MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

I've "SHORT CIRCUIT II"

I ve SHORT CIRCUIT III

I ve SHORT CIRCUIT III

  • アーティスト:I’ve
  • I've
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 北海道に拠点を置き、アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによる電波ソング集(コンセプトアルバム)2作目(2007年)。

 

 「電波(デジ)革命音戦士 第II章!!!」を掲げた電波ソングアルバム第2弾。衝撃の第1弾から4年余り、すっかり市民権を得た電波ソングではあるものの、ある程度できた免疫を塗り替えられるような破壊力が素晴らしい。核となる歌手のKOTOKOがメジャーデビューし脂が乗っていた時期ながらも、電波ソングの仕事も手を緩めず、むしろ歌唱にも作詞にも大車輪の活躍。「可愛さあまって(もう、うきうっき~☆)」「はい!コネこねこね☆ぱったん!1,2,3で~冷やして♪」「負けないでGO☆女は度胸!言っちゃうゼ~~~!!」どうでしょう、どうでしょうこれ(笑)。合いの手や萌え台詞を詰め込んでオタクの妄想を具現化したような歌詞は相変わらずギリギリアウトだし、前作にあった詩月カオリのボーカルデビュー曲のようなブレイクタイム的な曲もほとんどなく、楽曲の充実や勢いは前作を凌ぎ、書き下ろしの新曲もいい感じ壊れていて、印象としてはますますKOTOKO無双──もはや敵なしといった感じ。というかミニマル&ミニマムなエレクトロビートに早口ボーカルが乗る「Princess Bride!」、ロックなサウンドに勇ましい冒険譚の詞が映える「Princess Brave!」というインパクト/存在感ともに突出したBraveシリーズの両曲が収録という時点で、勝ちが約束されたアルバムと言ってもいいでしょう、うん。

 

KOTOKO / UZU-MAKI

UZU-MAKI(初回限定盤)(DVD付)

UZU-MAKI(初回限定盤)(DVD付)

 

  I've専属(当時)ボーカリスト/シンガーソングライターの3rdアルバム。

 

 自身が初挑戦の油絵で描いたという渦巻きのジャケットが目を惹きます。この濁ったイラストが象徴するのは見た目そのまま「混沌」で、明るい曲や暗い曲を極端に行き来し、色んな表情を見せる彼女のごった煮状態な作風を表しているようです。本作は基本的には開放的な曲で構成された前作を引き継ぐ方向性ながらも、まんまKMFDMリスペクトなメタルリフから始まるインダストリアルなタイトル曲「UZU-MAKI」から始まり、自身最高のヒットシングルとなった伸びやかなメロディの名曲「being」へ徐々に盛り上げ、初期I'veっぽいリミックス曲で締めるという曲ごとのカラーや流れの良さが明快で、渦巻いている…という程ではないにしても、良いとこどりが出来ている感じ。過去のタイアップ曲や電波ソングなどに比べたらやはり全体的に少々地味めではあるけど、それは彼女がソロアルバムではそういった大衆的なイメージとは異なる「素の自分」を意図的に表現しているからでもあり、その追及も一旦ここで終わるので、彼女のキャリアにおいては一種の区切りとなった作品とも言えそうです。

 


Kotoko Being

D'espairsRay / BORN

BORN

BORN

 

 4人組ヴィジュアル系ロックバンドのミニアルバム。

 

  「ダークと破壊」をテーマに掲げるバンドで、ゴシック&ヘヴィなサウンドにシャウトを織り交ぜる力強いボーカルが持ち味。ミニアルバムとしては多分2作目になり、内容は新曲2曲+リメイク3曲という構成。これより過去にリリースされた音源の多くの曲では、表現したい世界に実力や手法が追いついていなかったり、恨み節のようなボーカルも含め妙にゴテゴテした聴きづらさがあったりと、所謂「DIR EN GREY以降」でしかなかったけど、本作では出来の良い楽曲がピンポイントで選出されたことも含め、そのあたりが幾分解消され過去最高の出来だし、更なる飛躍を見せる次作フルアルバムへの良い橋渡しになっています。民族調の楽器、シンセ、鐘の音、そしてLUNA SEASUGIZOが演奏したバイオリンなどを用いた良い意味での"異物感が混ざるヘヴィロック"は、まだまだインダストリアルと呼べる領域ではないにしても、光るものを感じさせるし、好きだ。ただ、中盤の曲にまたがる演劇的な台詞は、B級ホラー臭さがバンドの進む方向性に合わず蛇足だと思うので、思い切ってカットして欲しかった。

 

島みやえい子 / O

First Full Album O[オー](初回限定盤)(DVD付)

First Full Album O[オー](初回限定盤)(DVD付)

 

  I've専属(当時)ボーカリスト/シンガーソングライターの1stアルバム。

 

 満を持した1stフルアルバムにして、この堂々たる風格と完成度。他の専属歌手とはアーティストとしてのスタートラインが違うとはいえ、I'veサウンドと二人三脚で方向性を模索する地点をとうに過ぎ去り、島みやえい子という存在を何の迷いも衒いもなく強固に根を下ろすことに成功しています。多様なコーラスや民族楽器を用いて陰と陽を行き交うオリエンタルなシンセポップは、メジャーデビュー作でありながら以降の彼女の形の完成を早くも見せた「ULYSSES」から一切のブレがなく、更に大陸的な詞世界と噛み合って深みとスケールを増大。過去曲の再収録/リミックスを含むほとんどの曲は5分半~6分超のミディアム~スローというラインナップながら、耳への重たさもなくどんどん引き込まれてしまいます。唯一のアニメタイアップ曲「ひぐらしのなく頃に」におけるダークなインダストリアルのアプローチも秀逸。この作品はアニソンに分類されるだろうけど、決してアニソン然としてはいない。かといって一般的なI'veサウンドのイメージを踏襲したような曲も少ない。しかし一人の女性アーティストとして別格の存在感を放つ、非常に稀有な作品だと思います。あえて不満を挙げるなら、ジャケットが少し怖いところか(笑)。

 

Crash / The Massive Crush

The Massive Crush

The Massive Crush

 

 韓国出身のスラッシュメタルバンドの5thアルバム。

 

 前作で派手にサンプリング等を導入しインダストリアルメタル化した彼ら。しかし本作ではそういった息吹は大部分で一掃。エレクトロニックなエレメントは楽曲の一部で思い出したように少し感じ取れるくらいで、基本線を本来のスラッシュメタルに軌道修正しています。ならばインダストリアルメタル化する前の3rdアルバムの頃に戻ったのかと言うと単純にそうでもなく、1曲の展開が込み入る傾向にあった3rdに比べると、かなりスピードを重視したスラッシーな楽曲の連打が爽快の一言で、まるで生音Ministry。インダストリアル化はあくまで寄り道、もう吹っ切れたぜ!と言わんばかりの姿勢だし、実際のところ彼らは次作から完全にその要素を無くしているようです。アルバムの完成度そのものは間違いないけど、終盤のギターインスト以降にボーナストラック的に収録された楽曲が、ラップを導入したClawfingerばりのカバー曲「니가 진짜로 원하는게 뭐야」を筆頭に、どれも前作の成果をつぎ込んだかのようなインダストリアルメタルでかなり良かっただけに、こういう路線ももっと聴いてみたかった…とちょっぴり複雑だったり。