MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Blue Stahli / Blue Stahli

Blue Stahli

Blue Stahli

 

 US出身のBret Autreyによるエレクトロニックロック/インダストリアルメタルプロジェクトの1stアルバム(2011年)。

 

 正確にはこれ以前にインストアルバムで既にデビューしていたけど、ボーカルアルバムとしては初となるもの。プロデュースには前作同様にFiXT Musicの長・Klayton。そして内容も、その環境や前身の活動から容易に想像のつくCelldwellerライクなエレクトロニックロック。彼自身の赤髪の風貌も含め、何かと影響バリバリといった感じ。恐らくは彼の中で試験的な意味合いもあったであろうインストアルバムの(ヘヴィ寄りの)音使いをそのままフルサイズに広げた感じのサウンドだけど、そこに乗るボーカルがこれまた素晴らしい。FilterのRichard Patrickを思わせるエモーショナルでパワーのある歌声、そして訴求力を一点集中させたような、一聴した人を惹き込むメロディ。その合わせ技はどことなく初期のLinkin Parkのようでもあるし(ラップはないけど)、1曲単位で見るなら本家Celldwellerにも引けを取らないレベルにあると思います。さすがにトータルで見ると、その巧みなアレンジだけで電脳の街を一つ作り上げるかのようなCelldwellerには及ばないけど、全10曲というボリュームなのでさほど気にならず一気に聴ける。この一作だけで並居る同系統ジャンルのバンドから頭一つ抜きん出るくらいの存在感は示せたと思います。これを一人で制作してるというのも凄い。恐るべきニューカマー。

  

harshrealm / [fahrenheit/vers la flamme]

EP[fahrenheit/vers la flamme]

EP[fahrenheit/vers la flamme]

 

 FINNを中心としたエレクトロニック/インダストリアルプロジェクトのミニアルバム。

 

 結成当時からボーカルを担当していたYU-KIが2010年に脱退し、予定されていた2ndフルアルバムは白紙に。しかし約1年間の活動休止を経て、メインコンポーザー・FINN1人のユニットとして活動を再開。つまり復活の狼煙を上げた本作は、なんと全楽曲の作詞作曲だけでなく、演奏/編曲/プロデュース、果てはミックスからボーカルまで、ほぼ全ての工程やパートをFINN一人で担っているようです。この多芸な活動ぶりはもう「日本のCelldweller」を名乗っていいレベルじゃないでしょうか。というか彼らはFiXT Musicから海外へ配信もしていたようだし、実際にそういう部分からの影響もあるのだと思います。音楽的にも決して遠くなく、あえて言えば「ヨーロッパの湿気」と称されたダークでゴシックな色合いは独自のものがあったと思うけど、本作ではそういった要素、またヘヴィなギターも排除。ギターはほんの一部にパーツ的に使われるのみで、ほぼ全編エレクトロニック全開。テクノ/フューチャーポップをベースとしたシンセ主導の煌びやかなダンスサウンドは、以前とは音楽性がかなり変わったので好みは分かれるかも知れないけど、相変わらず日本発の音楽とは思えないし、その上でharshrealmという存在を新たに定義し直すかのような気概とクオリティを感じます。ちなみに本作は廃盤になっており入手は不可能だけど、新体制によるリメイク盤が2014年にリリースされています。

 

I've / I've MANIA Tracks Vol.II

 北海道に拠点を置き、アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによる編集盤。

 

 コミックマーケット77及び通販にて限定販売された、通常のガールズコンピ盤には収録不可能な音源や、過去の入手困難な音源を収録したレアコンピシリーズの第2弾。専属歌手の隠れた名曲からOuter名義の楽曲、果ては電波ソングC.G mixによる男性ボーカル曲まで相変わらずトータリティを考慮しないごった煮状態だけど、Vol.Iと比較すると「既発曲の別バージョン」よりは「コンピ初収録曲」が多く、楽曲のカラーも陰陽様々ではあるので、コレクター的な視点の無いリスナーにしてみれば普通に新作コンピ感覚で聴けそう。I'veらしいダークさを纏ったインダストリアル風「The Maze(川田まみ)」、名曲「砂漠の雪」とタイトルからして双子曲であろうディープなエレクトロニカ「砂の風 (MELL)」、メジャー曲でもおかしくない王道のトランス「Fatally( KOTOKO)」あたりは非常に秀逸。一方ではI'veのMOMOというよりはまるで「ソロ歌手・モモイヒトミ」のバラードこなたよりかなたまで」が浮きまくりで笑えます。これは通常コンピには入りませんね(笑)。半数近い楽曲が、実は原曲よりもやや短く本作独自の編集がなされているという謎の仕様があるのはよく分からないし、ラスト2曲は蛇足だったとも思うけど、本作ならではの価値は十分だし、聴けて良かったと思います。

 


コミックマーケット94参加のお知らせ

f:id:xnoybis:20180331185346p:plain

 

 ※エイプリルフールネタです

 次の夏コミ(C94)にて、インダストリアル音楽に関する同人誌を、再び有志の方々と共同で出すことになりました。

 

 この本は、「いんなーとりっぷブログ」の鉄屑さんの呼びかけにより集まった総勢22名の(広義の)インダストリアル音楽に造詣の深いブロガー/ツイッタラーさん達が、それぞれ得意とする分野について執筆した原稿を持ち寄って、それを一冊にまとめたオムニバス本の第2弾になります。

  

詳しい内容は↓をクリックしてご覧いただけます。

 

続きを読む

Celldweller / Wish Upon A Blackstar

Wish Upon a Blackstar

Wish Upon a Blackstar

 

 US出身のKlaytonによるエレクトロニックロック/インダストリアルロックプロジェクトの2ndアルバム。

 

 間違いなく名盤と言って差し支えない1stアルバム以降、企画盤やリミックス等の活動はありつつも、完全新作に関しては制作が大幅に遅れていた模様。そこで2009年に5つの章立てでの構想を発表。新曲2曲のパッケージを順番に配信し、やがて1つの作品が形になるという流れ。そんな大がかりな展開の末に、結果1stから約9年振りという期間を置いて最終的に完成した本作は、募りまくった期待を上回り、上がりまくったハードルを軽く飛び越える程の大傑作となりました。ボーカルを軸に作られたというだけあって、とにかく全体に一貫しているのは、この上なくメロディアスでキャッチーなボーカル。そしてそれを引き立たせ、一級のオーバーグラウンドミュージックとして十二分に生かすアレンジ。ダンス/トランス/ダブステップ/ドラムステップ/インダストリアルロックなどを縦横無尽かつ軽快に行き交い、1曲単位ではもちろん全体で盛り上げる流れも含め、とにかく「格好良く」聴かせることに真っ向から挑み、全力で心を砕いたかのようだし、それが完璧なまでに成功しています。こりゃ凄い。前作に残っていた前身のCircle Of Dust時代の無機質さやラウドさはほぼ無くなり、今思うとここからCelldwellerとしての本質や属人性が本格的に奔出し始めている感も。特に先行配信された楽曲や、過去にβ版で発表済みの「Birthright」の本テイク等は流石に抜群にクオリティが高く、エレクトロからヘヴィなロックまであらゆる愛好家に全力でお勧めできます。まさにエレクトロニックロックのネクストレベル!