MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

SUGIZO / REPLICANTS

REPLICANTS

REPLICANTS

  • アーティスト:SUGIZO
  • ユニバーサル ミュージック
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 LUNA SEAのギタリストによるリミックス盤/編集盤(2017年)。

 

 彼のソロデビュー20周年イヤーにリリースされたアイテムの1つで、1997年作のリミックスEP「REPLICANT ○○」3部作から楽曲を集め、未発表曲を2曲追加し、リマスターして1枚のフルアルバムにした作品。ちなみにソロ1stアルバム「TRUTH?」のリマスター盤と対になるように同日発売されました。長らく廃盤になっていたものを復刻したかったという意図もあるようだけど、完璧主義&自身の古い作品を否定しがちな彼だけに複雑な思いも捨てきれない模様(笑)。とは言え、彼のソロデビュー当時の表現が好きなファンにとっては非常に嬉しいアイテムなのは間違いないですね。元となった「TRUTH?」の、当時の先鋭的なクラブミュージック要素を更に一歩突き詰めたような形で、ドラムンベースに造詣の深い多数のアーティストによってそのアプローチが加速。原曲は割と個々の主張も強く方向性も様々だったけど、このリミックスはその面影の残り方に幅を持たせつつ、一定の方向性(ドラムンベース/アンビエント)にて、彼独自の宇宙的な世界観をよりディープに追求しています。未発表曲はドープなトリップホップに塗り替えた「ABSTRACT BEAUTY」が白眉。当時は正直リミックス盤の方はあまり注目していなかったのだけど、「TRUTH?」同様に今聴いても素直に格好いいと思うし、20年経った今改めて触れることで、新発見や再評価にも繋がるものがあるかも。それにしても、彼は「REPLICANT~」のみならず、今後の自分の作品には必ずリミックスも作っていくと当時宣言しており、それを現在に至るまでほぼ完全に有言実行しているのが凄い。

 

 

 

 書いたのがめちゃくちゃ昔でちょっと恥ずかしいんですが、合わせて宣伝したい読みたい、元となった作品「TRUTH?」の記事も貼りつけておきます。よろしければ合わせてどうぞ。

川田まみ "MAMI KAWADA BEST "F""

 I've専属ボーカリストの編集盤(2016年)。

 

 約15年間にも及ぶキャリアを網羅した3枚組ベスト盤。前アルバム「PARABLEPSIA」が一定の集大成と新たな一歩を形にした自信作だったものの、そこが到達点ということなのか、はたまた同時に自身のキャリアに逡巡を抱えてもいたせいか、2016年いっぱいで歌手活動を引退することになり、それに合わせてリリースされたもの。何と言ってもそのボリュームが凄い。彼女のボーカルデビュー曲から人気タイアップ曲からアルバム初収録含む全シングル曲まで、インディーズ/メジャー問わず代表的な曲をかき集めるようにこれでもかと結集。中には収録先が限られ、今回I've作品初収録となったような貴重曲なんかもあって実にありがたい。さらにさらに初回限定盤だと、超がつくほどの入手困難曲7曲入りのCDと、豪華ゲストを招いた引退ライブ&ドキュメンタリー&全MVを収録したBlu-rayが付属という、至れり尽くせりの超豪華仕様。ここまでやってくれると何も言うことはない…のだけど、実はメジャー作品のアルバム曲からはほとんど選出されていないので、このベスト盤を入り口に隅から隅まで堪能したような人でも、まだ掘る余地があるという(笑)。それはそれとして、本作でも彼女の歴史は十分に紐解くことができ、とりわけ「IMMORAL」~「Break a spell」あたりまでの佳曲の連発具合が圧巻。彼女の成長と、I'veサウンドとロックの融合/進化がシンクロし、アニソンシーンのトップに上り詰めていく過程がありありと刻まれています。この時期の集中力と勢いはI've随一と言っていいかも。しかしその傍ら、いわゆる"初期I've風"な透明感の深いアプローチも引退直前までずっと続けており、その2つの軸あってこその川田まみだったのだなと気づかされます。一方、レア曲CDの方は個人的に初めて聴く曲も多く、中でも「seduce」がI'veでも1、2を争う凶悪リフを刻むインダストリアルメタルで、こんな曲もあったのか!と驚嘆。入門用としては前ベスト「BIRTH」の手軽さも良いけど、彼女のコンプリートベストとしてもI'veの名曲集としても実に充実した本作は、界隈のリスナーであれば是非とも手に取る価値がありましょう。たくさんの名曲をありがとう!

 

 

 彼女の歌手引退により、I'veの黎明期~黄金期に活躍した専属歌手の全員が卒業を迎え、I'veにとっても確実に一つの時代が幕を下ろしたと言えます。そして当ブログでは、I'veの初となるコンピレーション盤「regret」に始まり、I'veやその専属歌手がリリースした膨大な作品群のうち、主たるもののほとんど(たぶん)を時系列に沿って紹介記事にしてきました。気づけばかなりの量になっていると思うけど、この川田まみの引退ベストという大きな区切りまで続けるのが個人的な一つの目標でして、今回達成することができて自己満足でいっぱいであります。長かった…。TCRさん、見てますかー。

 

Vampire Rodents "Premonition"

Premonition

Premonition

  • Rodentia Productions
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 アメリカ/アリゾナ出身のアヴァンギャルド/インダストリアルバンドの2ndアルバム(1992年)。

 

 全21曲と驚きのボリュームだけど、彼らの作品ではこれくらいがむしろ平常運転なので、前作の全17曲はまだ控えめだった(?)。それも含め前作を「持ち味開花前」と書いたけど、それでも彼らの掴みどころのない音楽性には面食らうばかりでした。そして今作ではその特性に更に磨きがかかり、いよいよ理解不能の領域。もともと30分程度の同名カセット作品を作り、それをチェリストのゲストと協力して広げ完成させたというだけに、大部分に渡ってチェロ/バイオリン、ひいてはクラシックの要素も大きく融合。しかしただ壮大感を煽るような用い方だけに留まるはずもなく、無軌道なフレーズの切り貼りで執拗に繰り返されたり突然差し込まれたりと色々カオス。彼らなりのガシャガシャとしたインダストリアル(ロック)の基調はあるんだけど、楽曲が増えてボーカルの割合が減っている分サウンドの方に耳がいくし、それもどこまでがコラージュ/サンプリングか分からない、分かることに意味があるのかすらも分からない、曲調すらも途中で変わったりもする、ついでに最後はアンビエント曲の連発で煙に巻くように終わっていく…と、何がなんだか。でも元々が独特なだけに、これこそが彼らの進化や本領なんだろうなと思わされる説得力も十分。孤独のグルメの主人公のように「けっしてキライじゃないぞ!!」としかめっ面で鑑賞したくなる…かも。特に「Dresden」は4分50秒の中でどれだけ曲がりくねるねんと言いたくなる、聴いていていい感じに頭がおかしくなりそうになる好きな1曲(オイ)。 強引に例えるならSkinny Puppy + 初期Laibachか(余計分からん)。

 

 

 彼らの作品を管理人が聴いた順(3rd→1st)でその説明も含め紹介記事にしましたが、今回この2ndでとりあえず3rdまでは埋まったので、過去記事の余分なところを省いて平たく書き直しました。「War Music」の方は感想の部分は手をつけていませんが、「Lullaby Land」の方は半分くらい書き直しています。一応リンクを貼っておきますのでよろしければ合わせてどうぞ。

 

MUCC "志恩"

志恩

志恩

  • アーティスト:ムック
  • ユニバーサル
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 4人組ヴィジュアル系ロックバンドの8thアルバム(2008年)。

 

 初のベスト盤を挟んでのリリース。そのせいかは分からないけど、また一つ新たなアプローチへ切り込んだ作品。その軸となるものは "ダンスビート" と "民族音楽" の2つで、前者はまさに本作の試金石になったであろう1つ前のシングル「ファズ」や弦の音色が颯爽とした「空忘れ」、後者で言うならメタルと融合した「塗り潰すなら臙脂」やパーカッションが乱打される大曲「志恩」。またその2要素が合体したような「アンジャベル」に至っては、歌謡曲どころか古典音楽にまで行っちゃったようなメロディとリズミックさの融合が何ともクセになる不思議な存在感の一曲。かように、これらの楽曲の存在がアルバムを特徴づけ、雰囲気づくりに大きく貢献しています。アニメのOPとかにでもありそうなくらいキャッチーな「フライト」や、オーケストラを導入した悲痛のバラード「小窓」なんかもあったりして、全部が全部ではないけど、幅広かった前作「極彩」とは対照的に一つの色でまとめられたような統一感もあり(唯一大きく浮いてる「フライト」は休憩ポイント?)。この辺りは、彼らの器用さや重ねてきたキャリアの賜物でしょう。ひと口にダンス/エレクトロニックと言ってもバンドの有り様がまるっきり変わってしまったわけではないけど、これまでのアナログな手法やヘヴィネス重視のサウンドと比べると大きな一手だし、その要素はここからも続いていくので、一つの転換点・起点とも言えそう。彼らを初めて聴くような人にもある程度入りやすそうな良作。

 

 

 突然のMUCCのアルバム紹介でしたが、当ブログが現在のはてなブログに移行する前に、基本的に古いものから何作か紹介記事を書いていました。移行の際にミスか何かで非公開になっており、それに後から気づくも「インダストリアル要素が特別あるわけでもない完全趣味のバンドの記事だし、このままでいいかな…」と放置していたんですが、ネタに困ってきたのでここに復活させてみることにしました。まぁギルガメッシュやディスパも扱ったし、いいか!くらいの気分で。過去に書いて現在非公開になっている記事は、目を通し文章を少し整理しての公開をするつもりですが、そこそこ数があるので少しずつ手をつけていきます。ということで、よろしければまずはこちらの2作を合わせてどうぞ。

 

Ray "Little Trip"

Little Trip(初回限定盤 CD+Blu-ray)

Little Trip(初回限定盤 CD+Blu-ray)

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 アニソンシンガーの3rdアルバム(2016年)。

 

 あーれいたそかわいい。というわけで、そんなれいたその2年ぶり3作目でございます。まずは何と言ってもデビュー曲と同作品向けの2年半ぶり新タイアップにて、同じく再び「折戸伸治 × 高瀬一矢」タッグで制作された「季節のシャッター」が、期待通り郷愁感溢れる名曲度の高い逸品でした。そしてそれを中心とし、前半は主に元気いっぱいのハイテンポな曲、後半はI'veの高瀬一矢による2曲も含む正統派の楽曲が並ぶ流れ(厳密にではなくざっくりとだけど)。特に前半は合いの手の入ったジャズサンバ?というのかそれっぽい「初めてガールズ!」や、ビッグバンドにエレキに木琴の音までが乱舞する、おもちゃ箱を引っくり返したような高速ガールポップ「Wonder Little Trip」と、勢いのついた佳曲の連発が爽快。過去作にも1つは電波ソングに通じるような遊び心のある曲はあったけど、今回はその色が掴みで強めに出ていて、また新しい感覚。とはいえ、全体的には音楽的に挑戦の幅を広げているというよりも、得意とする範囲やイメージに沿うものの中から丁寧に選択し提示してきたような安定感のある仕上がり。作品全体を「旅」に見立てるという(歌詞の)コンセプトや、楽曲を手掛けた作家が過去最高の10名ほどになっているというポイントは、そこまで重視するものではないかも。でも不満は全くないんです。最初にも言った通りかわいいから。いや真面目な話、アーティスト活動が5年目に入っても、これまで通り楽しくかわいく突っ走るという意気込みを体現してくれたのは素晴らしいことです。彼女が初めて単独で作詞した「星」に込められた思いも合わせて受け止めると更に感動することひとしおですよ。こんなレビューでいいのか。