lynch.のボーカリストによるソロアルバム(2022年)。
数年前よりバンド本隊と並行していたクラシカル編成&カバー曲中心という "葉月" 名義の活動とは別に、バンドを正式に活動休止させ本格始動した "HAZUKI" 名義での初アルバム。名義が使い分けられている通り、展開される音楽は全く別物。こちらはlynch.の延長上とも言えるバンド体制ながら、そのアレンジに制約を設けず、シンセやホーンやピアノなど多くの楽器を重用した華やかさが際立っています。lynch.ではメンバーが出す音を重視するという基本の型があり、長年の活動で一つの限界や齟齬を迎えてしまったことがソロへ向かう契機になったという前提のもと、まさにその反動が炸裂。HYDEやLiSAなどのサポートギタリストとして活躍中のPay money To my painのPABLOと協力し、制作の体制からアレンジのアイデアまで遠慮なく思うさま自由に暴れるような奔放な内容になっています。中でもアジアンテイストのダンスロックという新境地を見せたリード曲「七夕乃雷 -Shichiseki no rai-」の印象は強烈。他にもジャジー/スウィングバンド風の楽曲、ヘヴィなエレクトロコアに至るまで幅を広げている一方で、あえてlynch.では憚られるようなタイプの楽曲だけをやるというわけではなく、ミドルバラードやライブ向けの暴れ曲などほとんどlynch.のイメージと重なる楽曲も点在。そこはバンドでも全体の8割以上の楽曲を手掛けている彼ならではの味であり、その時々で自分が作りたいものや影響を受けたものを素直に打ち出すというスタンスの表れでもあるように思います。色々な意味でまさにタイトル通りだし、バンド・葉月名義のソロを含め20年以上のキャリアの上に完成した、従来のファンには全く違和感なく受け入れられ、そしてそれ以外の人にもバンドと同等以上の入りやすさと聴きやすさを備えた充実の一枚と言えるでしょう。
「葉月」名義でのアルバムの紹介記事はこちらからどうぞ。そちらにはlynch.の簡単な紹介&お勧め作品記事やライブレポートのリンクもありますので、ご興味がありましたら合わせてご覧ください。