MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

MUCC 『朽木の灯』

朽木の灯

朽木の灯

  • アーティスト:ムック
  • ユニバーサル
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 茨城出身のヴィジュアル系ロックバンドの4thアルバム(2004年)。

 

 彼らの武器が過去最高に鋭く表出し、渦を巻くように一体となって聴き手に襲いかからんとする、とことんまで重たい一枚。自虐/自嘲などを赤裸々にぶちまける歌詞の救いのなさや、感情を剥き出し激情を憚らず垂れ流す叫びにも似た歌、ひたひたと近づいては突然唸りを上げるように緩急をつけるラウドなサウンドの攻撃性、またそこから悲哀とともに引き出される叙情性…それぞれの要素が総動員で聴き手を揺さぶりにかけつつも、楽曲の聴かせ方としてはむしろここまでの経験や練成の積み重ねもあって洗練されており、意外なほどに聴きやすいというか衒いなく受け止められるものに仕上がっています。特にヘヴィな序盤の流れを抜け、インスト曲「2.07」を経た後半では、アコースティックなひら歌からバンドインしてポジティブに進むフォーキーな「溺れる魚」、またそこから曲間なしで突入するメロコア風疾走ナンバー「名も無き夢」の流れや比較的ポップに聴けるシングル2曲といった光の射す流れで畳みかけるも、最後の最後「朽木の灯」で再びどん底へ堕ちて終わる…という展開もまた強烈な引力のある幕引きで、アルバムの意味や価値を押し上げています。次作で作風を変え転機を迎えることからも、本作が彼らの初期からの歩みの集大成的な存在であり、同時にバンドの代表作として後々に渡っても挙げられることも多く、ヴィジュアル系シーンに与えた影響やインパクトも非常に大きいであろうまごうことなき傑作。この手のジャンルに覚えがあれば耳にしておいて損はないと思います。