MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Front Line Assembly / Reclamation

Reclamation

Reclamation

 

 カナダ出身のインダストリアル/EBMユニットの編集盤(1997年)。

 

 内容は1988~1995年にリリースされたシングル曲を中心にまとめたもの。実は何気にメタル系の一大レーベル・Roadrunner Recordsからのリリース。密かに(?)在籍歴があったりするんですね。時期としてはFront Line Assembly(以下:FLA)の音楽性がちょうど確立/発展していた頃とも言えるので、良く言えばその古き良きサイバー感満載のEBMの移り変わりを楽しめる作品。特に5thアルバム「Caustic Grip」期の3~5曲目の並びはとりわけ楽曲の完成度も抜きんでていて、アルバム未収録のミニマル&ハイスパートな「Virus (Hybrid Mix)」や、FLAでもトップクラスの名曲「Provision」の並びはたまらないですね。個人的にも、EBMという音楽ジャンルを聴き始めの頃に衝撃を受けた思い入れの強い楽曲だったりします。初期の名曲「Mindphaser」も要チェックだし、「Millennium (Ashes To Ashes Mix)」は、アルバムに収録されたものよりギターが抑えめな分だけ浮遊感たっぷりで、聴き比べるのも面白い。B面収録曲を並べた部分はどうしても地味になるけど、通して聴くとなかなか満足度は高いです。彼らを好きなら間違いないアルバム。

 

Throbbing Gristle / The Second Annual Report

The Second Annual Report Of Throbbing Gristle

The Second Annual Report Of Throbbing Gristle

 

 インダストリアルミュージックの始祖とされるUK出身の前衛音楽バンドの1stアルバム(1977年)。

 

 もともとCoum Transmissionというアートパフォーマンス活動を行っていた集団が、より音楽的な要素を追求しThrobbing Gristleが誕生。その名もずばりIndustrial Recordsを設立し「Music From The Death Factory」「Industrial Music For Industrial People」といった最早語り草ともなっているスローガンを掲げたこの1stアルバムが発表され、ここからインダストリアルミュージックという定義が確立されたとも言われています。ちなみに1作目なのにタイトルがSecondなのは、これ以前にカセットテープで作品を発表しているからだとか。その内容は前半が主に2つの曲のスタジオ音源&ライブ音源、後半にCoum Transmission時代の映像作品のサウンドトラック音源+α。どこをとっても澱み濁った電子ノイズが派生しては収束していき、電気加工されたボーカルが淡々と言葉を発するという、悪い夢のような音世界。激しいノイズの応酬やメタルパーカッションなどの(この手のジャンルの)分かりやすい音楽の骨格もまだここにはなく、じわじわと聴き手を蝕むような静けさ、重さ、気味の悪さだけが襲いかかってきます。あまり精神衛生上よろしくない音楽な気もしますが(?)バンドや作品の背景を込みで歴史的資料としてみても興味深く、トータルの活動からみたらこのアルバムはあくまで彼らの放つメッセージの一部であっても、触れておかない手はないでしょう。楽しめるかどうかは別として。

 

Jerk / When Pure Is Defiled

When Pure Is Defiled

When Pure Is Defiled

 

 オーストラリア出身のインダストリアルメタルバンドの1stアルバム。

 

 詳しくは知らないけど、彼らはMarilyn MansonDisturbedなどのツアーサポートも務めた経験があるそう。本作のプロデューサーも、かつてNine Inch NailsMarilyn Mansonの制作に関わった人物。そんなわけで、音の方も期待通りのMarilyn Mansonっぽさが散見されるインダストリアルメタルですね。というより当時割と多かったMarilyn Mansonに影響を受けたであろうインダストリアルメタルやインダストリアルロックバンドの、更にまたその影響下というか系譜にあるような感じで、例えばDopeやOrgyなどに近いものがあります。ユニゾンのリフを前面に生かしたニューメタルのバンドサウンドの隙間をエレクトロニックで効果的に埋め、ボーカルのメロディアスなシャウトとともに叩きつけてくるような、とても分かりやすく気持ちのいいサウンド。完成度は高めだけどありがちなタイプであり一本調子でもあるので、もう一つなにか工夫が欲しかったかなと。彼らは1作限りで解散し、2013年に一瞬だけ再結成。しかし次回作はどうやらなさそう。

 

島みやえい子 / Endless Loop

Endless Loop<初回限定盤>(DVD付)

Endless Loop<初回限定盤>(DVD付)

 

 I've専属(当時)ボーカリスト/シンガーソングライターの2ndミニアルバム。

 

 コミックマーケット限定発売CD「Ozone」の表題曲や、I'veブランドでPCゲームへ提供した楽曲「Automaton」が収録された全6曲で、確固たる世界を提示した1作目を補完するような小品とも言えそう。ちなみに後の1stフルアルバム「O」にリミックス版が収録された「求道の人」の原曲はここが初出。飾り気なく民族調な空気感だけで進行するスタイルがいかにもえい子先生らしい。そして他にはジャズピアノとバイオリンをバックにしっとりと聴かせる「MAY」も異色で良いアクセント。この作品が当時どういう位置づけだったのかは知らないけど、I've内外のアレンジャーが結果として半々の割合の起用になったこともあってか、前作「ULYSSES」のような一枚を通した完成度の素晴らしさとはまた別の形で「シンガーソングライター・島みやえい子」の可能性や魅力が感じられる一作だと思います。とは言え、彼女の作品群の中では入手優先度は低めか。

 

Razed In Black / Damaged

Damaged

Damaged

 

 US出身のRomell Regulacionを中心としたインダストリアルロックプロジェクトの3rdアルバム。

 

 前作まではテクノ/トランス/ガバといった音楽性をベースにメタルギターを派手に取り入れたような趣だったけど、今作ではフューチャーポップのスタイルを貪欲に取り入れています。曲によってはまだまだギターも前面に出ているけど、全体的な音像はこれまでよりも絞られ、一皮むけたメランコリックなメロディを華やかなシンセが彩り、小技の効いたサンプリングが支え、足早なダンスビートに乗せられるという図式がより明確に打ち出されていて、聴いた印象は格段に気持ち良くなりました。リリースを重ねるごとに少しずつ進化しつつ、自身の作品のみならず変名/別ユニットで数多のリミックスワークをこなしてきたその手腕と経験が還元され、ここでついに一つの完成形を迎えたと言えるのかも。インダストリアルロックからフューチャーポップへの橋渡しとしても実に優れているし、Nine Inch Nails、Celldweller、Apoptygma Berzerkなどが好きな人には特に相性が良さそうなメジャー感を備えているのも素晴らしく、それらビッグネームの人たちにも十分に渡り合えるクオリティはあるかと。中でも「Share This Poison」は必聴の名曲!ちなみにAssemblage 23やNeikka RPMらが参加したリミックス盤もセットになっています。