分が少なく、初期の代表曲が偶然にも綺麗に並んでいる上に、シングル盤以外からのレア曲も幾つか入っているということもあり、アーリーベストのようにも聴けるなかなか優秀な一枚に。セールス全盛期の華やかな楽曲に比べるとぽっかりと穴が開いたような物足りなさもあるけど、この時期ならではのタイトで緻密かつ実験色強めのEBMや、それがダブやファンクの要素を取り入れながらインダストリアルロックとして形作られていく様が楽しめるし、また音質の向上により細かい音の絡みもはっきりと、しかも2008年ver.といった感じで迫力十分で聴けるのが大変嬉しい。元が古いので特にその恩恵は大きそう。Disc-2はアルバム初収録のシングル曲「Split」近辺も網羅しているのも有り難い。曲により艶やかさが出てきた頃だけど、「Money」原曲大破壊のスラッシュメタル化した別mixがまた素晴らしい!さすがに本作をKMFDMの入門とかには勧められないけど(当たり前)、アルバム収録ver.と全然違って新鮮に聴ける曲も多いし、オリジナル作品をひと通り聴いたけどまだ掘りたい!というような濃いめのリスナーにぴったりの一作。

 

 

 最初にも書いた通り、この「Extra」シリーズはVol. 3までリリースされているのですが、管理人は最初は重複が比較的少なめで、レア曲集として最も意義がありそうなこの「Vol. 1」しか手を出しませんでした。「Vol. 2」の収録曲リストとか見てみると、同じ曲がずらずらっと3~4曲とか、Disc-2に至っては9曲とか並んでるんだもの!さすがにそれは敬遠しちゃう。…しかし管理人にとってKMFDMは大好きなのはもちろん数少ない収集癖のあるバンドだし、スルーしたままだとなんやかんやいつまでも気になってしまうので、結局あとから「Vol. 2」も「Vol. 3」も入手しちゃいました。というわけで、次回へつづく(たぶん)。