MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Spahn Ranch 『The Coiled One』

The Coiled One

The Coiled One

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 US/カリフォルニア出身のエレクトロインダストリアルバンドの2ndアルバム(1995年)。

 

 彼らに関しては個人的に「名前は知っていたけど聴いたことがなかった」という存在で、2000年に解散して以降再結成などは特にされていないようだけど、2024年に本作の発売30周年に向けたリマスター盤がデジタルリリースされたのを機に興味を持ったという流れです。どうやら彼らの中でも評価が高そうなこのアルバム。いざ聴いてみると、一言で言い表すのはちょっと難しいかも、と思うくらいに割とあっちこっちいってます。根幹の部分にはテンポ感のあるキャッチーなEBMがありつつも、部分的にノイズギターを加速装置として使いインダストリアルロックにブーストしたり、時にはSkinny Puppyからグロさを取り除いたような粘っこいEBMを展開したり、はたまたちょっとテクノっぽい曲をやったり。もっと言えばこの手の音楽にありがちなボーカルの加工もほぼ見られずきっちり歌い上げる感じなので、シンセポップ~後のフューチャーポップへ繋がる感触すらあるという。だけど何かの要素を濫用したり振り回されたりすることもなく、特定の先人バンドの影響が色濃く残るような粗末さもない、不思議なくらいに綺麗なまとまり方をしています。かつてはEBM系だけでなくゴシックロックバンドなんかともツアーを回ったそうだけど、それも頷ける器用さ・受け皿の広さがそのまま個性として昇華できているレベル。同郷・同世代のインダストリアル/EBMバンドは幾つか思い浮かぶし、人気や知名度はその中ではやや低めかも知れないけど、作品内容では決して負けていない、いやむしろ上位争いできるまであると思っちゃいました。この次の作品も評価が高いっぽいので、そちらもそのうちチェックしようと思います。

 で、2024年リマスター盤のリマスタリングはDie KruppsのJürgen Englerが手掛けているのだとか。原盤と聴き比べなんかはしていないけど、音質やバランスに関しては全く不満のない迫力のサウンドが堪能できるし、終盤に収録された8曲ものボーナストラック(当時のレコーディングセッションから厳選されたリミックス、デモ、アウトテイクなど)も格好いい。なかなか満足度の高い、聴けて良かった一枚でした。