カナダ出身、Front Line Assemblyのメンバーを中心としたエレクトロニカ/アンビエントプロジェクトの10thアルバム(2001年)。
プロジェクト発足以来ずっと関わっていたもう一人のプロデューサー・Rhys Fulberが(一時的に)離脱し、そこに同時期にBill Reebと本隊の方での活動を共にしたChris Petersonが合流し制作にあたった作品。音楽性と表現において早くも一つの到達点に達したとも言える前作の延長を目指したような佇まいで──と言っても更に同じ方向を究める…というよりも、歌モノの楽曲の強化を優先しながら、より親しみやすく聴きやすいものを目指したような印象。明らかに女性ボーカルメインの楽曲の比率や存在感が強まり、それも口ずさめるような歌メロと、それを生かすことを前提にした分かりやすく耳を引くアレンジの合わせ技で、聴く者の心を貪欲に掴みにかかります。前年に、前作収録の「Silence」(のリミックス)が世界各地で注目を集め賞を受賞するなどの成功があり、その影響があったのかそれとも既定路線だったのかは定かではないけれど、新しい層の開拓としては確かにこちらに軍配が上がるかも。キャッチーさを増したと言っても一切安っぽくなっておらず、アコギの滑らかなフレーズや躍動的なアップビートなどが増えても全体の透明感や民族音楽調の幻想性は据え置きだし、「Innocente」を歌うLeigh Nashの素朴な歌声や、「Fallen Icons」の儚さ爆発(何だそれ)メロディなどは実に素晴らしいフック。次作はよりポップスに接近するので今となっては橋渡し的なアルバムなれど、決して捨て置けない傑作。