MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

BAAL / RELIGION 616

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 2人組(当時)インダストリアル/エレクトロニックバンドのミニアルバム(2008年)。

 

 彼らについてあまり詳しくはないんですが、AUTO-MODが主宰するイベント・TOKYO DARK CASTLE等のゴス界隈で活躍しているグループのようです。やはりと言うかなかなか厳つい出で立ちで、サウンドの方もそんな風貌を裏切らないというか、かなりハードかつダーク。ゴリゴリのヘヴィギターやノイジーな打ち込み/ギミックをふんだんに使用した重低音は濁流のようだし、そこに被さる警報音のような恐怖感にまみれたシンセ/エレクトロニックの旋律やユニゾンインパクト抜群。まるでインダストリアルメタルやテラーEBMを融合させ、フィルターを介さず放出しているかのよう。短いフレーズのループ、激しく吠えるボーカル(実は女性)と高速でアグレッシブに駆け抜けていく様は爽快。ワンパターン気味ではあるけど、5曲17分前後でサクッと終わるし、スタイルのブレの無さの表れでもあるのでそう気にならない。ゴス色が濃いグループは個人的にはあまり好きではないのだけど、この作品には惹き込まれるものがありました(普通には売られていないようだけど)。この後、彼らはSkinny PuppyのcEvin Keyに見い出され、Skinny Puppyの米ツアーの前座を務めたり、USのインダストリアル系レーベル・Metropolis Recordsとも契約をするなど活動の場を広げるので、その確かな地力を刻んだ一枚といったところ。

 

I've "オマイラBEST -SHORT CIRCUIT BEST-"

 北海道に拠点を置き、アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによるコンセプトアルバム「SHORT CIRCUIT」シリーズの編集盤(2012年)。

 

 電波ソング集「SHORT CIRCUIT」シリーズ3作品の楽曲を対象とした人気投票の上位を収録した電波ソングベスト盤で、I've GIRLS COMPILATIONのベスト盤「G.C. BEST」と同時発売。本線の「GIRLS COMPILATION」シリーズとは別で展開していたとはいえ、やはり1枚1枚がその時々での集大成的な側面を持つものでもあったので、たった3作しか出ていないのにベスト盤ってどうなの、とファンの多くは思う筈。というか出来の良い「II」に「さくらんぼキッス」とかの有名曲を混ぜたら済むのでは…とか思ったら、案の定そんなベスト盤が出来上がりました(ん~)。投票結果に忠実とはいえ面白味がないな~。そもそもの話になるけど、この頃のI'veは専属歌手のメジャーデビュー、内外での様々な形の企画盤、外部歌手への楽曲提供、そして満を持したベスト盤など、自らの武器を統括しながらより外へ拡げていく方向に注力しており、それら一連の活動を高瀬一矢は「開かれたI've」と表現。今作もその一環なのだろうけど、 果たしてこれを開く必要はあったのだろうか。 まぁこの手の楽曲の要だったKOTOKOがI'veを卒業し、そもそも電波ソングという文化もひと段落しているので、一世を風靡したレガシーとして語り継ぐためには有効なのだろうか。萌え萌えド直球の合いの手とかに騙されてしまうけど(?)曲自体はしっかり良く出来ているし、「Princess Brave!」や「Double HarmoniZe Shock!!」とかは電波云々以前にロック曲としてかなり格好いい(どっちも「II」の曲だけど!)。そしてこういうチャレンジがI'veの知名度向上や音楽性の拡充など、良い影響ももたらしたのは確実だしね。電波(デジ)革命よ永遠なれ!!!

 

KMFDM / Ruck Zuck

Ruck Zuck

Ruck Zuck

 

 ドイツ出身のインダストリアルバンドのリミックスアルバム。

 

 リミックス盤としては1994年の「Naïve Hell To Go」以来になるようだけど、それは当時絶版になってしまった4thアルバム「Naïve」の代わりにリリースされたものなので、本作は初の純然たるリミックス作品という見方もできます。そうなるとちょっと注目してしまうし、彼らのキャリアや安定感、また本作の元になった12thアルバム「Hau Ruck」が名作(個人的に大好き)なだけに興味津々でした。全9曲だけどラストはSascha Konietzkoがドイツ語で喋るだけのトラック(当時のアメリカ政府への非難らしい)で、それを除くと8曲という抑えめのボリューム。バンド内外の手によるリミックス曲は、概ね曲調を大きくは変えずに音のバランスが変わったりリズミックになったりドラムンベースになったりと、枠をはみ出し過ぎないアレンジに徹しているのがむしろ期待通り。そんな中、大胆にスウィングジャズに仕上げた「Mini Mini Mini」が、ラジオDJ風の曲紹介から入る仕掛けも含めて異彩を放ち、かつ少し懐かしい仕上がり。そして、忘れてはいけないのが伝説的なEBMの始祖ユニット, DAFの名曲「Der Mussolini」のカバー。原曲の特徴的かつエネルギッシュなシーケンスとハンマービートを再現しつつ、渋いインダストリアルロックにコーティングしたKMFDMらしさ満点の出来で、「Mini Mini Mini」と合わせていい感じに作品にスパイスを効かせています。総じて、ファンなら納得&安心のアイテムかと。

 

SUGIZO / COSMOSCAPE

COSMOSCAPE

COSMOSCAPE

 

 LUNA SEAのギタリストによる編集盤。

 

 バンドの活動休止時から始まったソロ活動の10周年を記念したベスト盤。2ndアルバム「C:LEAR」以降の彼の活動は、The FLAREの結成、LUNA SEAの一夜限りの再結成、X JAPANJuno Reactorのサポート等で忙しくしていたものの、純然たるソロ名義での新作を出していなかったわけで、実質2枚のアルバムというキャリアでベスト盤出すの?と最初は思いました。しかし実際に聴いてそれを覆されたというか。コンピレーション盤への提供曲や彼が手掛けたサウンドトラック収録曲、またSUGIZO feat. bice名義でのシングルなどから選りすぐられた楽曲を本作用にリメイクし、それを全体の頭・中間・終わりに配置。断片であれ、細かく追い切れなかった彼の多彩な活動が拝めるのは嬉しく、また同時にこだわりも感じるし(特に「TELL ME WHY?」がヘヴィなギターが炸裂するハードトランスで抜群に格好いい)、その隙間の前半に1st収録曲、後半に2nd収録曲を置き、全体を新ミックスするという構成にも力の入れ様を感じます。それも、彼自身がボーカルを執ったシングル曲は一切なく、明確な歌モノも名曲「SWEET」「VOICE」など極一部に留まるといった強気ぶりで、商業的な意図よりも過去のアルバムとは異なる切り口で、自ら納得のいく形で、新たな解釈と価値を生み出そうとする意志が感じられます。まさにアーティスト。幅広いクラブミュージックや映画音楽への接近、彼の魅惑的なバイオリンやギタープレイ、またその枠に留まらない実験と次なる挑戦への布石を流れるように楽しめる傑作。彼の音楽センスが小宇宙のように広がっている…というのは大げさかも知れないけど、「ライフワークアルバム」という別名も納得の逸品。

 

自分語りとI've「G.C.BEST」 全曲レビュー

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 当ブログでI've soundのCDを紹介するのは、当然好きだからという理由もありますが、ジャイ宣さん(かつて存在したCDレビューサイト「ジャイアニズム宣言(仮)」管理人:TCRさん)へのリスペクトというのも大きな理由の1つだったりします。管理人が「I'veの音楽に惹き込まれたこと」と「インダストリアル系の音楽を好きになったこと」は別の軸の出来事だったけど、ジャイ宣さんを通じてそれが一本の線で繋がったときの衝撃というのは、自分の音楽人生においてもそう何度とないレベルのとても大きなものでした。この辺のことは大昔にちょっとだけ記事にしたこともあったっけ。

 

 なので、ジャイ宣さんが残念ながら閉鎖されたときに「インダストリアル音楽好きから見たI've soundの魅力」の発信は自分が引き継ごうと思い立ったし、それが当ブログのテーマの1つや更新への原動力にもなっていました。

 そして。すでに記憶もぼんやり曖昧ですが、ジャイ宣さんが閉鎖されたときはI'veのレビューがこの「G.C.BEST」直前だったような気がするので、記事の数で追いついたという意味で、またちょうどベスト盤という適した作品でもあるので。I'veへの愛とジャイ宣さんへのリスペクトを込めた「全曲レビュー」を記しておきます。完全に自己満足の企画ですが、よろしければお付き合い下さい。 

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