Front Line Assemblyのメンバーを中心としたレクトロニカ/アンビエントプロジェクトの9thアルバム（1997年）。
大きく方向転換した前作にて確立した音楽性を更に前進させ、圧倒的な完成度をもって結実した彼らの代表作。早くもそんな作品を送り出すことに成功したのは驚くべきところです。前作よりややテンポを落とした余裕を感じさせるダンス/ワールドビート、専用に録音されたという嫋やかな聖歌コーラスの駆使、存在感を際立たせる民族楽器といったエレメントによって重厚かつ丁寧に紡がれる一級品のエレクトロサウンドと、前作より引き続き参加のKristy Thirskを始めとした複数名の女性ボーカリストの歌声によって、圧巻とも言える荘厳な音世界を構築。特に歌を最前面に聴かせる楽曲の完成度は他に類を見ないほどで、中でもカナダの著名シンガーソングライター・Sarah McLachlanが制作/歌で参加した「Silence」は、後にトランスリミックスされた楽曲がクラブシーンでヒットし、世界の至るところでDeleriumの知名度を押し上げた楽曲としても広く知られているとのこと。ここに収録されているのは原曲ですが、確かに飛び抜けた存在感を誇ります。全体的にはやはり一曲一曲がやや長めなことや、前作をより深掘りしたような凄みの効いた雰囲気は、作品の価値と裏腹に近寄りがたい高尚さすらをも感じる部分も正直あるのだけど（贅沢な言い分）、決してインダストリアル/EBMで活躍する人たちの余技と侮れない芸術的な域まで昇華されたクオリティは一聴の価値ありかと。
