MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

En Esch "Cheesy"

Cheesy

Cheesy

  • アーティスト:En Esch
  • Tvt (tee Vee Toons)
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 KMFDMの主要メンバー(当時)・En Eschによる1stソロアルバム(1993年)。

 

 当時KMFDMが「Apart」というアルバムの制作に勤しむも、レコード会社の要請によりEn Eschの曲がお蔵入りになり、「Apart」は構想を変え「Money」としてリリース。そしてそのEn Eschの没になった曲を集めて作ったのが本作、という流れのようです。何とも厳しい話だけど、当時KMFDMがアメリカで少しずつ知名度を上げつつあったことや、そのレコード会社が破産するほど苦しかったことを考えるとある程度仕方なかったのかも。本作にはKMFDMのメンバーを始め多数のミュージシャンが参加しており、KMFDMライクというか想像できうるイメージから大きくは外れない音。しかし女性コーラスやエレキギターも時折活躍するものの、全体的には華やかさは薄くどちらかと言うと3rd「UAIOE」の延長にあるようなややマニアックな作風。最終アレンジ次第ではあると思うけど、確かに「Money」の他の曲とは相性は良くないかも。しかしブリブリのシンセベース&メタルギターで駆け抜ける「Rule The Mob」やエスニックなハードテクノ「Soy Botones」は素直に格好いいし、自身が参加したインダストリアルユニット・Pigfaceの曲をサンプリングしたという12分弱に及ぶ「Daktari」も、そのままPigfaceや初期Die Kruppsに通じるようなエクスペリメンタルな大曲で強烈な印象を残します。全体的にやや暗いけどそんなに悪くないし、後のSlick Idiotの原型のような面白みもあるので、Excessive Forceにまで手を伸ばすようなコアリスナーであればセットで要チェックな一枚。

 

 

 ※先日改稿したKMFDM「Money」の記事において、“2020年には本来の構想通りの「Apart」が配信リリースされた”と書きましたが、それは間違いで、実際は本来の構想から "9曲を抜粋した" もののようです。つまり、En Eschが「Apart」向けに制作したとされる楽曲が収録された作品は、今現在もこの「Cheesy」のみになるようです。訂正いたします。(2022.7.10)