MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Ministry / Side Trax

Side Trax

Side Trax

  • アーティスト:Ministry
  • 出版社/メーカー: Rykodisc
  • 発売日: 2004/10/12
  • メディア: CD
 

 US出身のAl Jourgensenを中心としたインダストリアルバンドの編集盤。

 

 初期作集「Early Trax」等と同時発売されたコンピレーション盤で、Al JourgensenがMinistryとは別で活動したサイドプロジェクトの音源をまとめたもの。彼が多くのユニットを掛け持ったのは有名なんですが、ここでは変名や匿名という形で短期/単発的に活動した、お遊びや実験要素の強そうなユニットの作品が収められています。存在は知っていたけどそこまで細かく追い切れていなかった自分としては有り難い。レーベルオーナーでありFugazi等でも活躍するIan MacKayeと結成したPailheadは、まんま初期Killing Jokeのハードコア。Ministryのアウトテイク発表の場を目的としたらしい1000 Homo DJsは、サイケなインダストリアルダンス。Black Sabbathのカバー「Supernaut」で"あの"Trent Reznorも参加したことで知られるけど、レーベルと色々あってそのテイクはレア音源化している模様。Chris Connellyと組んだPTPはファンキーかつミニマルなEBMで、今回初収録となった楽曲「Show Me Your Spine」ではなんとSkinny PuppyのNivek Ogreが参加しているとか。最後のAcid Horseは、Cabaret Voltaireと組んで陽気かつ悪趣味なサウンドを展開。どれも違うと言えば違うけど、当時のWax Trax!っぽさ(何だそれ)やメタル化する前のMinistryの創作意欲などは何となく共通するものもあり、「Early Trax」にも感じたことだけど、ひとまとめで聴く面白さがあります。ちと退屈な時間帯もあるけど、Ministryのファンや参加する人脈に覚えのある人なら聴いて損のないであろう一枚。

 

girugamesh / period

 4人組ロックバンドのシングル/配信シングル(2016年)。

 

 2016年7月10日のラストライブ会場にて限定販売され、その翌日に配信された彼らのラストシングル。バンドの解散発表ののちに制作された、ラストライブと同名のタイトル曲1曲入り。その言葉通り彼らの活動に終止符を打つ意味を持つせいか、当然のように重い。霧の中を虚ろに彷徨うようなおぼろげな歌い出しを経て、堰を切ったように一気に轟音で溢れていく導入部からして圧倒的な切迫感。悲壮的な音色のシンセと怒りや絶望が込められたようなドス黒いヘヴィネス、そして希望の無さを強調する歌詞の合わせ技は、後ろ向きなエネルギーに満ちていた彼らの最終作「鵺 -chimera-」の延長──と言うよりも終着。ピアノの独奏から再び激情のレッドゾーンへ突入していく中間部といい、「またどこかで会えるといいな/ありがとう」の最後の絞り出すような歌い終わりを引き金に、バンドが引き裂かれ崩壊していく様を表現したかのように、ひたすら音塊が狂ったように叩きつけられる圧巻と混沌のラストへ繋がる展開といい、歌詞だけでなく、5分50秒の中で目まぐるしく移り変わる曲展開まで含めすべてにメッセージが込められているかのよう。サビの歌だけならドラマチックな直球バラードにも取れるところなんかは彼ららしくもあるけど、嘘でもハッピーな曲で終わるということはせず、とことんまでリアルを曝け出し形にしてしまうバカ正直さもやっぱり彼ららしい。 "渾身" というよりは "執念" の一曲、という感じ。余談だけど、歌詞の中に「終わりと未来」(彼らの初期の代表曲のタイトル)という単語を忍ばせているのがファンには泣ける。今までありがとうギルガメッシュ。 

 

 

柚子乃 / Hi-Black

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  I've所属(当時)ボーカリストのミニアルバム(2013年)。

 

 コミックマーケット85にて限定販売されたCDで、同年にI'veボーカリストデビューを果たした柚子乃の初作品。I'veにおいて新人・単身のアルバムリリースは(確か)相当久しぶりになるので、当時の注目度も高かったと思います。初っ端のタイトル曲「Hi-Black」からして、四つ打ちを基調としながらも、いかにもI'veらしく激しく入り組んだリズムトラックと硬質なサウンドがいきなり格好良い。この曲の音だけとればポストMELLといった感じだけど、「私は何にも染まらない」と高らかに宣言する詞作や、癖のついた挑発的な歌い方がとても様になっていて、全く呑まれることなく見事に着こなしています。続くピアノ+ドラムステップで軽快にぶっ飛ばす「In the mirror」、打って変わって80's歌謡ロックを思わせるバンドモノ「Love me…」と、楽曲のタイプは少しずつ違えど全体的にはエレキギターが多用されロック色が強めという作風は一貫しており、不敵に歌う彼女のキャラクターとの相性も良く、MELLとも川田まみとも異なる方向性でひとつの像を結ぶに至っています。バンド活動の出身(というか兼任)もあってそういうのが好きなんだろうし、自信に満ちて伸び伸びと得意分野を発揮している感じが聴いていて気持ちいいですね。個人的にもかなり好みでキター!って感じだったし、彼女は将来的にI'veの次代の看板歌手になっていくんだろうという期待感も十分得られるものでした(過去形)。

 

Ministry / Early Trax

Early Trax

Early Trax

 

 US出身のAl Jourgensenを中心としたインダストリアルバンドの編集盤。

 

 サイドプロジェクト集「Side Trax」等と同時発売されたコンピレーション盤で、彼らの初期の12インチシングルや未発表曲をまとめたレア曲集。似たようなコンセプトの「Twelve Inch Singles (1981-1984)」という作品も古くからリリースされているけど、こちらがほぼ上位互換なのと、「Side Trax」と合わせて揃えると気分が良い(何だそれ)ということでこちらを選択。収録曲は、1st~2ndアルバムをリリースする間、Wax Trax! Recordsに在籍していた時期のもので(だから「Trax」?)、作風的にも当時の過渡期を思わせるもの。最初期の音楽性であるエレポップの香りを濃く残しつつも、リズムトラックは忙しなくビシバシと強烈に決まりまくり。同じ曲のリミックスだとより顕著にリズムが強化されインダストリアル要素が強まるし、未発表曲「He's Angry」「Move」ではノイジーなギミックも交えてガスガス・バキバキと常時鳴りまくりで更に攻撃性と不気味さを増大させており、大名盤「Twitch」への布石が感じられます。というかそもそも「All Day」は「Twitch」に(魔改造されて)収録されているし当然なのかな。そういう意味では興味深くも期待通りでもあるけど、1981年前後の音源であるラスト2曲「I'm Falling」「Overkill」は、なんと同時代性の強いポストパンクでビックリ!Joy Divisionかと思った。メタルなMinistryもいいけど、こういうMinistryも掘り下げるのは楽しいものです。