MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

島みやえい子 / EIKO SHIMAMIYA PRODUCE 5TEARS Vol. 2

5TEARS Vol.2

5TEARS Vol.2

 

 I've出身シンガーソングライターによる企画盤(2012年)。

 

 コミックマーケット83にて販売、後に一般販売された作品。文字通り、島みやえい子のペンによる楽曲を、自身を含む5人の歌手が歌う企画盤の第2弾で、前作のちょうど1年後にリリース。今回はジャケットがちゃんとしてて安心。島みやえい子以外の参加歌手が一新され、彼女と同じくI'veに所属していたSHIHO、Keyの作品のテーマソングを数多く歌ったシンガーソングライター/声優の多田葵ビジュアルアーツを代表する歌姫のLiaらが参加。SHIHOが歌うR&B風の「Distance」、Liaの高い歌唱力を堪能できる神秘的な三連バラード「Infini」、多田葵の柔らかい歌声と(文字通り?)生楽器を主とした「ピチカートの涙」(名曲!)などは、各歌い手の実力と、その個性に見合うようにアレンジを詰められておりどれも秀逸。そして島みやえい子が発掘したという鳥畑うみは、「ジェイドの龍」にて無名の大学生とは思えない堂々たる歌いっぷりで、そのファンタジックな世界を見事に表現。島みやえい子は先だって公開されていた安定のタイアップ曲の収録とは別に、Key筆頭の作家・折戸伸治が編曲を手掛けた書き下ろしリードトラック「青秋18切符」を担当。楽しげな列車の旅というテーマを軽快に歌う姿は逆に新鮮に映ってとても良かった。という訳で、1曲ごとのクオリティは勿論、オムニバス的な企画盤ならではの狙いもより鮮明になり、前作よりも遥かに好きですね。I've~Keyど真ん中ではないにしろ、その辺りの人脈に覚えがある人なら地味に楽しめそうな一枚。 

 

Slick Idiot / Sucksess

Sucksess

Sucksess

 

 KMFDMの元メンバー・En EschとGünter Schulz(Pigfaceにも参加する2人)を中心としたインダストリアルロックバンドの3rdアルバム。

 

 彼らの音楽を一言で言うと「ポストKMFDM」で、1997~1999年辺り(つまり解散前)のKMFDMを彷彿とさせるものがあるんですね。ゲストミュージシャンや女性コーラスを招いた、ちょっとテクノに接近した小気味よいインダストリアルダンス/ロックで、彼らの場合はGünter Schulzの攻撃的なギターリフが特に目立つという。少し違うアプローチを加えてきた前作でも基本それを踏襲していたけど、本作はその定型からもう一段階逸脱してきたという印象。曲によってはEDM、ドラムンベースハードテクノなどを取り入れるなど明確な変化があったり、DAFのカバーと言われても疑わないエレクトロパンク風の曲までも披露。全体的にも女性コーラスやGünter Schulzらしさ満点のギターフレーズなど、お家芸とも言える手法を以前ほど全面に出すことはしていないようだし、意図的に自分たちの音楽を再構成しているような趣。Günter Schulzのギターは凄く特徴的な分、連発すると大味に聴こえるのでこれはこれで良いと思います。こうして聴くと、1999年のKMFDM解散以降、再結成したKMFDMはヘヴィビートを極める方向へ進んだけど、こっちはこっちでアナザーKMFDM感覚で聴けるバンドとして、悪くない進化を遂げているのかなと。今は活動は止まっているようだけど、もし新作が出たら期待すると思います。

 

MAKO / snow flake

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 I've専属ボーカリストのミニアルバム(2012年)。

 

 コミックマーケット83限定販売。彼女は初期I'veの2001年前後にゲストボーカルとして参加していた人物で、2011年のシャッフルカバーアルバム「TRIBAL LINK」にて約10年振りの電撃的な復帰を果たしファンを驚かせました。そしてそれを皮切りに音楽活動を再開し、8thコンピ盤への参加に続き、本作でソロデビュー。5曲入りとはいえ単独作品、しかも高瀬一矢直々にプロデュースということで、なかなかの力の入れよう。初期はほんの数曲しか担当しなかったにも関わらず、そのソウルフルな歌声で非常に存在感を放っていた彼女(しかも当時は10代というから驚き)特有の魅力は健在で、むしろ歳を重ねたことでふくよかさと安定感が備わった印象。「TRIBAL LINK」では川田まみとデュエットで対等に渡り合ったのも記憶に新しい。楽曲の方は中盤まで中音~低音域を重視した近年の高瀬一矢っぽいハウス/トランス系ダンスで手堅くまとめられており、これはこれで期待通りだけど、自身が作曲した生バンド風の「虹」や、アコギとパーカッションで力強く再構成した文字通りの「LEVEL OCTAVE -Unplugged Mix-」といった非デジタルなサウンドを背負う終盤の流れも新鮮で捨てがたい。彼女の歌声もより浮き立って聴こえて良い感じです。ともあれ、彼女のポテンシャルを刻んだ、名刺代わりとしても十分すぎる作品。

 

Kidneythieves / Trypt0fanatic

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 US出身のインダストリアルロックバンドの3rdアルバム(2010年)。

 

 2004年に解散した後、中心人物のFree DominguezとBruce Somersはそれぞれで音楽活動を続けていたようだけど、2007年に2人体制での復活を示唆し、2010年に復活作となる本作がリリース。CDは公式サイトのみの販売となっています。彼らの過去作と言えば、ビリビリと歪められた感電しそうな(?)ギターが特徴的な、ちょっとトリップホップMarilyn Mansonっぽさのある気怠いインダストリアルロックという雰囲気で、それはそれで嫌いではなかったです。が、今思うとちょっとこねくり回しすぎてダラっとしていた部分もあったかも。しかし本作は、サウンドのバランスをギュッとシェイプし、Free Dominguezの溌剌とした歌をバンドグルーヴ全体で盛り上げるようなスタイルに変化。以前では殆ど見られなかったような、伸びやかなボーカルが牽引する軽快なテンポ感の曲も少なくなく、圧倒的に風通しが良くなっていて聴きやすい。かと言って特徴がなくなったわけではなく、さりげなく効果的に用いられるエフェクト/プログラミング含めインダストリアルロック的にも堅実な作りで、スローな曲とのメリハリも生まれ、全体の完成度はグッと上がったようにも思います。中でも開放感のある曲展開が弦やピアノと共に更に広がりを増していく「Comets + Violins」には惚れ込んでしまいました。本作には収録されていないけど、2011年に「DISSIDIA 012 FINAL FANTASY」とコラボした「God in Fire」(サントラ盤に収録)も滅茶苦茶格好いい!今後が益々楽しみ。