MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

I've × Key Collaboration Album

 アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチーム・I'veとゲームブランド・Keyの自主レーベル・Key Sounds Labelのコラボレーションアルバム(2016年)。

 

 美少女ゲーム業界の最大手・ビジュアルアーツを代表する2大サウンドレーベルの楽曲を、それぞれに所属またはゆかりのある歌手が互いにカバーし合うというコラボレーション企画によるアルバム。コミックマーケット91にて先行発売され、翌年6月に一般発売されました。界隈のファンにとってはどちらもお馴染みで信頼も厚く、ここまで多くの名曲を生み出しシーンを牽引してきただけに、それらが交わるという夢のある企画で期待十分。でもうーん、蓋を開けてみると評判はそんなによろしくない。まず選曲にパンチがないし、お互い曲を交換して再編曲している割には、軽~い感じの享楽的なEDMを軸にしたような無難なダンスアレンジが大半で刺激が薄く、リスペクトと言えばそれまでだけど、原曲の良さを生かしたいのか新しい魅力を付加したいのかどうにも中途半端で縮こまってる感じ。ボーカルは割と楽曲に合った人選をしていると思うけど、Larval Stage Planningの曲をわざわざ3人で歌って再現したりと、力を入れる部分がズレてる感も。総じて、お祭り企画なんだからもっと別物として捉え、新鮮な驚きを提供してほしかったかなと。Key側には個人的にあまり詳しくないのだけど、感動的なバラードの原曲を爽快な四つ打ちに改造した「Saya's Song」、デジタルR&Bに再編した「青空」はやっぱりその思いきりが良かったし、それぞれIKUとLily on the FIeLDが原曲を歌う実力派・Liaに負けない歌唱でキッチリと仕上げてくれてかなりハマってます。しかしそもそもこの企画自体、ぶっちゃけちょっと旬を過ぎているというか。作るのがあと5年早ければ、KOTOKOやLiSAみたいなビッグネームも参加してくれて、もっと盛り上がっていたのかも…?

 

(原曲)

Spineshank "Anger Denial Acceptance"

Anger Denial Acceptance

Anger Denial Acceptance

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 アメリカ/カリフォルニア出身のオルタナティブメタル/インダストリアルメタルバンドの4thアルバム(2012年)。

 

 2004年にボーカリストJonny Santosが脱退し、翌年新たなボーカリストを迎えるも活動は軌道に乗らず、休止状態が長らく続いていました。が、2008年に後継のボーカリストが脱退し、Silent Civilianというメタルコアバンドを結成し活動していたJonny Santosが再合流。まさかの約9年ぶりとなる新作のリリースに至りました。かつての2作目3作目がそれぞれ別方向でとても素晴らしい出来だっただけに楽しみだったし、管理人はメタルコアには全く詳しくないけど、Silent Civilianのほうも軽くチェックしていて割と良かっただけに、この新作はもしかしたら最強のインダストリアルメタルコアなアルバムが出来上がるのでは…!?なんて期待しちゃったけど、全然そんなことなかった。率直に言うと別物で、メタルコアやハードコアの鋭さを得たニューメタル/オルタナティブメタル。より迫力を増したシャウトを中心とし、凶悪なリフ、的確かつ激しく畳みかけていくリズム隊などが所狭しと暴れまくり。一方でインダストリアル要素は更に減退…というのは今さらどうでもよくて、かつての作品に感じられたキャッチーさやメロディアスさという大きな持ち味が(あえて?)無くなっているのがちと残念。メロディ(クリーン)をフィーチャーするパートも豊富ではあるけど、テンポダウンからの再加速みたいな流れも多く、その詰め込みは勢いを削いでいると感じることも。これが彼らの新しい形なんだろうし、格好良くもあるけど、以前のSpineshankが大好きなせいでどうしても比べて見てしまい、個人的な好みからやや外れてしまうという感じ。ちなみに11~13曲目は連作になっており、アグレッションとメロウがシームレスに展開していく様が痺れます。ちょっとSlipknot「Vermillion」を思い出した。という具合にお気に入りの楽曲もあったのだけど、2016年ごろにSpineshankはやり尽くしたという旨の発言もあったようで、今度こそ本当に解散状態にあるようです。うーん、残念。

 

 

 というわけで、そんなお気に入りでもある "以前のSpineshank" の紹介記事もよろしければ合わせてご覧ください。だいぶ古いのでちょっとだけ文章を見直しています。久しぶりに聴いたけどやっぱり良い…!

 

SUGIZO / REPLICANTS

REPLICANTS

REPLICANTS

  • アーティスト:SUGIZO
  • ユニバーサル ミュージック
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 LUNA SEAのギタリストによるリミックス盤/編集盤(2017年)。

 

 彼のソロデビュー20周年イヤーにリリースされたアイテムの1つで、1997年作のリミックスEP「REPLICANT ○○」3部作から楽曲を集め、未発表曲を2曲追加し、リマスターして1枚のフルアルバムにした作品。ちなみにソロ1stアルバム「TRUTH?」のリマスター盤と対になるように同日発売されました。長らく廃盤になっていたものを復刻したかったという意図もあるようだけど、完璧主義&自身の古い作品を否定しがちな彼だけに複雑な思いも捨てきれない模様(笑)。とは言え、彼のソロデビュー当時の表現が好きなファンにとっては非常に嬉しいアイテムなのは間違いないですね。元となった「TRUTH?」の、当時の先鋭的なクラブミュージック要素を更に一歩突き詰めたような形で、ドラムンベースに造詣の深い多数のアーティストによってそのアプローチが加速。原曲は割と個々の主張も強く方向性も様々だったけど、このリミックスはその面影の残り方に幅を持たせつつ、一定の方向性(ドラムンベース/アンビエント)にて、彼独自の宇宙的な世界観をよりディープに追求しています。未発表曲はドープなトリップホップに塗り替えた「ABSTRACT BEAUTY」が白眉。当時は正直リミックス盤の方はあまり注目していなかったのだけど、「TRUTH?」同様に今聴いても素直に格好いいと思うし、20年経った今改めて触れることで、新発見や再評価にも繋がるものがあるかも。それにしても、彼は「REPLICANT~」のみならず、今後の自分の作品には必ずリミックスも作っていくと当時宣言しており、それを現在に至るまでほぼ完全に有言実行しているのが凄い。

 

 

 

 書いたのがめちゃくちゃ昔でちょっと恥ずかしいんですが、合わせて宣伝したい読みたい、元となった作品「TRUTH?」の記事も貼りつけておきます。よろしければ合わせてどうぞ。

川田まみ "MAMI KAWADA BEST "F""

 I've専属ボーカリストの編集盤(2016年)。

 

 約15年間にも及ぶキャリアを網羅した3枚組ベスト盤。前アルバム「PARABLEPSIA」が一定の集大成と新たな一歩を形にした自信作だったものの、そこが到達点ということなのか、はたまた同時に自身のキャリアに逡巡を抱えてもいたせいか、2016年いっぱいで歌手活動を引退することになり、それに合わせてリリースされたもの。何と言ってもそのボリュームが凄い。彼女のボーカルデビュー曲から人気タイアップ曲からアルバム初収録含む全シングル曲まで、インディーズ/メジャー問わず代表的な曲をかき集めるようにこれでもかと結集。中には収録先が限られ、今回I've作品初収録となったような貴重曲なんかもあって実にありがたい。さらにさらに初回限定盤だと、超がつくほどの入手困難曲7曲入りのCDと、豪華ゲストを招いた引退ライブ&ドキュメンタリー&全MVを収録したBlu-rayが付属という、至れり尽くせりの超豪華仕様。ここまでやってくれると何も言うことはない…のだけど、実はメジャー作品のアルバム曲からはほとんど選出されていないので、このベスト盤を入り口に隅から隅まで堪能したような人でも、まだ掘る余地があるという(笑)。それはそれとして、本作でも彼女の歴史は十分に紐解くことができ、とりわけ「IMMORAL」~「Break a spell」あたりまでの佳曲の連発具合が圧巻。彼女の成長と、I'veサウンドとロックの融合/進化がシンクロし、アニソンシーンのトップに上り詰めていく過程がありありと刻まれています。この時期の集中力と勢いはI've随一と言っていいかも。しかしその傍ら、いわゆる"初期I've風"な透明感の深いアプローチも引退直前までずっと続けており、その2つの軸あってこその川田まみだったのだなと気づかされます。一方、レア曲CDの方は個人的に初めて聴く曲も多く、中でも「seduce」がI'veでも1、2を争う凶悪リフを刻むインダストリアルメタルで、こんな曲もあったのか!と驚嘆。入門用としては前ベスト「BIRTH」の手軽さも良いけど、彼女のコンプリートベストとしてもI'veの名曲集としても実に充実した本作は、界隈のリスナーであれば是非とも手に取る価値がありましょう。たくさんの名曲をありがとう!

 

 

 彼女の歌手引退により、I'veの黎明期~黄金期に活躍した専属歌手の全員が卒業を迎え、I'veにとっても確実に一つの時代が幕を下ろしたと言えます。そして当ブログでは、I'veの初となるコンピレーション盤「regret」に始まり、I'veやその専属歌手がリリースした膨大な作品群のうち、主たるもののほとんど(たぶん)を時系列に沿って紹介記事にしてきました。気づけばかなりの量になっていると思うけど、この川田まみの引退ベストという大きな区切りまで続けるのが個人的な一つの目標でして、今回達成することができて自己満足でいっぱいであります。長かった…。TCRさん、見てますかー。

 

Vampire Rodents "Premonition"

Premonition

Premonition

  • Rodentia Productions
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 アメリカ/アリゾナ出身のアヴァンギャルド/インダストリアルバンドの2ndアルバム(1992年)。

 

 全21曲と驚きのボリュームだけど、彼らの作品ではこれくらいがむしろ平常運転なので、前作の全17曲はまだ控えめだった(?)。それも含め前作を「持ち味開花前」と書いたけど、それでも彼らの掴みどころのない音楽性には面食らうばかりでした。そして今作ではその特性に更に磨きがかかり、いよいよ理解不能の領域。もともと30分程度の同名カセット作品を作り、それをチェリストのゲストと協力して広げ完成させたというだけに、大部分に渡ってチェロ/バイオリン、ひいてはクラシックの要素も大きく融合。しかしただ壮大感を煽るような用い方だけに留まるはずもなく、無軌道なフレーズの切り貼りで執拗に繰り返されたり突然差し込まれたりと色々カオス。彼らなりのガシャガシャとしたインダストリアル(ロック)の基調はあるんだけど、楽曲が増えてボーカルの割合が減っている分サウンドの方に耳がいくし、それもどこまでがコラージュ/サンプリングか分からない、分かることに意味があるのかすらも分からない、曲調すらも途中で変わったりもする、ついでに最後はアンビエント曲の連発で煙に巻くように終わっていく…と、何がなんだか。でも元々が独特なだけに、これこそが彼らの進化や本領なんだろうなと思わされる説得力も十分。孤独のグルメの主人公のように「けっしてキライじゃないぞ!!」としかめっ面で鑑賞したくなる…かも。特に「Dresden」は4分50秒の中でどれだけ曲がりくねるねんと言いたくなる、聴いていていい感じに頭がおかしくなりそうになる好きな1曲(オイ)。 強引に例えるならSkinny Puppy + 初期Laibachか(余計分からん)。

 

 

 彼らの作品を管理人が聴いた順(3rd→1st)でその説明も含め紹介記事にしましたが、今回この2ndでとりあえず3rdまでは埋まったので、過去記事の余分なところを省いて平たく書き直しました。「War Music」の方は感想の部分は手をつけていませんが、「Lullaby Land」の方は半分くらい書き直しています。一応リンクを貼っておきますのでよろしければ合わせてどうぞ。