MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Vex Red / Give Me The Dark

 イングランド出身のオルタナティブロック/インダストリアルロックバンドの1st EP盤。(2019年)。

 

 Ross Robinsonのプロデュースのもとでアルバムを1枚リリースするも、それっきりで2003年に解散してしまった彼らが2015年に再結成、アルバムとしては約17年ぶりとなった復帰作。たった一作ながらも結構気になる作品だったのでこの復活は嬉しいものがありました。内容については、年月を経た分だけ成長というか円熟を感じさせる仕上がりで、どこか陰鬱な空気感や不安定な感情の乗せ方がサウンドの説得力と強く結びついていた一作目とは異なり、迷いが晴れたかのようなポジティブな輝きと、大きなスケールを感じさせるアンサンブルが印象的。歌を真っ直ぐ届けるためのロック、というか。前作にまだ比較的近いような楽曲であっても、荒々しさを抑えた音の重ね方やピアノ/電子音をアクセントとしてではなくしっかりと同化することで形作られたサウンドを聴かせます。7分超のラスト曲「Lake」に至っては、ピアノとシンセと消え入りそうな歌声の融合で非常に繊細な聴き心地をもたらす、もはやプログレッシブやポストロックに踏み込んだかのような新境地。しかし実際にそちら方面の人脈の助力も(多分)あったようで、実に堂に入った出来。それでも大きく様変わりしたような感覚を覚えないのは、アウトプットに多少の変化はあれど、彼らの核となるものが受け継がれているからではないかと。一作目とどちらが良いかは好みによるだろうけど、確実に今後の展開が楽しみになる、そんな一枚。

 

 

 今回の記事に合わせ、過去に書いた彼らの1stアルバムの紹介記事の文章を少々見直しているので、よろしければ合わせてご覧下さい。