UK出身のインダストリアルロックバンドのEP(2006年)。
2003年に無期限の活動休止に入った彼らが、それぞれ離散し新バンドを結成するなど音楽活動を継続する中、2006年に限定的な再結成とUKツアーを発表。その際にチケット購入者に無料配布された新作EPが本作で、入手手段が限られていたものの、代表作4thアルバム『www.pitchshifter.com』の20周年を記念したツアーに合わせ、2018年にデジタルリリースされました。蓋を開けてみると、数年とはいえ活動休止を挟んだとは思えないくらいにしっかりと“Pitchshifterしてる”楽曲が聴いていて嬉しくなりますね。ノイジーで歯切れのいいギターと手数の多いリズム、変わらないカジュアルな歌に、2000年代以降のエレクトロ二ックロックに目配せしたようなやや角度を変えたデジタルなニュアンスも加えながら、総体としてはパンキッシュでポップなインダストリアルロック以外の何ものでもないという。ちゃんと進化を感じる一方で力みもなくサラっとこなしている余裕も漂わせているし、休止中にMark Claydenらが結成したメタルコアバンドのカバーである「Predisposed (To Sickness)」のPitchshifterらしからぬブレイクダウンを伴うヘヴィサウンドも素直に格好良くて、本線でもこういうのアリじゃないかと思ってしまう。リミックス含めいかにも寄せ集めでまさにEP盤ならではという感じだけど、聴けるだけでも有り難いし、個々の楽曲の完成度は期待以上で、ファンならば納得の内容──しかし更なる新曲/新作をもっと聴きたくなってしまうというジレンマも(笑)。
彼らはライブやフェス参加を目的とした短期的な再結成や、2003年に興した自主レーベル・PSI Recordsから映像作品、コンピレーション盤、記念盤など諸作品のリリースなど小さい動きが近年まで割と定期的になされているものの、2009年に予定されていたニューアルバムは白紙となり(2018年に未発表曲2曲のデモ音源が公開された)、長期的な再結成による活動の継続は困難であると公言されています。残念。
個人的には、彼らに関しては大好きなバンドだったものの、2003年の活動休止以降のリリース作品はほとんどノータッチだったのをふと思い出し、鑑賞や入手が容易になった今になって少しずつ調べたり手を出したりしている次第です。ただ、純粋な新曲が収録された作品はたぶん本作のみ…なのかな。
今回の記事に合わせ、過去に書いた彼らの作品の紹介記事の文章を少し見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。古いものについては、追記したかったことが多かったのもあってほぼ全体を書き直しています。
