MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

BUCK-TICK / memento mori

memento mori(初回生産限定盤)(DVD付)

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  5人組ロックバンドの16thアルバム。

 

 彼らの場合、1作ごとの振り幅が大きかったり、次回作で音楽的に逆方向に振るなんてこともあったけど、本作においては前作から順当に歩を進めたという感じ。今井寿も「ここまでの集大成」という発言をしたらしく、この時期の彼らなりのロックやバンドサウンドの粋を集めた一作と言えそう。オープニングの「真っ赤な夜-bloody-」からイグニッション全開で、そこからもギアをチェンジしながら荒っぽい曲、リリカルなバラード、ポップな曲、GS歌謡風の曲と様々な様相を展開していくけど、やはり何はなくとも中心に位置するタイトル曲「memento mori」の素晴らしさ。琉球民謡を取り入れたという独特の音階やビートに乗せて、その意味である「死を想え」を逆説的にとらえ愛や生を賛美する、強力にポジティブなエネルギーに満ち溢れた佳曲。確かにちょっと変わってるというか、初めて聴いたときは驚いたけど(笑)。必聴です。とまぁ、これを筆頭に1曲1曲の濃さはなかなかのもの(その上で曲数も多めでちょっと胸焼け)。しかしそれもまた彼らのキャリアと間口の広さがなせる業であり、まだまだ貪欲に自分たちのロックを更新していくぞ、というようなパワフルな姿勢を感じさせてくれるのが頼もしい。個人的には「天使は誰だ」も外せない一曲。あの飄々としたカッティングが癖になる。愛 愛 LOVE LOVE!
 

島みやえい子 / Perfect World

Perfect World

Perfect World

 

  I've専属(当時)ボーカリスト/シンガーソングライターのミニアルバム。

 

 ミニアルバムとしては2005年「Endless Loop」以来の3作目。ただ、2ndフルアルバム以降の3枚のシングルから映画「ひぐらしのなく頃に」等のタイアップ「ではない」B面曲の方を選別して収録しているあたり、あえてノンタイアップ曲だけで作品を制作するという意図があったのかも。それだけに統一感──というか全体の整合性は格別。I'veのリミックス盤での縁が発端であろうEric Mouquet(Deep Forest)が参加したタイトル曲を筆頭にしたダウンテンポ~チルアウト系のアンビエントポップ/エレクトロニカは、どれも優しさと芯の強さを兼ね備えており、いかにもI'veといった手数の多い打ち込みだったり、ポップスとしてより耳当たりを良くするキャッチーなシンセ等に頼らない引き算で構築されたようなサウンドが印象的。しかし独特のスケールや角度からストーリーテリングやメッセージを放つソングライティングと、持ち前の流麗なボーカル/コーラスワークによって、最後まで耳を離せないものに仕上がっています。この辺の説得力というか安定感は、さすが百戦錬磨の選手。例えば彼女を「ひぐらし~」の人、程度にしか認識してない人にはやや地味に映るだろうけど、きっとそれも織り込み済み。本作の発売直後に甲状腺癌が発覚し、音楽活動を一旦休止してしまうのだけど(翌年完治)、彼女の核となる音楽性を思うさまに封じ込めた本作を作り上げることが出来てよかったと思います。

 

Front Line Assembly / [FLA]vour Of The Weak

Flavour of the Weak

Flavour of the Weak

 

 カナダ出身のインダストリアル/EBMユニットの9thアルバム。

 

 長らく在籍した主要メンバーRhys Fulberが、他のバンドの制作(昵懇のFear Factoryなど)に専念するためにグループを(一時)脱退。代わりに過去に本ユニット在籍歴もあり、近年はサポートに専念していたChris Petersonが正式に(再)加入。そして本作の制作にあたりイニシアチブをとったというだけあって、内容がかなり様変わり。ブレイクビーツを全面的に取り入れたスマートなビートや、映画やテクノ/ビッグビート界隈からのサンプリングを駆使したテクノオリエンテッドなアルバムとなっています。ついでに言うと、1曲1曲も長いし、ボーカル無しの曲も幾つかあったり。肉体に訴えかけるようなボディビートだったり、ここ数作にはつきものだったギターがなくなったのも含め大きな変化を伴った一作だけど、彼ら特有のサイバーな音使いやヒンヤリとした温度の低さみたいなものが浮き彫りになった節もあり、これはこれで悪くない。当時セールスに影響をもたらすほどに賛否が起こったようだけど、彼らの最初期の頃の音楽性が好きな人にはより受けそうな気もします。リード曲「Corruption」も格好良いけど、ハードなインダストリアルテクノを展開するシークレットトラック「Bill In A Box」も忘れずチェック!

 

hide / Ja, Zoo

Ja,Zoo(ヤズー)

Ja,Zoo(ヤズー)

 

 X JAPANのギタリストによる3rdアルバム。

 

 X JAPAN解散後、hide with Spread Beaver名義でソロ活動を再開したhideのソロ3作目であり、彼の急逝後に、彼の右腕的存在だったI.N.A.やSpread Beaverのメンバーを中心とした関係者が、残されたデモ音源などを元に完成させたもの。「ROCKET DIVE」に端を発した、共通のテーマを内包したシングル3部作は言うまでもなく名曲だし、zilch「INSIDE THE PERVERT MOUND」のセルフカバー「LEATHER FACE」、「DOUBT」の別バージョン「DOUBT '97」も新たな一面で楽しませてくれ、新曲も彼の新たな可能性を示していました(特に「BREEDING」はシンプルな曲構成・それを最高の形で発揮する熱演・hideらしい歌詞が一体となった凄い曲だと思う)。過去作ほどの各ジャンルごった煮クロスオーバー感はないけど、バンドサウンドの基本に立ち返ったような解放感に溢れ、だけどその奥に入り組んだように多彩な仕掛けが詰め込まれたサウンドは、彼が掲げた「PSYBORG ROCK」というキャッチフレーズを体現するに相応しいものだったのかも。最終的には過去作と同じ全16曲を予定していたのかなと思っていたけど、2014年に発表された未発表の新曲「子 ギャル」を含めた構想によるとそうではなかったよう。いずれにせよ完成形を聴いてみたかったなという気持ちを抱えながら、今も楽しませてもらっています。

 

川田まみ / LINKAGE

LINKAGE(初回限定盤)(DVD付)

LINKAGE(初回限定盤)(DVD付)

 

  I've専属ボーカリストの3rdアルバム。

 

 セミヌードの挑発的なジャケットが目を引く本作。前作のギターを前面に出した荒々しさは幾分整理され、4つ打ちを基調としたダンサブルなリズムや存在感の強いシンセベースを核にした、クールで浮遊感のあるサウンドを展開。よりトランス成分が色濃くなったというか。それ以前の彼女に無かった作風というわけでは全くないけど、ギターも含めた音の隙間を縫うような細かいアレンジの冴え──特に音色やリズムといった基幹の部分が強化され、そこに被さるコーラスやボーカルの加工などによるギミックを含め、魅せ方という点において大きく飛躍した印象があります。楽曲面でも、抜群の安定感のタイアップ曲だけでなく、コケティッシュで異彩な魅力を放つ「TOY」は本作の目玉と言えるし、ノンタイアップ曲も充実、バラード曲も底上げされ、更には自身の原点とも言えるThe Cranberriesのカバーも収録するなど、実に盛り沢山。その集大成的な振り幅と、それを実現した作家陣、そして本作をもって(当時の)I'veのトップを走る歌姫KOTOKOと肩を並べるまでになった彼女の成長、そういった様々なファクターの連なりは、まさに「LINKAGE(連鎖)」という作品タイトルを表すかのよう。アニソン界をリードするに相応しい「川田まみ時代」の開幕を宣言する傑作と言えるでしょう。