MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

川田まみ / SEED

SEED(通常盤)

SEED(通常盤)

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 I've専属ボーカリストによる1stアルバム。

 

 KOTOKOに続きI've専属歌手から2人目のメジャーデビューを果たし、順調にシングルリリースを重ねた末に完成した記念すべき初のソロアルバム。その楽曲の多くは、歌手としてだけでなく作詞家としての顔も持つ自身による作詞、I've作家陣でも川田まみを重点的に受け持った中沢伴行による作編曲/メインプロデュースという、彼女の音楽活動において最後まで貫いたフォーマットが既に確立。自身のターニングポイントと語る名曲「IMMORAL」をほぼ中心に配置し、アニメに提供したタイアップ曲を始め完成度の高い曲が並びます。しかし、どうしても地味な印象から逸脱できないミドルバラードの存在が全体の流れや勢いを削いでしまう側面も。この感じは初期のKOTOKOソロを思い起こさせるけど、元々彼女の歌声を「昔はKOTOKOに似ていた」と評していた作家陣による意図なのか、それとも川田まみという個性がまだ芽吹き切ってないが故の無難な落としどころなのか、いずれにせよ少々物足りなさを覚えます。後にアニソン歌手として大成する彼女のパブリックイメージを持ったまま振り返ると、やや大人しいというか、まさにタイトル通り成長途中というか、そういう風に映るアルバム。決して悪くはないですが。

 

The Berzerker / The Reawakening

Reawakening

Reawakening

 

 オーストラリア出身のデスメタル/インダストリアルメタルバンドの5thアルバム。

 

 ここまで所属していたグラインドコア系の老舗レーベル・Earache Recordsから離れ、Berzerker Industriesという自主レーベルからのリリースとなった彼らの最終作。環境の変化やアルバムタイトルから、再出発という意気込みがあったのではと予想されます。超ハイスピードかつ暴力的な打ち込みグラインドコアという根幹は昔から一貫していながら、近々の作品ではメタリックなバランスに傾いた分、初期にあったインダストリアルメタルやテクノの突然変異のようなインパクトも喪失しつつありました。しかし本作では高速早回しガバビートやサンプリングを巧みに使った機械的サウンドに回帰し、かと言って1stほどデタラメ過ぎず程よく洗練された楽曲群で、彼らにしかできないエクストリームミュージックを取り戻し強化。ドドドドカカカカと容赦なく攻め立てる圧巻のサウンドにひれ伏さずにいられません。自分たちの持ち味を見失わず駆け抜け、ここにきて最高傑作に迫る勢いの作品で最後を迎えた彼らは、解散が非常に惜しいバンドだったと思います。デジパック盤の終盤に収録されたリミックス群も必聴の出来。

 

SHIHO / Divarats

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  I've出身のボーカリストによるソロデビューミニアルバム(2005年)。

 

 ソロデビューと言ってもKOTOKO川田まみのようなI've作家陣とタッグを組んでのメジャーデビューとは違い、この時点でI'veを卒業し、自身の実弟であり作曲/プロデュースなどを担当する共同作業者の¥utakaと立ち上げたインディーズレーベル・STARAVIDからのリリース。ユーロビート的なダンスナンバーからI've直系のシンセポップ、果てはデジロックからR&Bまで、四つ打ちを基調にしたデジタルポップな楽曲が並びます。タイアップにも対応できそうな優等生なアニソン/ゲームソング的ではあるけど、悪くないけど決め手に欠けるというか、楽曲を通して「I'veとは別の道で表現したかったもの」がいまいち見えてこない。唯一、自身の英語力を生かした全英詞の「Don't cry」がバックのアーシーなサウンドと相まっていい意味で浮いていて格好良かったです。KOTOKO川田まみも少しずつ成長していったものだし、彼女の今後にも要注目といったところ。

 

anokthus / APOTHEOSIS

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 東京を拠点に音楽活動をする@anokthusさんの1stアルバム(2013年)。

 

 高密度に圧縮されたハードコアインダストリアル。歪んだキック、削岩機のようなビート、金属の擦れるような打撃音や機械的な効果音、ハーシュノイズなどが一体となって情け容赦なく襲いかかる破壊的なサウンド。Ant-Zen(ドイツのリズミックノイズ系の一大レーベル)から輩出されてそうな音楽で、けたたましく響き渡る轟音はコアなインダストリアルリスナーが歓喜するようなツボをビシバシ突いてきます。そう言いつつ管理人はAnt-Zen周辺やパワーノイズ等と呼ばれるジャンルに疎く、基本的にはポピュラーなインダストリアルロックが好き。では本作は難解で理解できないかと言うとそうでもなく、荒涼とした曲から壊れたコンピュータがエラーを吐き続けるような曲まで魅せ方も豊富で飽きさせないし、規則的かつフィジカルなビートで進行するためにどこか過激なダンスミュージックのようで、ある種の親しみやすさすらも感じ、全く無理なく楽しむことが出来ました。一定のジャンルに捉われず、刺激的な電子音楽を求める人への広い受け皿にすらなり得そうな作品。

 

Godflesh / Love And Hate In Dub

Love & Hate in Dub

Love & Hate in Dub

 

 UK出身のインダストリアルメタル/ポストメタルバンドのリミックスアルバム。

 

 4thアルバム「Songs Of Love And Hate」からセレクトされた楽曲のリミックスや別バージョンで構成されており、タイトル通り、ダブを中心としながらブレイクビーツアンビエント方面のアプローチでほぼ統一されています。過去にシングルやEPにリミックス曲を複数収録したりと彼らはこういう活動は積極的に行っているけど、1枚まるごとリミックスというのは今作が最初(で今のところ最後)。思い切ってる。そして過去のリミックス曲よりも更にGodfleshらしい重機のような凶悪さとの融合が図られているし、元になった4thアルバムは彼らの中で初めて人力のドラムで制作されたという異色作でもあったため、"本来のリズムマシンで改めて再構築した4thアルバム"という視点で捉えてもいいだろうし、いずれにせよ他のどの作品とも違った毛色で楽しめそう。冷たく響くドラムと濁りきったベースが、感情を排除したかのようなドゥームインダストリアルの世界に誘う。Godflesh以外の何ものでもないサウンドにはやはり問答無用で惹き込まれちゃいます。特に鋭利なノイズと散発的なドラムが撃ち込まれる「Almost Heaven (Helldub)」は文字通り地獄のBGM。リミックスだと侮るなかれ、マストなアルバム。