MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

BUCK-TICK / 夢見る宇宙

夢見る宇宙

夢見る宇宙

 

 5人組ロックバンドの18thアルバム。

 

 メジャーデビュー25周年イヤーに発足された自主レーベル・Lingua Soundaより発売された最初のアルバム。曲数の多い傾向にあった近々のアルバムに比べると全11曲とコンパクトな上に、先行シングル2枚からAB面の4曲を(別アレンジで)収録ということもあり一見ボリュームは控えめに映るけど、作品が醸し出すスケールは決して見劣りすることなく、期待を裏切らない一作に仕上がっています。中盤辺りまでは直球ポップな曲、ロックンロールに振り切った曲、ライブで活躍しそうなクラップ全開の曲など比較的明るく突っ走っており、同時に作品のイメージも牽引。ファンには古くから馴染みのあるフレーズを楽曲名に冠した「CLIMAX TOGETHER」、アルバム収録に際して賑やかなブラスロックに変貌した「ONLY YOU -WE ARE NOT ALONE-」等は特に印象も強烈。また、猛禽(raptor)の生態と(同名の)戦闘機の存在意義をダブルミーニング的に紐づけた「INTER RAPTOR」は、そのサウンドのみならず発せられるメッセージも攻撃的。そしてこの曲に限らず、一歩踏み込んだ死生観を匂わせる歌詞が多い部分には3.11の影響も見え隠れするし、幻想的なジャケットや空間/余韻を強調するような音作りもあって、ただポップなだけでない、シンプルなフレーズを丁寧に紡ぎながらも捻りのある世界を構築しているのは正にB-Tならでは。そしてノイズと浮遊感を増したアレンジが光るラストの「夢見る宇宙 -cosmix-」にて、包み込むような展開から最後に飛散していく流れが感涙もの!重厚なサウンドや世界観のアルバムでは決してないし、そういうものを期待する人には不満も残るかも知れないけど、個人的にはかなりお気に入り。

 

KOTOKO / 空中パズル

空中パズル(通常盤)

空中パズル(通常盤)

 

 I've出身ボーカリスト/シンガーソングライターの6thアルバム。

 

 独立/移籍後のアルバムとしては2年ぶり2作目になり、全曲書き下ろしかそうでないかの違いはあれど、I've内外の作家から提供を受けた楽曲群に自作曲を添えた自己プロデュース盤という構造は共通。多数の作家が参加した前作からは齋藤真也とDECO*27が続投し、特に齋藤真也はリード曲を含め数曲の作編曲を担当。そして彼と関係も深いfripSide八木沼悟志による楽曲も3曲収録。この2人のカラーが作品のイメージに大きく貢献しており、新風を吹き込むと共にクオリティもグッと底上げしています。特にロック系の楽曲は、これまでのKOTOKOに多かった"I'veサウンドとロックの摺り寄せ"ではない明快なアプローチに徹したものが多く、「Light My Fire」(これはsupercellのryo作だけど)を始め、ライブでの盛り上げを見据えたようなパワフルさが爽快。一方、八木沼悟志の楽曲はそれだけで一枚通すとちょっとクドいけど(えっ)、これくらいの曲数だと丁度いいし、ラストを「→unfinished→」で飾るのは流れとしても意味としても最高。そして高瀬一矢によるこれぞI've!と唸る楽曲も負けじと冴えを見せています。全体としてはバラードどころかミドルナンバーすらも僅かに留まり、アップテンポな楽曲がほとんどながら、バランスに気を配られていて飽きないし楽しい。KOTOKOのメジャーでの活動は、シンガーソングライターとしてのエゴを出したり、逆にI'veに特化したりといった面を見せてきたけど、もしかしたら本作こそが彼女の魅力が最もニュートラルに伝わるかも。メジャーデビュー10周年目前の6作目、というキャリアながら、ここに来て最高傑作と言えるくらいの内容。何かと中途半端だった前作から一転、一気に突き抜けまくった快作!

  

Wiseblood / Dirtdish

Dirtdish

Dirtdish

 

 FoetusことJG Thirlwell(本作ではClint Ruin名義)とSwansの元ドラマー・Roli Mosimannによるインダストリアル/ノイズロックユニットのアルバム(1987年)。

 

 Foetusが活動の拠点をロンドンからニューヨークに移した際に結成されたユニットの唯一のアルバムで、セッションプレイヤーとして活躍していたRobert QuineやSwansのNorman Westbergの両ギタリスト等も参加。何とも通好みのしそうなコラボだし、個人的にSwansは初期の方しか知らなくて、とてつもなく遅くて重い怨嗟の音楽というイメージがあったけど、本作に関してはそこまでマニアックなわけでもなく、小粋なギターやシンプルながらも存在感を放つジャンクなドラムで小気味よくロックンロールしてます。これ以前のFoetusの音楽よりも噛み砕かれフィジカルが強調されたような感覚があり、素直に入り込みやすい。そしてFoetusの型破りで奔放なボーカルは流石としか言いようがなく、一時も耳を離させないばかりの歌と咆哮。特に「Someone Drowned In My Pool」は彼の独壇場。前半はジャジーなムードに浸りきり、終盤で一気に音が増え怒涛の展開の中で同一のフレーズを叫びながら混沌としていく流れは鳥肌もの。また「0-0 (Where Evil Dwells)」は個人的にFear Factoryの強烈なカバーを先に聴いていたので、原曲の(これはちょっとSwansっぽい)抜き身のような迫力を確認できて満足(凄い曲!)。インダストリアル(ロック)に限らず、様々な影響を与えたレジェンドの共演とNYアングラシーンの熱量を記録した稀有な作品。ちなみに1995年の再発盤にはシングル盤の音源も収録。ミニマルビートが心地よい「Motorslug」は大好きな一曲。んで、あちこちで名曲とかFoetusのお気に入りとか言われていた「Death Rape 2000」の方は…これは… 

 

D'espairsRay / MONSTERS

MONSTERS

MONSTERS

 

 4人組ヴィジュアル系ロックバンドの4thアルバム。

 

 メジャー作としては2作目であり、彼らの最終作。ここまでアルバムリリースごとにより聴きやすくなっていった流れはあったけど、さすがにそれは前作がピークになり、本作は若干ではあるものの以前のハード/ダークさを取り戻そうとする楽曲も一部見られます。ただそれもアルバムを特徴づけるものではなく、全体的には程よくヘヴィで程よくキャッチーなヴィジュアルロック。傾向として、過去作では初期にゴスっぽい雰囲気を醸したり、前作でキラキラ感を出すのに応用していたシンセの主張が本作ではほぼなくなり、シンプルなサウンドに回帰しながら所々でエレクトロニック要素をさりげなくかつスタイリッシュに組み込む感じに。ただ、それをグッと生かした曲はアルバム前にリリースされたシングル「LOVE IS DEAD」くらいしかなく、これはメロディアスで格好良い大胆なダンスロックっぷりが新しさも感じてかなり好きだったけど、アルバム曲でそれを上回る曲が見当たらず、全体的にはポップにもマニアックにも振り切れずに、特に山場もないままツルッと聴き終えてしまうので物足りなさが拭えない。決して悪い作品ではないけれど、1st~2ndが良すぎてどうしても霞んでしまうというのが正直なところ。彼らにはまだまだ今後を期待していたのだけど、この後ボーカリスト・HIZUMIの喉の不調で活動を休止し、結局復帰しないまま半年後に解散。とても残念だったけど、この解散がなければギタリスト・Karyuが次なるバンドとして加入し5人体制になったAngeloもなかったわけで、両バンドのファンの管理人としてはちょっと複雑な思いなのでした。 

 

Larval Stage Planning / LSP

LSP

LSP

 

 I've専属ボーカルユニットの1stアルバム。

 

 既に単独でI'veデビューしていた桐島愛里に、朝見凛と舞崎なみの2人の新人を加えた3名で結成。電波ソング集での直球バラードという謎デビューを果たした後、PCゲーム(インディーズ)→TVアニメ(メジャー)と順調にタイアップシングルをリリースし、初のアルバムが完成。歌や踊りだけでなく、自分たちのライブステージの実作業を伴う制作活動をも行うらしく、そのDIY精神がユニット名やジャケットのツナギ姿に表れているとのこと。狙いがよく分からん。内容はA面B面関係なく本作以前に発表したほぼ全曲を網羅した総決算的なものだけど、ユニットのコンセプト同様に色々詰め込み過ぎて渋滞している感じ。各歌手は単独名義での楽曲を聴く分には割とキャラ立ちしていたけど、本作では提示された楽曲のカラーに沿って忠実に歌うので、1曲ずつ見てもコーラスワークが多少凝っているくらいしか特徴を感じないし、誰が表に浮き出ようと歌い手像が1つに集約しているので、合う曲合わない曲がハッキリと二分。例えばクールなトランス~ハードロッキンなギターが活躍する打ち込みポップ/ロック──いわゆる「ポスト川田まみ」的な──は文句なしだけど、甘めのテクノポップ電波ソングには対応しきれてなさが伝わってきて今一つ。一言で言うと「燃え」は良いけど「萌え」がダメ。そして全体がごちゃっとしてしまい、3人で組む意味が迷子状態。ユニットの形態や方針が実験的であっても、この時点でアルバムを形にするなら明確な強みへもっと的を絞った方が良かったと思います。とはいえ素材は決して悪くないし、I'veの次世代を担う存在として方々からの期待もあったのだけど、発売後しばらくで朝見凛・舞崎なみがI'veを卒業し桐島愛里のソロユニット化。そしてシングル1枚で長らく沈黙を続け、つい先日(2019年7月)I'veとの契約が終了。3人時代はおろかユニットでも最初で最後のアルバムになってしまったとさ。