MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Nine Inch Nails / Year Zero

Year Zero

Year Zero

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  US出身のTrent Reznorを中心としたインダストリアルロックバンドの5thアルバム。

 

 すっかり寡作の大物というイメージがついていた当時の彼らにしては、約2年振りという比較的速いスピードでのリリースとなった本作。詳しくは知らないけど、終焉した近未来を描くことで(当時の)米国政府を批判するというコンセプトがあり、アルバム以外でも色々な仕掛けを施した一大プロジェクトだった模様。過去を清算したお陰か速やかに伝えたいメッセージがあったからか、いずれにせよ創作意欲に溢れていたのは良いことだと思います。その作風は前作の比較的ストレートなバンド路線を踏襲することなく、全面的に打ち込みのサウンドへ移行。ただし90年代インダストリアルロックへの回帰では全くなく、尖りに尖ったエレクトロニックやノイズを駆使して骨組み重視で構築された新境地といった感じで、巧みを凝らしたリズムトラックやビープな電子音やキリキリと鳴らされるノイズが抑揚をつけながら入り乱れる様は、狂気や暗黒美というよりは純粋な音楽的欲求や実験から生まれたような風通しの良さが感じられます。分かりやすいキャッチーな曲があまり無いことや、全体的にコンピュータ制御されたような無機質な作りは好みを分けそうだけど、根幹の部分はあくまできっちりポップに作られているし、やはり唯一無二の存在感は健在。そしてNine Inch Nailsらしさを失わないまま新しいものを生み出そうとする姿勢は素晴らしいと思います。個人的には結構好き。

 

Numb / Death On The Installment Plan

Death on the Installment Plan

Death on the Installment Plan

 

 カナダ出身のエレクトロインダストリアル/EBMユニットの3rdアルバム。

 

 もともと彼らが持っていた強烈なノイズを絡めたEBMとしての特質的な個性が研ぎ澄まされ、楽曲の完成度が格段に向上。楽曲単位でもアルバム全体の流れとしても緩急の付け方/見せ方がより鮮烈になり、先の読めない曲展開で聴き手の興味を引き寄せながら、大胆なノイズ/サンプリングが幾重にも応酬する作品の奥深くへ引きずり込んでいきます。ノイズの使い方も電気加工され、インダストリアル然とした独特の心地悪さを纏っていて、ダークアンビエント的な表現も荒廃/暴力的なパワーに溢れていて聴き惚れてしまいます。最初に聴いたときの第一印象は「まるで騙し絵を見ているよう」でした。それくらい異形で狂気的。Skinny Puppyの影響を多分に感じさせつつ、Nitzer Ebbのビート感やMinistryにも通じるパワーすら感じさせる面もありながら、それが決して凡庸なフォロワーとしてではなく、とても鋭く磨き抜かれた一つの個性として存在することが驚嘆の一言。彼らがどれくらいの評価や知名度を得ているかはよく知らないけど、この作品は90年代インダストリアルの名盤に数えられてもおかしくない傑作だと思います。

 

Assemblage 23 / Storm

Storm

Storm

 

 US出身のTom Shearによるフューチャーポッププロジェクトの4thアルバム。

 

 前作から頭角を現し始めた彼が、今作で一気にフューチャーポップ界のトップに躍り出たとされる傑作。まず見違えるくらいに鮮やかになったシンセとその上物が鮮烈で、その音色の透明感・メロディの素晴らしさで全体の印象の8割を占めるんじゃないかと思うほど。まるで鳥瞰や空撮の映像を想起させるような、とても自由で済み切った世界が広がるかのよう。地味に徹するボーカルとの対比もある意味良いバランスで、歌のサビとイントロや裏メロのフレーズのどちらが主役なのか分からないくらい。そして中途半端にスローナンバーを差し込んでいた前作までと違い、ほぼ前編に渡ってスピード感のあるダンスビートと彼の特徴的強みでもある高速ハイハットが組み合わさったリズムトラックに乗せられているので、体感速度も速くとてもテンポ良く爽快に聴ける。反面やや単調という見方もあるかも知れないけど、ここまで究めればそれだけで十分な完成度とアイデンティティを生み出していると個人的には思います。Apoptygma Berzerkにも同じことを思ったけど、シンプルに聴かせる明るいフューチャーポップは、メロディの流れや音色の美しさでインパクトを出せれば勝ちだなと。そしてその到達点の一つがこの作品じゃないかなと。

 

Cyberaktif / Tenebrae Vision

Tenebrae Vision by Cyberaktif (1993-04-08) 【並行輸入品】

Tenebrae Vision by Cyberaktif (1993-04-08) 【並行輸入品】

 

 Skinny PuppyのCevin Key、Front Line AssemblyのBill Leebらによるコラボレーションユニットのアルバム(1991年)。

 

インダストリアル/EBM界で名を馳せている二大巨頭の中心メンバーだけでなく、更にEinstürzende NeubautenのBlixa Bargeldも制作に関わっており、なんとも豪華なメンバーがクレジットされた作品。通常ならさぞかし期待してしまうところだけど、蓋を開けてみるとあんまり面白くない。音づかいは所々確かに痺れるものはあるし、初期Nitzer EbbSkinny Puppyといった趣の「Brain Dead Decision」は結構気に入ったけど、トータルではダラダラとした聴き心地で、淡々としすぎたハンマービート/ボディビート・空を切るサンプリング・盛り上がりに欠けるボーカルの組み合わせで刺激に欠け、元ユニットの雰囲気は端々に感じられるけどその良さはすっかりスポイルされており、何だか中途半端でよく分からない仕上がり。実はこのアルバム、昔インターネット上で見た「EBM/Industrialのスーパーグループはハズレばかり」という定説の代表作だという酷評で存在を知ったもの。故に管理人はそれを確認しつつ怖いもの見たさ的な動機も合わせて聴いてみたわけですが(つまり自業自得)、期待が大きかった人にとってはなるほどそうかも知れないなと納得してしまいました。ゆえにやはりというか、あまりお勧めはできません。