フィンランド出身のクロスオーバー/アヴァンギャルドメタルバンドの1stアルバム(1991年)。
様々なタイプのメタルやパンク、あるいはテクノからインダストリアルまでとにかく幅広い音楽性をミックスさせることで知られる彼ら。1986年に結成され現在まで活動を続ける大御所でもあり、ヨーロッパを中心に広く人気を獲得しており、ここ日本でもそれなりにファンのいるバンド…という認識。そんな彼らの記念すべき1作目。この時点では彼らの代名詞でもあるクロスオーバーな音楽性はまだ発展途上で、ラップやファンク色のあるハードロック/パンク、と簡潔に説明がつく感じ。ただ、ベース/キーボード演奏も兼任するボーカリスト・Kärtsy Hatakkaの茶目っ気のある歌声や、全体を貫く明るく楽しげな雰囲気、何が飛び出してくるのか読みにくいバラエティ感、思いも寄らない工夫に凝ったアプローチといった彼らの特色や個性は割とこの時点で一つの形を成しており、どこから再生しても“Waltariらしいな”と瞬間的に察知させられてしまう。後追いで聴いても、未熟な印象よりも感心が勝ってしまう、そんな内容だと思います。中でもThe Beatles「Help!」のグラインドコア風カバー(!)は驚愕必至というか、彼らの突飛なセンスが一足早く傑出した楽曲と言えそう。それとだいぶ余談ではあるんだけど、X JAPANのギタリスト・hideは彼らに強い影響を受けたらしく、なるほど歌声の声色や楽曲の端々から感じられるフレーズ/ギミックなんかは参考にしてそうな部分もチラホラ。しかしそれ以上に「音楽を楽しんでいる空気感」「音楽で楽しませようとする姿勢」みたいなものが共通しているところが素敵だなと。というわけで、hideが好きな人も是非ご一聴を。
こちらは2ndアルバム(1992年)。 彼らの超人的なミクスチャーセンスが開花を始めたアルバム、という位置づけらしいです。一通り聴いてなるほど納得。基本的には前作の延長にあるファンクやラップを取り入れた明るめのハードロックを核としながらも、楽曲によってはスピードメタルやスラッシュメタルに接近──というレベルを超えて真正面から取り組んだり、ドゥームメタルすら想起させる遅く重々しいリフを炸裂させながらドッシリと進行したり、シンプルなパンクでかっ飛んだりとかなり奔放。もっと言うとMadonna「Vogue」のメタルカバー(!)という驚きのナンバーも完全に自分たちのものにするくらいに器用だし、その選曲が示す通りダンスポップ/ロックへの興味や造詣も感じられるという。その幅広いアプローチには大変驚かされるけど、同時代に挑戦的/先駆的な野心で時代を切り開いたUSオルタナティブ勢とは似てる部分がありつつもちょっと違ってて、彼らの場合は伝統的なロック/メタルへの敬意と再構築の両立を図った上で自分たちなりの新しい見せ方を追求しているような印象。なので様々なタイプの楽曲を並べることそれ自体が一つの目的と化してる節もあるけど、決してそこに飲まれたりせず、かと言って散漫になったりもしていないというのもなかなかに凄い話。しかも2作目でこれっていう。やっぱり楽曲がちゃんとよく出来ているし、ボーカリスト・Kärtsy Hatakkaの飄々とした歌声で自然とまとまっちゃうのも強い。終曲まで聴き通せば大満足お腹いっぱいになれるけど、彼らの本領が発揮されるのはまだまだこの先なのでいかに末恐ろしいバンドだったかというのが分かります。
管理人が彼らを知り興味を持ったのは、管理人の心の師であるかつてのCDレビューサイトの管理人・TCRさんが世界一好きなバンドと公言されており、かつ当時の他のCDレビューサイトでもWaltariを扱っているところでは軒並み評価が高かったからです。癖の強さに馴染むのに時間がかかったり、音源の入手が難易度高めで後回しにしたりしていたけど、腰を落ち着けて聴くようになったら、聴けば聴くほどに彼らの良さや凄みに圧倒され、あっという間に深みにハマっていったのでした。インダストリアルメタルとの親和性もあるバンドなので、その辺りのアルバムもいずれご紹介できたらと思います。