MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

I've / I've MANIA tracks NEW WAVE

 アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによるミニアルバム。

 

 コミックマーケット87限定販売。3部作で完結済みのレア曲集「I've MANIA tracks」のタイトルを引き継いだ作品。ただコンセプトは全く異なり、今回が初お目見えとなる新規ボーカリスト3名をフィーチャーした小品のようです。ここ数年でI'veに大きく貢献した専属歌手の離脱が結構続いちゃったので、文字通り「新しい波」を起こすべく新人発掘をピックアップしたのでしょう。まずは初期の名曲「One small day」のカバーを披露した北村みのり。溌剌とした曲風に相性抜群の屈託のない歌声が心地よいです。翌年北海道で活動する別のバンドに(ベーシストで)加入したせいか、I'veに参加したのはほぼこの時期だけになってしまった。続いては一切の情報が非公開の謎に包まれたmarriage blue。凛とした歌声はロック調の楽曲に似合いそう。I'veでの稼働率は低め。そしてラストのRINA。この人だけなんか明らかに楽曲に力入ってないか?と思うのだけど(笑)、一聴して実力派だと分かる存在感が素晴らしく、この後すぐにI'veの主力になっていったのも納得。特に「Prism」は、解放感と力強さが同居する結構な良曲だけど、もう1つの曲「DUpliciTY」と合わせて後の彼女のソロアルバムに収録されたので、今となっては(元から?)本作はコレクターアイテムかな。なお余談ですが、このジャケットは、数あるI've作品の中でも1~2を争うくらいにお気に入りです。こういうの好き。

 

(原曲)

Vampire Rodents "War Music"

War Music

War Music

  • Rodentia Productions
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 アメリカ/アリゾナ出身のアヴァンギャルド/インダストリアルバンドの1stアルバム(1990年)。

 

 今も詳しくは知らないし、何きっかけで知ったかも忘れた、自分の中でかなり謎なアーティスト。ボーカル&作曲&マルチプレイヤーのDaniel Vahnkeとキーボード&ボーカルのVictor Wulfの2人を中心とし、作品ごとに助っ人が数名参加する方式のようです。んでこの1st、後の作品との比較になっちゃうけど、彼らの特性というか得体の知れない持ち味はまだ開花一歩手前という感じ。いや、これでも十分ヘンではあるんですけども。やってることは無骨で乱雑なモノクロEBMという感じで、ギター、ベース、サンプリング、バイオリン?チェロ?などが絡み合いつつ淡々とした不気味さが蔓延。音階を無視しながら台詞や叫びを垂れ流しているようなボーカルもあいまって、どことなくSkinny Puppyにも似ています(実際そういう評価もあった模様)。雰囲気的には嫌いではないけど、焦点がよく分からないというか、やや聴き所に欠けているなと。とか思っていたら、後半には雰囲気をガラッと変えたド正面のニューウェイブ/エレポップ、童謡のような歌い出しからファンクへ繋がる曲などもあって目が点。そもそもアーティストの方向性やこの作品には、西洋文化や中国の政治の批判などを、ダークユーモア的な歌詞(ロシア語や中国語含む)で高らかに歌い、インダストリアルロックやコラージュ音楽をその手法として確信的に用いたという背景があるようです。その辺りを含めて「何らかの種明かし」だとすると、そこを理解できる人だけが楽しめる性質を持つのかも。だとすると難しすぎる…

 

BLAM HONEY / Providence of Decadence

  "インダストリアルジェンダーユニット" を自称する2人組ヴィジュアル系インダストリアルユニットの企画盤。

  

 前作リリース後に長らく活動休止状態にあった彼ら。2008年には「活動再開」と「ボーカリスト・Tatsuyaが2004年に病気で逝去していた事実」が併せて発表されました。今作は、そんなTatsuyaへの追悼盤という形で制作された2CD+1DVDの3枚組作品。Disc-1は未発表曲集ということだけど、未発表曲と言っても次なる音源の制作過程にでもあったのか、順当にこなれているものが並びます。昔からダークエレクトロとインダストリアルロックの折衷みたいな方向性ではあったけど、ボーカルの打ち出し方やノイズの絡め方なんかに甘さの見られた部分が経年ごとになくなっていき、今回はエレクトロビートの強化やノイズギターの程よい存在感等上手いこと調整されており、かつ良くも悪くも強烈な個性もそこまでトレードオフにならず、時折挟まれるインスト曲の見せ方も追いついた感じで、トータルで一つの水準を超えてきたという感じ。Disc-2はゴス/インダストリアル界隈のアーティストが多数参加したカバー&リミックス集。唯一のお目当てのharshrealm以外はぶっちゃけ全然知らん人たちばかりなのですが、これが思いの外良かったというか、原曲の雰囲気を壊さず、でも曲としては割と大胆にリアレンジという良い塩梅のトラックのオンパレード。ハーシュEBM、インダストリアルテクノ、トランスなど個性的で楽しめました。Tatsuyaだけでなく、もう一人のメンバー・Ryonaiも大病を患った時期があったり、この後に新ボーカリストを迎えるもすぐ脱退、以降現在に至るまで沈黙と何かと波乱続きのユニットだったようだけど、もっと思い通りの活動ができていれば、日本のゴス/インダストリアルシーンにもっと大きな爪痕を残せていたのかもと思います。

 

I've "master groove circle "NIJIIRO""

master groove circle "NIJIIRO"

master groove circle "NIJIIRO"

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 アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによるリミックスアルバム(2014年)。

 

 I'veの設立15周年を記念しリリースされたリミックス盤シリーズの第三弾。今回は過去2作のように外部アーティストによるものではなく、I've作家陣(元Larval Stage PlanningのNAMIも本作にて作家デビュー)によるセルフリミックス。単純に「3」ではないのはそこらの区別なのかも?タイトルだけでなく作品の色も全然違うというか、過去2作は原曲をあくまで素材と捉え、サイケデリックトランスからテクノポップまで思うさまディープに楽曲をいじり倒しまくっていたのに対し、こちらはボーカル主体で原曲の持つポップさやフックを可能な限り生かすようなトランス/EDM風アレンジが多め。セルフカバー的というか。1曲が長すぎてCD1枚に収まり切れないということもなく(笑)、4~6分程度の全12曲という収まり方。なので聴きやすさとか外へのアピール力なら圧倒的にこちらではあるけど、どうせリミックスするなら原曲の面影なんて関係ないとする向きもあるだろうし、そこは好み、でしょうか。黒崎真音・RayといったI've外の歌手への提供曲のリミックスも注目点だけど、それ以上に大きいのが何と言っても「FUCK ME -Trance Gate Mix-」。このI'veの原点とも言える最古・最重要曲を最先端の音でブラッシュアップし、実力派の新人・柚子乃が歌うことで、原曲のスリリングな魅力をそのままパワーアップさせたような超強力な名曲に再生しています。ファンなら押さえたい1曲。ちなみにDisc-2はD-YAMAというDJによる「I've NON STOP MIX」。文字通り、I'veの過去の楽曲がメドレーのようにノンストップで流れる1トラック56分(!)。インディーからメジャーまで、代表曲からレア曲まで幅広く聴けます。作業用BGMとかに良さそう(棒読み)。

 

Jakalope / Born 4

Born 4

Born 4

  • アーティスト:Jakalope
  • 出版社/メーカー: Orange Music Canada
  • 発売日: 2006/06/06
  • メディア: CD
 

 インダストリアル界の大物プロデューサー・Dave Ogilvieとボーカリスト・Katie Bを中心としたインディーポップ/インダストリアルロックプロジェクトの2ndアルバム。

 

 鮮烈なデビューを飾った前作に続き多くの著名ミュージシャンが関わり、Nine Inch NailsのTrent Reznorも前作同様に共同プロデューサーに名を連ね、期待が募る2年ぶり2作目。今回は前作と逆で日本盤が先行リリースされたため、日本盤に限っては約1年という短いスパンでの発売になったみたいです。手応えがあったのかな?そんな本作、まず再生すると聴こえてくるのがマーチングドラムに乗せられたゴツめのリズムギター。なんだかバックだけとればマイルドにしたMarilyn Mansonのよう。この曲に限らず、全体的な方向性としてバンドサウンドを前面に置いてきたのは明らかで、中盤あたりまでは割とどの曲もドラムが弾け、ベースがブンブン唸り、ギターもラフに掻き鳴らされている感じで軽快に進むし、終盤にかけてはアコースティックな曲も増えていきます。先行シングル「Upside Down」はもうなんか正しく古き良きパワーポップって感じで、間奏ではギターソロまで飛び出し、ラスサビ前ではKatie Bが「イチ、ニィ、サン、シ!」と日本語でカウントするというおまけ付き。可愛い。前作との違いが最も感じられる曲かも。ただ、エレクトロニックな要素が完全に消えたわけではないんだけど、前作のインダストリアル/ゴス/トリップホップを下地にマニアックさを残しつつ極上のポップスに仕立て上げたような独自性は薄れてしまったのは確か。それでも女性ボーカルのインダストリアル系グループとしては依然面白い位置にあるので、ここから先も注目するつもりでした。が、本作を最後にKatie Bが脱退し、結局このスタイルはここで見納めになってしまいました。残念。