MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

lynch. ライブハウス支援企画CD 「OVERCOME THE VIRUS」

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 出典:lynch. official web site https://pc.lynch.jp/

 

 管理人がひっそり宇宙一好きなロックバンド・lynch.が、コロナ禍の影響により存続が危ぶまれる全国のライブハウスに向けた支援企画を去る3月30日に発表しました。その内容は、今回このために新曲を書き下ろし、販売・配信で得られた利益の全額を、lynch.が過去に出演した全国148カ所のライブハウスに分配・寄付するというもの。彼らが大好きな管理人としては、もちろん新曲が聴きたいというのもあるけど、その姿勢や行動力に感銘を受け、ライブハウスという場所や文化を微力ながら応援する意味も込めてこの企画に参加しました。という訳で、購入したCDの感想や、今回これに乗じてlynch.というバンドを知らない人へのお勧め作品なども軽く書いてみようと思います。

 

 

目次

 

 lynch. ライブハウス支援企画CD 「OVERCOME THE VIRUS」紹介 

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 「ウイルスを克服する」というド直球なタイトルがつけられた3曲入りCD。4月28日より通販限定で発売され、5月13日から配信が開始されています。今回の企画で画期的なところは、「こういう企画を始めます、曲を今から作ります」「販売方法は決まり次第発表します」と、全容がまだ固まり切っていないうちからアナウンスされ、その後も制作過程をボーカリスト・葉月さん自らTwitterで細かく報告していたこと。制作にかけるスピードも、曰く"普段では絶対やらないスピード感"とのことで、寄付にも関わるために1日も早くリリースをしたいという意図だったり、ニューアルバムのライブツアーが軒並み中止になってしまったファンの気持ちを汲み、少しでも喜んでもらおうとする心意気が感じられるもので、そのワクワク感すらも1つのエンターテインメントとして成り立つものでした。それゆえか、歌詞カード及びジャケットは最小限のデザインになっているけど、この殴り書きされたタイトルも逆に格好良くて痺れてしまいます。

 

 01.DON'T GIVE UP

 今回のために制作された完全新曲。バンドの得意とする単調ながらも破壊力を擁するリフをふんだんに使った、いかにもlynch.らしい激しい曲で、Bメロの英詞シャウトやサビのコーラスなどにおける掛け合いに、否が応にもライブで盛り上がる様を容易に想起させます。過去曲で言うと「BLØOD」や「DAMNED」に近い雰囲気を受けるけど、そこに「ULTIMA」を通過したがゆえの無機質なギミックを僅かに差し込むアレンジも光るし、遠回しながらもファンとの絆や自分たちの姿勢を強く肯定する歌詞が頼もしく、「あまり深刻な曲にしたくない」という前置き通り、曲調にもメッセージにもとことんまで強気なポジティブに溢れた楽曲。ライブが再開されたら是非披露して欲しいです。

  

 02.WALTZ

 ギタリスト・悠介さん作曲の楽曲で、3月リリースのニューアルバム「ULTIMA」のアウトテイク。レコーディングは済ませてあったそうだけど、未発表だったために受け取る側としてはこちらも完全新曲。聴く前は作曲者や何となくのタイトルのイメージからお得意のミドルチューンかと思いきや、Y介産楽曲の中でも1、2を争うくらいテンポが速いという。そういう意味では過去曲で言うと「VARIANT」にも通じるけど、ほぼ全編を3/4拍子で駆けていく曲構成の妙や、突然妖艶な空間を生み出しそのまま再加速していく間奏など、緩急の付け方やどこか空想的で儚い詞世界も手伝って、独特の魅力を持つ楽曲。

 

 03.A GREAM IN EYE -NEW TAKE-

 2009年のシングル曲の再録。アルバム収録に際し一度アレンジを変更されたものが以降定着しているけど、今回はそこからリアレンジされずほぼそのままの形で再録。彼らは古い曲もライブで人気だったりよく演奏されるために再録もよく行われているのだけど、その点今回は比較になる元のテイクとの落差が小さく、音質の向上以外の驚きは控えめとも言えます。しかし、この曲はライブで毎回のように重要な位置を担ってきた楽曲であり、曲の持つ光や希望といったイメージやメッセージが今回の企画に相性も良く、ライブが無くなって沈んでしまったファンにとっては特に嬉しいものになったのではと思います。

 

 

 

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 通販ではCDだけではなく、寄付の額に応じてグッズとのセットも選べるようになっており、管理人はCD+2goods(パスケース+巾着トート)を購入しました。パスケースのバンドロゴは経費削減のためメンバー自らが型押し作業を行ったそうで、ある意味これが最も現物派の購買欲を刺激しているかも…。巾着トートはドラマー・晁直さん推薦の「ネギ固定」ショットをTwitterにアップ。使いやすくて良いですね。7月からレジ袋が有料化するみたいなので、今後はこれで買い物に行きます。

 

 また、通販CDやダウンロード販売だけではなく、サブスクでも各楽曲は配信されており、再生される度に寄付に繋がるそうです。もう完全に音楽鑑賞の環境をサブスク一本に移行している人や、lynch.を聴いたことがないという人にとっても、この手軽さは有り難いですね。 

 

 

 lynch.を聴いたことのない人への個人的お勧め3+1作品

 というわけで、ここでlynch.を聴いたことない・よく知らない人へお勧めするならこれじゃないかな、という作品を3つ(+1つ)ご紹介します。※個人的見解です

 その前に、そもそもlynch.ってどんなバンド?という疑問にはググって頂くとして 以前書いたものを貼りつけておきます。

lynch.は愛知県出身のロックバンド。2004年に結成され、2010年に現在の編成になり、2011年にメジャーデビュー。近年では幕張メッセでのワンマンライブを成功させ、LUNATIC FEST. 2018への出演を果たし、他ジャンルとの対バンイベントなどにも多数参加するなど、精力的なライブ活動を軸にしながら現在進行形で人気を拡大しているバンド。一応ヴィジュアル系シーン出身と言えるのだけど、ヴィジュアル系にもラウド系にも否定をしない一方で安易に属さないとするスタンス、その枠にとらわれない音楽性を武器に、「化粧をしている激しいバンドで一番を目指している」と公言しています。 

 

ULTIMA(初回限定盤)

ULTIMA(初回限定盤)

  • アーティスト:lynch.
  • 発売日: 2020/03/18
  • メディア: CD
 

 今年3月に発売されたばかりの、フルアルバムとしては10作目となるニューアルバム。今もなおバンドとして人気を拡大しながら走り続けている彼らにとって、新作は前作を超えようと、最新作こそ最高傑作であろうとする姿勢を強く持ち続けており、その意気込みと自信が今作のタイトル=「究極」に繋がっています。下手に手を広げず、自分たちの得意とするものを高めることに集中しながら、一方であくまで見せ方のテーマの1つに留めている「サイバーパンク」というワードを一部の楽曲へ音作りのスパイスとして組み込み、無機質/近未来的なニュアンスを得て新たな表現にも挑戦しています。リードトラック「XERO」の一部コーラスにはLUNA SEARYUICHIが参加という熱いトピックも。

 

 

 

 

SINNERS-EP (初回限定盤)

SINNERS-EP (初回限定盤)

  • アーティスト:lynch.
  • 発売日: 2017/05/31
  • メディア: CD
 

 ベーシスト・明徳が脱退しての初音源ミニアルバム。後に明徳が復帰して、4人組の時期の音源を弾き直してまとめたものが別に出ているけど、ここではあえて本作をチョイス。この作品はベーシストが脱退してしまったピンチをあえてプラスに変えるべく、1曲ごとに異なるベーシストを迎えているという他にない特徴があり、それもlynch.の影響や親交という点から見ても、これ以上ないメンバーが集まっています(LUNA SEAのJ、黒夢の人時、Pay money To my painのT$UYO$HI、OUTRAGEの安井義博、MUCCのYUKKE)。曲ごとに違うベースを聴ける楽しみもあり、いずれかのバンドに通じてる人にとっては興味の入り口になり得るし、EPサイズで聴きやすいという点からもお勧め。

  


 

 

GALLOWS

GALLOWS

  • アーティスト:lynch.
  • 発売日: 2014/04/09
  • メディア: CD
 

 フルアルバムとしては6作目。当時10周年を迎えるにあたり、決定的な作品を作るべく制作された渾身の一枚。バンドでただやりたいことをやるのではなく、バンドを高めるためにやるべきことを見つめ直した当時の活動の延長・集大成。自分たちの強みを強調する歌と作詞、多方面からの影響を迷いなく集約した作曲とサウンドはバンドをネクストレベルに進め、エンジニアリングにおいてもようやく目標としていた水準に到達したと自信を見せ、ボーカリスト・葉月以外のメンバー(というか悠介)が作曲に本格的に関与し始めた当時ということもあり、以降の活動や作品の起点にもなっているのが明らか。バンドの最高傑作を挙げるとなると、現在においても高確率で挙がってくるであろう代表作。 

 


 

 

10th ANNIVERSARY 2004-2014 THE BEST

10th ANNIVERSARY 2004-2014 THE BEST

  • アーティスト:lynch.
  • 発売日: 2015/03/11
  • メディア: CD
 

 バンド10周年を記念した2枚組ベストアルバム。ここまでのほぼ全てのシングル曲・ライブでの人気曲などを、あくまでもライブバンドであるという自負のもとに、2枚それぞれをライブのセットリストとしても機能するように選出。古い曲は原曲の雰囲気をできるだけ残す形で最低限の再レコーディングを行い、近年の音源も音質を「GALLOWS」レベルに引き上げ、各ディスク終盤にはライブテイクも収録するなど、ベスト盤として文句のつけようのない至れり尽くせりの内容。これ以前の作品も当然それぞれに良さはあるんですが、インディーズ時代から全くブレない彼らの核となるものは、とりあえずこの一作があれば深く濃く味わうことができます。入門としても決定版としても間違いない作品。

  

 

 語ろうと思えば全作品全曲何万文字もイケる自信はあるんですが、さすがにキリがないのでこの辺りで。

 

 

 lynch. のライブレポート(2018年のもの)

 管理人が2018年に参戦したlynch.の全国ツアー「Xlll -THE BEAUTIFUL NIGHTMARES-」のいち公演のライブレポート(過去に書いたもの)をこの機会に貼り付けておきます(宣伝)。本当に彼らは素晴らしいロックバンドだと再認識するライブで、一生忘れられない思い出になりました。長くて拙い文章ですが、よろしければご覧ください。

 

 

 終わりに

 この記事を公開した5月25日、ちょうど全国的に緊急事態宣言が解除され、少しずつ以前の日常が戻ってきていると言っていい状況にあると思います。しかし、都道府県をまたぐ移動は依然慎重さが求められたり、感染拡大を防ぐための新しい生活様式を心がける日々で、小規模な屋外イベントはともかく、ライブハウスに以前のような光景が戻るのはもう少し先の話になってしまうかも知れません。いざライブハウスでのイベント開催が解禁されるときまでライブハウスが少しでも存続していられるために、このlynch.の支援企画がその一助になったり、それに限らない色々な人たちの色々な支援や行動が、ライブハウスに限らずエンターテインメントの文化を守り続けてくれることを願っています。時期的な問題でほとんどが中止になってしまったlynch.のニューアルバムのライブツアーも、改めて開催されるといいな。

 ちょっとしたミニコーナー的な自己満足記事にするつもりが、なんだかやたら長くなってしまいました。お付き合いいただきありがとうございました。