ヴィジュアル系とインダストリアルの接点

今回はインダストリアル(・ロック)とヴィジュアル系(以下V系)との接点についてを、あくまで個人的な見解で記してみようと思います。

まずどこからをV系とするのかが少々微妙ですが。というのも、先日紹介したRosen Kreuzは耽美系のメイクに黒服という出で立ちだし、トランス・レコードの面々にしても、後のV系バンドやシーンに与えた影響という観点から無関係とは言えないと思っているからです。

とりあえずその辺りを抜きにして、一般的に「V系」という呼称から連想されるような90年代以降のシーンの範囲で考えてみると、まず外せないのはBUCK-TICKでしょう。ギタリスト・今井寿の音楽的背景のひとつにインダストリアルがあり、初期から最近まで満遍なくその辺りへアプローチした楽曲が散見され ます。

中でも代表的なものは、ライブでも定番の名曲「ICONOCLASM」。

 

また1994年には、今井寿SOFT BALLET藤井麻輝・PIGことRaymond Wattsの3名によるインダストリアル・ユニットのSCHAFTを結成。制作されたアルバムはかなり興味深いものになりました。そしてその縁か今井はPIGの「Sinsation」にもギタリストとして一部楽曲に参加。そしてそれらの活動をBUCK-TICK本隊にフィードバックしたのか、彼らが1997年にリリースした「SEXY STREAM LINER」は、まる一枚インダストリアル方面へアプローチした意欲作となりました。

 

SWITCHBLADE

SWITCHBLADE

 

 

SINSATION

SINSATION

 

 

SEXY STREAM LINER

SEXY STREAM LINER

 

 

 次は、先ほども名前の挙がったSOFT BALLET藤井麻輝
彼がノイズマニアなのはファンには有名な話で、伝説的なノイズ/インダストリアルユニット・SPKの日本版BOXセットの解説を執筆しています。また、SOFT BALLETで彼が手がけた楽曲は、攻撃的なインダストリアル色やノイズを取り入れたものも少なくありません。しかし、ポップな聴き心地を忘れないのが藤井流。そういった姿勢は、その後のShe-Shellや睡蓮にいたっても一貫されています。

 

MILLION MIRRORS

MILLION MIRRORS

 

 

音ヲ孕ム

音ヲ孕ム

 

 

そして次は、L'Arc~en~Cielのドラマー・yukihiro
かつてOPTIC NERVEやDIE IN CRIESなどで打ち込みにも注力をしていた彼もまた、インダストリアルの素養のある人物の一人。ラルク加入後は、ラルクでも一部インダストリアル要素 の入った曲を手がけています(「a swell in the sun」、「get out from the shell」など)。ソロ活動バンドのacid androidでは割とストレートにインダストリアル・ロックを追及しているし、先述した藤井麻輝との繋がりもあり、対談やコラボレーションなども行っています。

 

The Best of L’Arc~en~Ciel c/w (通常盤)

The Best of L’Arc~en~Ciel c/w (通常盤)

 

 

acid android

acid android

 

 

あとは、なんといってもhide。
ソロ活動では、彼の幅広い創作意欲のままにいろんな音楽ジャンルへ手を出していたわけですが、やはりインダストリアルへのアプローチには力を入れていたと思います。「DOUBT」「FROZEN BUG」「Bacteria」「POSE」などはど真ん中。X JAPANに提供した楽曲でも、「DRAIN」は、少しインダストリアルテイストだったり。また、Ray McVeighやPaul Ravenと結成し、海外進出(制覇)を目論んだバンド・zilchでも、その音楽性の根幹の一つにはインダストリアル・メタルがありました。今も色あせない名作として必聴。

 

HIDE YOUR FACE

HIDE YOUR FACE

 

 

3・2・1

3・2・1

 

 

他にも細かく言えばたくさんあるんでしょうが、代表的な人物はひとまずこのあたりを抑えておけば間違いないかと。楽曲単位で言えばインダストリアルの影響を感じさせるものはもう少しありそうです。例えばLUNA SEAの「FACE TO FACE」とか。ただ、単純に打ち込みやデジタルサウンドを取り入れればインダストリアルというわけでもないので、例えば黒夢の「FAKE STAR」などは違うものにあたるでしょう。その辺の差を肌でわかるようになれば、色々と探しやすいかもしれません。

 

V系というのはインダストリアルの本来の意味や精神性とは当然無縁だし、決して近しい音楽ジャンルというわけでもないとは思いますが、古くはポジティブパンクやハードコアなどの先人バンドから脈々と続く系譜があり、最大のブームと同時代に海外でのインダストリアル・メタルの隆盛もあったりして、それらのアプローチを(うわべだけにしても)取り込むにあたり、非日常的な世界観、メイクやアジテーション・パフォーマンスなどのコンセプト、ダークで激しいロックサウンドといった要素が絡み合うフォーマットが相性が良かったのではないかと思います。


80年代・2000年代以降はまた違うものがあるのでしょうが、インダストリアルに興味のある(元)V系リスナーさんは、この辺から入ってみるのもいいかもです。