MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

美少女ゲームと音楽の思い出

 90年代後半に「ビジュアルノベル」と呼ばれたパソコンゲームが注目を集めました。小説タイプのテキスト+CGイラストの演出フォーマットによる恋愛アドベンチャーゲーム。「美少女ゲーム」とも呼ばれるものです。管理人も当時その代表作である大ヒットタイトル『To Heart』をプレイしましたヨ。恥ずかしながら某キャラクターのシナリオのラストでガン泣きした記憶があります。いやぁ若かった。

 余談ですが、それまで家庭用ゲームの『ときめきメモリアル』などのシミュレーションタイプの恋愛ゲームが一般的だった中、この『To Heart』や同時期に同じくヒットした別メーカーのタイトル『ONE ~輝く季節へ~』などの成功によって、美少女ゲームが一気にシナリオ重視のアドベンチャータイプへ主流が移ったとされるくらいに、後世へ大きな影響を与えることになったと記憶しています。トップクラスの作品は成人向けから全年齢対象に作り直され、家庭用ゲーム機に移植されたりTVアニメ化されたりと一大ブームを巻き起こしました。『To Heart』のTVアニメは、丁寧な手描きの絵作りと日常の描写、全キャラクターにしっかりスポットを当てながら1クールで綺麗に終わる構成など、非常に評価も高いです。

 

 

 

 もう一つ個人的に一際記憶に残っているのが、その『To Heart』の後続タイトル『WHITE ALBUM』。カラフルで楽しげな学園生活という雰囲気だった『To Heart』に対し、こちらはシックでちょっと大人っぽい雰囲気が印象的で、タイトル通り冬の空気感が封じ込められていて。そもそも主人公が「彼女持ち」で、その彼女が「新人アイドル」で多忙のためすれ違いが起きていた、というところから始まるという時点で、既存のゲームの定番とは違うドラマ性を感じさせるものが。

 ゲームの内容も結構面白かったと記憶しているんだけど、エンディングテーマ曲の「POWDER SNOW」にゲーム以上に心を掴まれました。粉雪というタイトルに相応しい儚さと郷愁的なメロディが組み合わさった名バラード。もうほんと何度も繰り返し聴いて。どのくらい好きだったかと言うと、わざわざその楽曲が収録されている『LEAF VOCAL COLLECTION VOL.1』というコンピ盤を買うほど。その名残か、今でも冬になると毎年のように聴いています。今聴くとアレンジがいかにも90年代的という感じなんだけど、それもまたノスタルジーにプラスになっていいかなと。

 

 このコンピ盤は『To Heart』『WHITE ALBUM』を始め、この時代のLeafというメーカーのゲームのテーマ曲が複数収録されており、自分にとっては青春の一枚と呼べるほど記憶に残るものとなっています。さすがに収録曲のゲームすべてを遊んだわけではないけど、ここで初めて聴いた楽曲そのものが良かったり、一枚を通した統一感も気に入ったりで。

 

 

 

 で、もうひとつ。こちらは『To Heart』などを生み出したメーカー・Leafと並び称された美少女ゲームのトップブランド・Keyによる大ヒットした1作目『Kanon』。実は前述の『ONE ~輝く季節へ~』とはメーカーは違えどスタッフが同じで、実質的には後継作品とも言えるタイトルです。前作同様に、この手のゲームの中でも悲しみと感動のカタルシスを大きくフィーチャーしたシナリオが特徴的で、「泣きゲー」の元祖的な存在とされています。こちらも当時のPCゲームのシーンに大きな話題と影響を与えました。管理人は『To Heart』ほど繰り返し遊んではいないけど、こちらもとても印象に残っています。

 

 しかしそのオープニングテーマ曲「Last regrets」とエンディングテーマ曲「風の辿り着く場所」には、ゲームよりも衝撃を受けました。冬の空気感を演出するリリカルなピアノ、切々と歌い上げられる叙情的なメロディ、心地よい打ち込みのリズムトラック。こちらもわざわざ音楽CDを購入して何度も繰り返し聴いていました。初めて聴いた(目にした)ときは、ブラウン管のモニタに映る映像と厚ぼったいPCスピーカーから流れてくる音楽で、部屋の中が一気に冬の空気をまとっていくような錯覚にとらわれたのを思い出します。ああ、ノスタルジー

 

 

 

 そんな個人的な美少女ゲームのテーマソングブームのあと、やがて管理人はいくつかのきっかけでインダストリアル系の音楽に目覚め聴き漁っていくことになるんですが、その中で参考にさせてもらっていた音楽レビューサイトのページの中で「I've sound」という北海道札幌市に拠点を置く音楽制作プロダクションのブランドに辿り着き、彼らが手がけたPCゲームの主題歌などを収録したコンピレーションアルバム『GIRLS COMPILATION』シリーズを集めながら楽しんでいました。

 そして1stコンピ盤の『regret』を手に取ってようやく「あれ?数年前にハマっていた「Last regrets」「風の辿り着く場所」が収録されているではないか…!」と気づいたのでした。そのとき興味を持って発掘していた音楽(インダストリアル系→I've)が、実は管理人が青春時代を共にした思い出の楽曲に繋がっていたという伏線回収みたいな不思議な出来事。人生でそう何度とないレベルの衝撃がありました。

 I'veというブランドは、今でこそアニメ/ゲーム界で広く有名ですが、昔はCMや映画、トランスのオムニバスアルバムなどに楽曲を提供するところから始まり、とある縁から主題歌を手掛けた『Kanon』が大ヒットしたことでその名が徐々に広まり始めたみたいです。それでも当時はまだまだ謎めいた存在だったようだけど。というか、北海道という拠点ゆえに、あえてそうしていた(あるいはそうなるしかなかった)のか。

 インダストリアルロックやシンセポップなどをある程度通過したあとにI'veの楽曲を聴くと、その音楽的な下地や深さをより感じることができてますます楽しむことができるような気がします。管理人が影響を受けた音楽レビューサイトの真似事のようになりそうだけど、近々このブログでも紹介できたらと思っています。

 それにしても今回記事にして改めて気づいたんですが、管理人が感銘を受けたゲームとその楽曲はテーマが「冬」という共通点があるんですね。偶然か、はたまた冬っぽい雰囲気が元々好きなのか。まぁどちらのゲームも初夏発売だったんですけど(オチ)。