MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

川田まみ "MAMI KAWADA BEST "F""

 I've専属ボーカリストの編集盤(2016年)。

 

 約15年間にも及ぶキャリアを網羅した3枚組ベスト盤。前アルバム「PARABLEPSIA」が一定の集大成と新たな一歩を形にした自信作だったものの、そこが到達点ということなのか、はたまた同時に自身のキャリアに逡巡を抱えてもいたせいか、2016年いっぱいで歌手活動を引退することになり、それに合わせてリリースされたもの。何と言ってもそのボリュームが凄い。彼女のボーカルデビュー曲から人気タイアップ曲からアルバム初収録含む全シングル曲まで、インディーズ/メジャー問わず代表的な曲をかき集めるようにこれでもかと結集。中には収録先が限られ、今回I've作品初収録となったような貴重曲なんかもあって実にありがたい。さらにさらに初回限定盤だと、超がつくほどの入手困難曲7曲入りのCDと、豪華ゲストを招いた引退ライブ&ドキュメンタリー&全MVを収録したBlu-rayが付属という、至れり尽くせりの超豪華仕様。ここまでやってくれると何も言うことはない…のだけど、実はメジャー作品のアルバム曲からはほとんど選出されていないので、このベスト盤を入り口に隅から隅まで堪能したような人でも、まだ掘る余地があるという(笑)。それはそれとして、本作でも彼女の歴史は十分に紐解くことができ、とりわけ「IMMORAL」~「Break a spell」あたりまでの佳曲の連発具合が圧巻。彼女の成長と、I'veサウンドとロックの融合/進化がシンクロし、アニソンシーンのトップに上り詰めていく過程がありありと刻まれています。この時期の集中力と勢いはI've随一と言っていいかも。しかしその傍ら、いわゆる"初期I've風"な透明感の深いアプローチも引退直前までずっと続けており、その2つの軸あってこその川田まみだったのだなと気づかされます。一方、レア曲CDの方は個人的に初めて聴く曲も多く、中でも「seduce」がI'veでも1、2を争う凶悪リフを刻むインダストリアルメタルで、こんな曲もあったのか!と驚嘆。入門用としては前ベスト「BIRTH」の手軽さも良いけど、彼女のコンプリートベストとしてもI'veの名曲集としても実に充実した本作は、界隈のリスナーであれば是非とも手に取る価値がありましょう。たくさんの名曲をありがとう!

 

 

 彼女の歌手引退により、I'veの黎明期~黄金期に活躍した専属歌手の全員が卒業を迎え、I'veにとっても確実に一つの時代が幕を下ろしたと言えます。そして当ブログでは、I'veの初となるコンピレーション盤「regret」に始まり、I'veやその専属歌手がリリースした膨大な作品群のうち、主たるもののほとんど(たぶん)を時系列に沿って紹介記事にしてきました。気づけばかなりの量になっていると思うけど、この川田まみの引退ベストという大きな区切りまで続けるのが個人的な一つの目標でして、今回達成することができて自己満足でいっぱいであります。長かった…。TCRさん、見てますかー。