MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Nine Inch Nails / The Fragile

The Fragile

The Fragile

 

 US出身のTrent Reznorを中心としたインダストリアルロックバンドの3rdアルバム。

 

 歴史的な成功を収めた前作から、約5年以上のブランクを経てリリースされた本作は、単純にその長い空白期間の反動というわけではないだろうけど、2枚組全23曲の大作となっています。数多くのインスト曲も、アルバムの繋ぎや断片ではなくしっかりと主役を張れる存在感を醸しつつ、ただの楽曲の並び以上に意味を持つであろうアルバム全体の大きな流れを丁寧に描画。楽曲のフレーズやメロディといった根幹の要素はもちろん、いくつかの山場となり得るポイントへの誘導や演出まで含めて緻密に作り上げられており、徹底して暗く薄弱で沈みこむような精神世界をプログレッシブに描いていきます。サウンドはノイジーで機械的な部分もあるけど、そういったものを通過して応用しているようでもあり、基本的にはピアノや生楽器の質感が先行。インダストリアルロックの範囲には収まり切れない複雑な世界観で、その長大なボリュームも含めて聴き手を選ぶだろうけど、その完成度は偉大なる前作に勝るとも劣らないでしょう。「Left」と題されたDisc1は特に顕著な作りで、そこに比較するとDisc2の「Right」は制約も薄く実験的。それでもアルバム随一のへヴィネスとスピードを持つ「Starfuckers,Inc.」は浮きに浮いているけど、単体で捉えれば間違いなく彼らを代表する破壊力を持つインダストリアルロックの名曲。聴いておきたいですね。