MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

KOTOKO / KOTOKO ANIME'S COMPILATION BEST

ANIME'S COMPILATION BEST<通常盤>

ANIME'S COMPILATION BEST<通常盤>

 

  I've専属(当時)ボーカリスト/シンガーソングライターの編集盤。

 

 一応はKOTOKOのメジャーデビュー5周年を記念した、初の(そして現在においても唯一の)ベストアルバムということになっているけど、実際のところはアニメタイアップのついたシングルA面曲を収録したコンピレーション。なので、一部ではあるけど収録されていないシングル曲もあるし、アニメタイアップのついた非シングルの名曲(「Suppuration -core-」など)も当然収録されていない。本当に作品タイトル以外の何物でもないというか。もっと言うと、メジャーデビュー前にI'veで歌っていた楽曲も当然選曲対象外で、名バラード、電波ソング、マニアックなインダストリアル系の楽曲などを器用に歌いこなすKOTOKOのゼネラリスト的な魅力は本作では一切伝わらないのが、古参のファンにはちょっともどかしいかも。まぁI've初期からの膨大なアーカイブからメジャー後までを含め、彼女の多面的な表情や実力を網羅するようなベスト盤を作ろうとしたら、この時点でもディスク3枚組になりそうなくらいなので、あくまでも本作はアニメを通した新規リスナーの門戸として、また従来ファンにとってはアルバム未収録の一部シングル曲を回収するアイテムとして割り切ると吉。「Re-sublimity」「Face of Fact」「being」などは文句なしに彼女の代表曲ですしね。

 

girugamesh / GO

GO

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 4人組ロックバンドの5thアルバム(2011年)。

 

 再生すると、清涼飲料水のCMソングかと聴き紛わんばかりのウルトラ爽やかなラブソングが入れ代わり立ち代わり流れてきて脱力。初めて聴いたときは開いた口が塞がりませんでした。形は悪くない出来だけど、これまでの音楽性を考えると「これを彼らがやる意味はどこに?」と腑に落ちない感情に包まれること必至。前作「NOW」でもかなりポップ化は進んでいたのに、それを超えてくるという。好みにもよるけど、多くのファンにとってはダメなポップ化の見本みたいに映りそう。実際、本作発表時は「自分たちの音楽をお茶の間に届けたかった」とのことだったけど、ずっと後に「当時は事務所に言われるがままだった」と種明かし。そして本作リリース後に解散寸前の活動休止…と、バンドが明らかに大きく迷走していたこの時期を象徴するような迷作となりました。ヘヴィなダンスロック「MISSION CODE」、ウェディングパンク(何だそれ)「Never ending story」というライブで定番化した名曲という救いもあるけど、後のベスト盤に強化され収録されたので、今手に取る場合の本作の価値はと言うと…個人的には哀愁の表現が秀でているラスト曲の「イノチノキ」くらい。ちなみに初回盤は丸々1枚のライブ盤や内容色々のDVDが付いてお得。ファンへの埋め合わせってのは考えすぎか。あるいは怖いもの見たさ的に聴いてみるのも一興かも。

 

Delerium / Poem

Poem

Poem

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 Front Line Assemblyのメンバーを中心としたエレクトロニカ/アンビエントプロジェクトの10thアルバム(2001年)。

 

 プロジェクト発足以来ずっと関わっていたもう一人のプロデューサー・Rhys Fulberが(一時的に)離脱し、そこに同時期にBill ReebとFLAでの活動を共にしたChris Petersonが合流し制作にあたった作品。音楽性と表現において早くも一つの到達点に達したとも言える前作からの延長を目指したような佇まいで、延長と言っても更に同じ方向を究める…というよりも、歌モノの楽曲の強化を優先しながら、より親しみやすく聴きやすいものを目指したような印象。明らかに女性ボーカルメインの楽曲の比率や存在感が強まり、それも口ずさめるような歌メロと、それを生かすことを前提にした分かりやすく耳を引くアレンジの合わせ技で、聴く者の心を貪欲に掴みにかかります。前年に、前作収録の「Silence」(のリミックス)が各地で注目を集め、賞を受賞するなどの成功があり、その影響があったのか、それとも既定路線だったのかは定かではないけれど、新しい層の開拓向けとしては確かにこちらに軍配が上がるかも。キャッチーさを増したと言っても一切安っぽくなっておらず、アコギの滑らかなフレーズや躍動的なアップビートなどが増えても全体の透明感を保った民族音楽調の幻想性は据え置きだし、「Innocente」を歌うLeigh Nashの素朴な歌声や、「Fallen Icons」の儚さ爆発(何だそれ)メロディなどは実に素晴らしいフック。次作はよりポップスに接近するので今となっては橋渡し的なアルバムなれど、決して捨て置けない傑作。

 

Der Eisenrost / ARMORED WEAPON

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  かつてZEITLICH VERGELTERで活躍した映画音楽家/メタルパーカッショニスト・石川忠を中心としたメタルパーカッションユニットのアルバム。

 

 映画監督・塚本晋也の映画「鉄男」等のサウンドトラックを担当した石川忠を中心に、塚本監督の助監督だった川原伸一、EBMユニット・C.H.C. Systemの関伸一らが加わり、「鉄男」の世界観をライブで再現することを目的に結成されたというユニット。2作のアルバムを発表しており、こちらは「LIVE DOCUMENTS '93-'94」というサブタイトルにもある通り、主にライブ音源で構成されています。初期のTest Dept.を彷彿とさせる、正しく金属音をフィーチャーしたザ・インダストリアルなサウンドは、石川忠名義のサントラ音楽に比べるとかなりプリミティブで刺激的。唸りを上げるボーカル、荒々しい演奏に覆い被さるドリル音、耳に刺さるようなノイズと化したメタルパーカッションの激しい連打やユニゾンなど、どれもおどろおどろしく生々しい迫力。メタルパーカッションを叩く強弱すらも手に取るように聴こえてライブの臨場感も抜群だし、狂気的であろう画も浮かび上がるかのよう。終盤の2曲はスタジオ録音の楽曲で、インダストリアルノイズメタルとでも言えそうな鋭利な音の洪水が圧巻。本ユニット以外でも様々な音楽活動で多大な功績を残した石川忠は、2018年に向けて新たな音楽活動の準備を進めていたとのことだけど、同時に闘病で入退院を繰り返す生活だったらしく、残念ながら2017年末にお亡くなりになったそうです。ご冥福をお祈りします。