MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Bile / Sex Reflex

Sex Reflex

Sex Reflex

 

 US出身のインダストリアルメタルバンドの3rdアルバム(2000年)。

 

 それまでのレコード会社と袂を分かち、自主レーベル・Bile Style Recordsを設立してリリースされた作品。初期はMinistryにも引けを取らないような無機質かつ激しいサウンドだったけど、本作では曲によってメロディらしいメロディに乗せて歌われたり、ラップめいたボーカルが飛び出したり、四つ打ちダンスビートでノリノリだったりと、随分とポップな感触になってビックリ。もはやMinistryというより(最初期の)Marilyn Mansonを思い出すB級ホラー感。だけどギターやボーカルを中心に全体を電気加工しまくったように歪んだエフェクティブな音像や、彼らの代表曲にもなった(らしい)「In League」のサビにおけるキックの連打など、急激な緩急やうるささ・激しさを逆手にとったような手法は相変わらずで、総じてそういった「過剰さ」を押し通すスタイルが根底にあり続けていることが伺えます。ただもうこうなってくると、場繋ぎ的なノイズインストや、ラスト付近の定番となりつつある長尺ノイズアンビエントなんかを省いて、いっそ簡潔にまとめた方がより聴きやすかったかもという気はします。 

 

トモコDEATH / anDEATH

anDEATH

anDEATH

 

 2人組デジタルハードコアユニットの2ndアルバム。

 

 民族音楽とデジタルハードコアを組み合わせた音楽が特徴的な彼ら。2作目となる本作ではタイトル通りアンデス音楽(フォルクローレ)を取り入れてきました。CDを再生したら聴こえてくるトラッドな笛の音色と猛々しい合唱は、いかにも異国のお祭りか儀式の場に迷い込んだかのよう。そしてそこに自然に融合しながらやがて主張を高めていくリズムトラックやノイズ、相変わらず強烈なトモコのデスボーカル/シャウト。特異としか言いようがない世界が広がっていきます。前作はスペイン音楽が下地で全体的に攻撃的だった(あと味づけが薄めだった)分単調さを感じもしたけど、本作は牧歌的というか郷愁的な民族音楽の体系や空気感がしっかり頭から終わりまで続き、ブレイクコアやジャングルの攻撃的なアプローチからシンプルでリズミックなアンビエント/ノイズまで曲調も幅があり、トモコも激しいシャウトから舌っ足らずのあどけない少女のような歌い方を自由に使い分け、全体の起伏のある流れと聴き応えは確かで、翻って(いい意味で)ヘンな音楽としても魅力的だと思います。インダストリアル好きにもお勧めできそう。

 

島みやえい子 / ひかりなでしこ

ひかりなでしこ(初回限定盤)【DVD付】

ひかりなでしこ(初回限定盤)【DVD付】

 

 I've専属(当時)ボーカリスト/シンガーソングライターの2ndアルバム。

 

 これまで同様に総合的なプロデュースはI'veだけど、曲ごとの編曲にはI've外の作家の参加が作品ごとに増加傾向にあり、作品の内容もそれを示すように少しずつ様変わりしています。鮮やかなシンセのメロディやダンスビートが牽引するような、いかにもI'veな楽曲の存在感は後退気味で、その分彼女の歌の力や凝りに凝った多重コーラスに重きを置き、タイプは違えどその良さを引き出すことや引き立たせることに徹したようなシンプルな作り、穏やかな曲調が印象的。そもそもが自身のアニメタイアップ曲を「武装した自分」と称し、本作のような作風を「本来の自分」と客観視するくらいの視野を持ち、その上でどういった形であろうと己の世界を保ったまま歌いこなしてしまう実力のある人なので、変化というよりは深化が表れているという表現が適切だし、1st同様に間違いない完成度でもあります。神々しさ溢れるタイトル曲「ひかりなでしこ」なんかはそれこそメジャーデビュー前から存在した世界観の極致みたいな凄みのある曲だし、アニメ「ひぐらしのなく頃に解」のテーマ曲「奈落の花」における神秘性/攻撃性も圧巻。後者のような曲がたくさん入ってるのを期待するアルバムではないのは確かだけど、好盤に違いはないです。

 

Flesh Field / Strain

Strain

Strain

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 アメリカ/オハイオ出身のダークエレクトロ/エレクトロインダストリアルユニットの3rdアルバム(2004年)。

 

 1~2作目まで女性ボーカルを担当したRian Millerが脱退し、本作より新たな女性ボーカリスト・Wendy Yankoを迎えて完成をみた3年ぶり3作目。強めにリズムが打ち鳴らされるEBM~ダークエレクトロという基本線はそのままに、前作までは(恐らく)封じていたギターを大胆に投入。メタリックというよりはノイジーな質感を与えるような用途で、直接的に耳を襲う激しさや煩さを加えつつ、オーケストレーションクワイアを巧みに使用するゴシックな世界観との合わせ技で一枚上の表現へ。打ち込みやエレクトロニックの鳴らされ方も、多彩になりつつもあくまでも機械的/SF的な質感を優先する形で彼らのアプローチの基盤を支えているし、男女のボーカルはともに奥まった位置でエフェクティブに配置され、オケを引き立てるような役割を目指したであろう割り切り方が上手く噛み合い、全体の整合性を確かなものにしています。歌メロに重きを置く音楽性ではないにしろ、やはり「これだ!」という一曲が欲しいというのはあるんだけど、全体的な完成度は明らかに向上。ただ聴き流すだけでも相当おいしいサウンドです。インダストリアルメタルの領域にも片足を突っ込んでいるような感触もあるので、何となく共通点が見い出せるCircle Of DustやKMFDMあたりが好きな人は是非とも聴いてみては。個人的にも、あまりゴシックに寄ると好みから外れるんだけど、この作品にはかなり惹き込まれました。

 

BUCK-TICK / 天使のリボルバー

天使のリボルバー(初回生産限定盤)(DVD付)

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  5人組ロックバンドの15thアルバム。

 

 メジャーデビュー20周年の節目に制作された記念すべきアルバム。前作にあたる「十三階は月光」の大仰なゴシックの世界から一転、かなりシンプルかつストレートなロックンロールにシフトチェンジ。元々アルバムごとに作風を大きく変えるバンドでもあるし、一つの方向性で濃い作品を作ると、その反動を次回作で形にすることもあったけど、この変化(回帰?)もまた驚かされるものがありました。デジタル/エレクトロニックな要素をオミットしたバンドサウンドという構造だけは共通ではあるけど、閉じた世界観でディープに作り込まれた前作と比較すると、驚くほど開かれたムードで耳馴染みが良く、聴く人を選ばない一枚とも言えそう。コアなファンにとってはそこがちょっと薄味で物足りないと映る向きもあるかも知れないけど、これだけ年輪を重ねてきたバンドが、ここに来てまだこれほどに瑞々しく、同時に安定感と説得力もあるグルーヴを聴かせてくれるというだけでも嬉しくなります。新しい王道を感じさせる「RANDEZVOUS ~ランデブー~」は名曲だし、個人的には星野英彦作曲「Snow White」も大好き。ホワイトアウトを連想させる緊張感のあるサウンドに「真白な世界/眠れる君の夢か 幻/たった一筋/モノクロームの頬に紅差す」と強烈に情景を喚起させる詞がマッチした渾身のバラード。