MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Celldweller / Wish Upon A Blackstar

Wish Upon a Blackstar

Wish Upon a Blackstar

 

 US出身のKlaytonによるエレクトロニックロック/インダストリアルロックプロジェクトの2ndアルバム。

 

 間違いなく名盤と言って差し支えない1stアルバム以降、企画盤やリミックス等の活動はありつつも、完全新作に関しては制作が大幅に遅れていた模様。そこで2009年に5つの章立てでの構想を発表。新曲2曲のパッケージを順番に配信し、やがて1つの作品が形になるという流れ。そんな大がかりな展開の末に、結果1stから約9年振りという期間を置いて最終的に完成した本作は、募りまくった期待を上回り、上がりまくったハードルを軽く飛び越える程の大傑作となりました。ボーカルを軸に作られたというだけあって、とにかく全体に一貫しているのは、この上なくメロディアスでキャッチーなボーカル。そしてそれを引き立たせ、一級のオーバーグラウンドミュージックとして十二分に生かすアレンジ。ダンス/トランス/ダブステップ/ドラムステップ/インダストリアルロックなどを縦横無尽かつ軽快に行き交い、1曲単位ではもちろん全体で盛り上げる流れも含め、とにかく「格好良く」聴かせることに真っ向から挑み、全力で心を砕いたかのようだし、それが完璧なまでに成功しています。こりゃ凄い。前作に残っていた前身のCircle Of Dust時代の無機質さやラウドさはほぼ無くなり、今思うとここからCelldwellerとしての本質や属人性が本格的に奔出し始めている感も。特に先行配信された楽曲や、過去にβ版で発表済みの「Birthright」の本テイク等は流石に抜群にクオリティが高く、エレクトロからヘヴィなロックまであらゆる愛好家に全力でお勧めできます。まさにエレクトロニックロックのネクストレベル! 

 


D'espairsRay / MIRROR

MIRROR

MIRROR

 

  4人組ヴィジュアル系ロックバンドの2ndアルバム。

 

 前年にはヨーロッパ最大のメタルフェスであるWacken Open Airへの出演や、1万5千人を動員した欧米ツアーなど、海外での精力的な活動を展開。そういった収穫を落とし込んだのか、はたまたいよいよ日本でも本格的に売りに入るぞ、という意図があったのかは知らないけど、全体的にはかなり聴きやすさが強化されたような印象を受けます。ヘヴィな音像とダークな雰囲気という軸はそのままに、より歌やメロディを重視した楽曲に、そしてそれに見合ったアレンジへシフト。シャッフルの「SIXty∞NINe」、いかにもシングル曲というキャッチーさがある「凍える夜に咲いた花」、大陸的なミドルバラード「Squall」など個性の冴えた楽曲が並ぶ様は、密室的/閉鎖的なムードでガチガチに統一されていた過去の作風には全く無かった解放感や風通しの良さがあります。彼らの確かな地力もあり、王道ヴィジュアル系へヴィロックとして純粋に格好いい。ただ、本作でもシンセやプログラミングを取り入れてはいるけど、結成以来の音楽性の集大成であり、ゴシック/インダストリアルメタルとしても完成度の高かった前作と本作とではハッキリと線が引かれた感じはありますね。聴き手の好みでどちらを支持するかは変わって来そうだけど、彼らのターニングポイントとしては申し分ないでしょう。

 

I've / master groove circle 2

master groove circle2

master groove circle2

 

  北海道に拠点を置き、アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームのリミックスアルバム第2弾。

 

 第1弾同様、トランス/エレクトロニカ界のクリエイターとコラボレーション。お馴染みのG・M・S、SINE6、Eat Static、Juno Reactorらの中に、今回は元SOFT BALLETでありminus(-)始動前の森岡賢も名を連ねています。当時のMELLのライブにゲストサポートで参加した縁かと(MELLがファンだったらしい)。彼が手がけた「SCOPE [Ken Morioka remix]」は何だかファジーなアンビエントポップで、ソフバで言えば「FORMS」を思わせる?悪くないけど1曲で捉えるとどうにも地味。特に印象に残ったのはI've中1、2を争うダークインダストリアルな原曲を大胆にミニマルなダンストラックに塗り替えた「Collective [Ben Watkins: JUNO REACTOR remix]」、TMリスペクト全開の原曲をMELLのコーラスを軸に中期KMFDMのようなインダストリアルダンスに作り変えた「DETECT [MAZDA a.k.a. SINE6 remix]」あたり。他にも詩月カオリテクノポップアレンジや、Eric Mouquet(Deep Forest)×島みやえい子の相性抜群コンビによるプログレッシブな世界観の打ち出し方も前作同様とても良かった。しかし他のトランスリミックスはさすがに耳タコ気味。サラッと聴き通す感じで。ちなみにラストの「Mirage」はI'veの中心作家2名によるHARD STUFF名義でのオリジナル曲。ファンなら押さえておきたいところ。

 

American Head Charge "The War Of Art"

War of Art

War of Art

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 アメリカ/ミネソタ出身のニューメタル/インダストリアルメタルバンドの2ndアルバム(2001年)。

 

 Slipknotの来日公演の前座も務めたバンド。複数人が担当するギターやキーボード、そこに加わるサンプリングやプログラミングなど、7人編成という特色を生かした厚みのあるサウンドと、そこに絡むシャウトやラップボーカル等で前のめりな激しさを演出。大所帯であることや、Rick Rubinプロデュースという点からはSlipknotと共通点があるし、のっぺりとしたサビのメロディは何となくFear Factoryっぽくもあり。一応インダストリアルメタルにも分類されるようだけど、機械や電気を駆使したインダストリアル色はあまりなし。しかし、キメとタメを強調して一音一音をゆっくり叩きつけるように、かつ複雑に刻まれるリフだったり、1曲の中で極端に強弱をチェンジする場面も多く、曲間の繋ぎにも意味を持たせたりと、とにかく楽曲の作りが凝られている印象。インディーズ作である1stアルバムと収録曲の多くが被っていることから、本作が彼らの実質的な一作目とも位置づけられそうだけど、全16曲68分超というボリュームと相まって単調に、そして文字通り「重たく」感じます。聴くのに疲れる。良く言えば要素が盛り沢山とも言えるけど、最終的には何がやりたいのかもうちょっと定めて欲しかった。

 

ROSEN KREUZ / THE CRACK EDGE MONSTERS' MOVIE SIMULATION RAPE OF FRENCH CULT

 後にDEF.MASTERで活躍するベーシストYU-MIが、DEF.MASTER以前に在籍していたゴシック/インダストリアルバンドの2ndアルバム。

 

 まずアルバム名の長さに面食らいますね。サブタイトルではなくまとめて正式タイトルのはず。そして曲名も同様に長く、1曲目が「LOUD SONIC CHAIN SAW YOUR MACHINE, EXTACY」。意味がよく分からないけど、その響きだけで何だか最高じゃないですか?そして名は体を表すとでも言うべきか、高速で繰り出されるスラッシュギター&デジタルシンセが融合したリフ、チェーンソーやらドリルのような機械音のサンプリングが渾然一体となって襲ってくるという、まるでMinistryの同時代の代表曲「Thieves」や「Burning Inside」を彷彿とさせる迫力と禍々しさ。エレクトロニックを中心に置いた曲、逆にジャパメタな曲もあるけど、特にハイスピードな曲の破壊力やサウンドの有りようは、彼らが強い影響を受けたであろうMinistryがスラッシュメタルを取り入れて行った変遷が重なるし、彼らの出自でもあるゴシック/ポジティブパンクの空気感も相まって、とても強い衝撃を生んでいます。当時としてもかなりぶっ飛んだ音だったと思うけど(ライブではもっと激しかったいう逸話も)今の時代に改めて聴いても打ちのめされるものがあります。日本のインダストリアル(ロック)の数少ない、そして間違いなくマストな一枚。