MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

石川忠 / DUCTILE

DUCTILE サウンドトラック SHINYATSUKAMOTO?S FILM/MUSIC BY CHU ISHIKAWA

DUCTILE サウンドトラック SHINYATSUKAMOTO?S FILM/MUSIC BY CHU ISHIKAWA

  • アーティスト: 映画主題歌,サントラ,石川忠
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 2000/01/26
  • メディア: CD
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  ZEITLICH VERGELTERやDer Eisenrostでも活躍した映画音楽家/メタルパーカッショニスト・石川忠による編集盤。

 

 映画監督・塚本晋也の映画作品にそれまで提供してきた数々の映画音楽からセレクトされたベスト盤。サントラ盤の「鉄男 (TETSUO)」を始め「双生児 (GEMINI)」「BULLET BALLET」「A SNAKE OF JUNE」やDer Eisenrostと共同名義の「TOKYO FIST」からも選出されており、ここまでの彼の映画音楽家としての創作を統括するような内容。例によって映画は一切観たことはないですが、作品に通底するという鉄・暴力・血・肉体・エロスといったテーマを具現化させるかのようなサウンドが本作には満載。木目細かく多重に鳴らされるメタルパーカッションの金属音は単純に迫力があるし、肉体的/直感的なビートがとても心地よい。そこにオーケストレーションや民族楽器などを融合させ、情景を描写しながら精神を煽り立てるような演出をもって迫ってくる楽曲は、変にマニアックに陥ることなく、聴き手の正面から届けようとする潔さを感じます。選出元によって雰囲気に大きな差はないけど、「TOKYO FIST」からの楽曲はギターをガッツリ導入した超速インダストリアルメタルがとてもカッコいい。またラスト3曲はボーナス(レア)トラックとの位置づけで、ここだけ明らかに他の曲よりも完成度が高い。奥行きを感じさせるミキシングで荒廃的な空気感が素晴らしい。思うさま鉄筋インダストリアルに浸っちゃいましょう。

 

I've / master groove circle

master groove circle 【初回限定盤】

master groove circle 【初回限定盤】

 

 北海道に拠点を置き、アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームのリミックスアルバム。

 

 I've名義では珍しい(初?)メジャー流通盤。なぜか特殊缶ケース。外部アレンジャーを招へいして制作され、G・M・S、Eat Static、SINE6、Juno Reactor、Eric Mouquet(Deep Forest)など国内外の著名エレクトロ/トランス系アーティストとコラボレーション。かなり本格的なトランスリミックス集となっています。なんせCDを再生して3分近く経過しないとボーカルが聴こえてこない!CD2枚組なのは曲数の多さというより1曲が長くて入りきらないからか!トランスとはそういうものだと言われたらそうなんだけど、原曲の別の良さを引き出すみたいなことではなく、まずトランスという手法ありきで、素材にI'veの曲を使ったという感じ。歌詞カードが無いのも「音だけ聴け!」というメッセージを感じます。もともとI'veのバックボーンの柱にはトランスがあるから相性も良いだろうけど、どっちかというと本格派のトランスリスナーやクラブ/DJ文化に理解のある人向けかなとも思うし、そもそもがファン云々以前にI'veとして「一度作っておきたかった作品」なのかも。個人的には一本槍にトランスが並ぶ中だと、ダークな原曲をダークエレクトロ化してより悪辣にした「UZU-MAKI [EAT STATIC Re-mix]」、またそれとは逆に、詩月カオリの持つ純朴さを可愛らしいテクノポップに昇華した「Change of heart [soyuz project remix]」が印象に残りました。というか後者めっちゃ好み。

 

16Volt / SuperCoolNothing

Supercoolnothing

Supercoolnothing

 

 US出身のインダストリアルロックバンドの4thアルバム(1998年)。

 

 上記のジャケットはレーベル移籍後の再発盤のもの。オリジナルのジャケットは鬼ダサイです。さて内容ですが、1stアルバム以来となる外部プロデューサーを起用。Nine Inch NailsMarilyn Mansonにも関わったというBill Kennedy、劇伴作家のJoseph Bisharaといった面々(と自分たち)が名を連ねています。しかし特に何かが大きく変わったりパワーアップしていたりという感触はなく、前作の無味無臭インダストリアルロックの延長といった感じ。細かい違いを探すなら、激しい曲はより迫力を増したし、スローなパートや楽曲の腰の据わった聴かせ方も少しだけ新鮮。実際アルバムを通してより印象に残るのは、アンビエント風の「Low」やラストのシューゲイザー風の「At The End」だったりするので。しかし彼らを特徴づけるほどでもなく、全体的にはまずまずといったところ。とは言え、後(2002年)にデモ/リミックス音源を合わせた2枚組の「~V2.0」として再発し、その中の楽曲がPlayStation2の某ゲームソフトの中で使用されたらしいので、彼らにとっては人気を博した作品と言えるのかも。

 

girugamesh / NOW

Now

Now

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 4人組ロックバンドの4thアルバム(2009年)。

 

 前作以降、一般流通されたシングルリリースを重ねた末に発表された作品。まぁシングル曲はそのうち通常盤に1曲しか収録されていないんだけど、そういった経緯を反映してか、前作で確立したデジタル/ラウド一本にこだわらず、ポップさを起点にアプローチをより広げた内容になっています。過去作ミニ「Reason of crying」を今(当時)の力量でフルサイズに解釈したような感じかな?バラードやラップ主体の曲もありつつも、メロディを前面に押し出した歌モノの存在感が強く、元々はカップリング曲の「睡蓮」やリード曲「arrow」の染み渡るようなメロディは秀逸の一言。女性コーラス×ファンクの「BEAST」も新しい。ただ、ハードなサウンドやシャウトでゴリ押すような曲をあえて封印してまで全体の聴きやすさに重点を置いた節があり、結果妙に小奇麗にまとまり過ぎたような。決して悪くはないんだけど、彼らの良さは他にもあるぞ、と言いたくなります。例えば同時期に発表されたアルバム未収録曲「GAMBLE」はインダストリアル/ラウドで滅茶苦茶格好いいのに、とか。それと全体的に安易なラップが増えすぎて、なんか妙にチャラい感じを受けるのも否めない。そこも(あとジャケットも…)ちょっと好みが分かれそうなところ。ちなみに限定盤はDVDが付属する代わりに何故か曲数が絞られてる上に2種あったりと売り方もえげつないので、基本的には通常盤がお勧め。スラップベースと歌謡メロが並走する良曲「driving time」 はそちらにのみ収録だし。

 

MELL / MELLSCOPE

MELLSCOPE (初回限定盤)

MELLSCOPE (初回限定盤)

 

 I've専属ボーカリストの1stアルバム。

 

 実はI'veでも最も古くから参加していながら、KOTOKOを始めとした主要な専属歌手としては後発のメジャーデビューとなったMELL。その間にI'veがメジャーへ切り込み蓄積されていった経験を反映し、1作目にして確かな完成度を実現。「後の彼女に繋がる片鱗は~」なんて補足は要りません。昔から優れた歌唱力と英語の発音を有しながらも、それ程目立つ位置にはない印象もあった彼女だけど、アニメ「BLACK LAGOON」の主題歌「Red fraction」で別人のように覚醒し、クライムアクションの作品内容に相応しいハードで攻撃的なサウンドでリスナーの度肝を抜いたのが一つの転機に。そこから辿り着いた本アルバムは、正調なバラードもあるけど、全体をリードするのはザクザクと刻まれるノイズギター、うごめくようにうねるベース、トランシーなビートで、ダークなインダストリアルロック「風」というより「そのもの」と言ってもいいレベルの曲も多い。I'veが元々持っていたマニアックな一面ではあるけど、MELLのクールなアーティスト性とのベストマッチを図って鳴らされており、その相乗効果における破壊力は「いちアニソン」では括れない魅力があります。終盤に収録された「美しく生きたい -10 years anniversary mix-」は毛色が少し違うけど、それもその筈タイトル通り1999年発表のMELLのボーカルデビュー曲のリイシュー。彼女の本当の原点も同時に楽しめちゃいます。