SHIHO / Divarats

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 I'veの元専属ボーカリストによるソロデビューミニアルバム(2005年)。

 

 ソロデビューと言ってもKOTOKO川田まみのようなI've作家陣とタッグを組んでのメジャーデビューとは違い、この時点でI'veを卒業し、自身の実弟であり作曲/プロデュースなどを担当する共同作業者の¥utaka氏と立ち上げたインディーズレーベルSTARAVIDからのリリース。ユーロビート的なダンスナンバーからI've直系のシンセポップ、果てはデジロックからR&Bまで、四つ打ちを基調にしたデジタルポップな楽曲が並びます。タイアップにも対応できそうな優等生なアニソン/ゲームソング的ではあるけど、悪くないけど決め手に欠けるというかイマイチ楽曲を通して「I'veとは別の道で表現したかったもの」が見えてこない。唯一、自身の英語力を生かした全英詞の「Don't cry」がバックのアーシーなサウンドと相まっていい意味で浮いていて格好良かったです。KOTOKO川田まみも少しずつ成長していったものだし彼女の今後にも要注目といったところ。

 

www.youtube.com

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anokthus / APOTHEOSIS

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 東京を拠点に音楽活動をする@anokthusさんの1stアルバム(2013年)。

 

 高密度に圧縮されたハードコアインダストリアル。歪んだキック、削岩機のようなビート、金属の擦れるような打撃音や機械的な効果音、ハーシュノイズなどが一体となって情け容赦なく襲いかかる破壊的なサウンド。Ant-Zen(ドイツのリズミックノイズ系の一大レーベル)から輩出されてそうな音楽でありながら、いい意味でけたたましく響き渡る轟音はインダストリアルリスナーが歓喜するようなツボをビシバシ突いてきます。そう言いつつ管理人はAnt-Zen系やパワーノイズ等と呼ばれるジャンルに疎く、基本的にはポピュラーなインダストリアルロックが好き。では本作は難解で理解できないかと言うとそうでもなく、荒涼とした曲から壊れたコンピュータがエラーを吐き続けるような曲まで魅せ方も豊富で飽きさせないし、規則的かつフィジカルなビートで進行するためにどこか過激なダンスミュージックのようで、ある種の親しみやすさすらもある。一定のジャンルを問わず刺激的な電子音楽を求める人への広い受け皿になり得そうな作品。

 

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Godflesh / Love And Hate In Dub

Love & Hate in Dub

Love & Hate in Dub

 

 UK出身のインダストリアルメタル/ポストメタルバンドのリミックスアルバム。

 

 4thアルバム「Songs Of Love And Hate」からセレクトされた楽曲のリミックスや別バージョンで構成されており、タイトル通りダブを始めとしてブレイクビーツアンビエント方面のアプローチでほぼ統一されています。過去にシングルやEPにリミックス曲を収録したりと彼らはこういう活動は積極的に行っているけど、1枚まるごとリミックスというのは今作が最初(で今のところ最後)。そして過去のリミックス曲よりも更にGodfleshらしい重機のような凶悪さとの融合が図られているし、元になったアルバムは彼らの中で初めて人力のドラムで制作されたという異色作でもあったため、本来のリズムマシンで改めて再構築した作品という視点でとらえてもいいだろうし、他のどの作品とも違った毛色で楽しめそう。冷たく響くドラムと濁りきったベースが感情を排除したかのようなドゥームインダストリアルの世界に誘う。特に鋭利なノイズと散発的なドラムが撃ち込まれる「Almost Heaven (Helldub)」は文字通り地獄のBGM。リミックスだと侮るなかれ、マストなアルバム。

 

Godflesh - Almost Heaven (Helldub) - YouTube

2016年良かったCD

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今年も終わりに近づいています。というわけで2016年の新譜お気に入り10選です。

 

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Nine Inch Nails / Year Zero

Year Zero

Year Zero

 

 US出身のTrent Reznorを中心としたインダストリアルロックバンドの5thアルバム。

 

すっかり寡作の大物というイメージがついていた当時のNINにしては約2年振りという比較的速いスピードでのリリースとなった本作。詳しくは知りませんが終焉した近未来を描くことで(当時の)米国政府を批判するというコンセプトがあり、アルバム以外でも色々な仕掛けを施した一大プロジェクトだった模様。過去を清算したお陰か速やかに伝えたいメッセージがあったからか、いずれにせよ創作意欲に溢れていたのは良いことだと思います。その作風は前作の比較的ストレートなバンド路線を踏襲することなく全面的に打ち込みのサウンドへ移行。90年代インダストリアルロックへの回帰というよりはダブステップやリズミックノイズを取り入れた変化といった感じで、巧みを凝らしたリズムトラックやビープな電子音やスクラッチノイズが抑揚をつけながら入り乱れる様は、狂気や暗黒美というよりは純粋な音楽的欲求や実験から生まれたような風通しの良さが感じられます。分かりやすいキャッチーな曲がほとんど無いことや全体的にコンピュータ制御されたような無機質な作りは好みを分けそうだけど、根幹の部分はあくまできっちりポップに作られているしやはり唯一無二の存在感は健在。そしてNINらしさを失わないまま新しいものを生み出そうとする姿勢は素晴らしいと思います。

 


[16] Nine Inch Nails - Survivalism (Fuji Rock Festival 2013)

Numb / Death On The Installment Plan

Death on the Installment Plan

Death on the Installment Plan

 

 カナダ出身のエレクトロインダストリアル/EBMユニットの3rdアルバム。

 

もともと彼らが持っていた強烈なノイズを絡めたEBMとしての特質的な個性が研ぎ澄まされ、楽曲の完成度が格段に向上。楽曲単位でもアルバム全体の流れとしても緩急の付け方・見せ方がより鮮烈になり、先の読めない曲展開で聴き手の興味を引き寄せながら、大胆なノイズ/サンプリングが幾重にも応酬する作品の奥深くへ引きずり込んでいきます。ノイズの使い方も電気加工されインダストリアル然とした独特の心地悪さを纏っていて、ダークアンビエント的な表現も荒廃・暴力的なパワーに溢れていて聴き惚れてしまいます。最初に聴いたときの第一印象は「まるで騙し絵を見ているようだなぁ」でした。それくらい異形で狂気的。Skinny Puppyの影響を多分に感じさせつつ、Nitzer Ebbのビート感やMinistryにも通じるパワーすら感じさせる面もありながら、それが決して凡庸なフォロワーとしてではなくとても鋭く磨き抜かれた一つの個性として存在することが驚嘆の一言。彼らがどれくらいの評価や知名度を得ているかはよく知りませんが、この作品は90年代インダストリアルの名盤に数えられてもおかしくない傑作だと思います。

 


Numb - Hole

Assemblage 23 / Storm

Storm

Storm

 

 US出身のTom Shearによるフューチャーポッププロジェクトの4thアルバム。

 

 前作「Defiance」から頭角を現し始め、今作で一気にフューチャーポップ界のトップに躍り出たとされる傑作。まず見違えるくらいに鮮やかになったシンセとその上物が鮮烈で、その音色の透明感・メロディの素晴らしさで全体の印象の8割を占めるんじゃないかと思うほど。まるで鳥瞰や空撮の映像を想起させるような、とても自由で済み切った世界が広がるかのよう。地味に徹するボーカルとの対比もある意味良いバランスで、歌のサビとイントロや裏メロのフレーズのどちらが主役なのか分からないくらい。そして中途半端にスローナンバーを差し込んでいた前作までと違い、ほぼ前編に渡ってスピード感のあるダンスビート(と彼の強みでもある高速ハイハット)に乗せられているので、体感速度も速くとてもテンポ良く爽快に聴ける。反面やや単調という見方もあるかも知れないけど、ここまで究めれば個人的にはそれだけで十分な完成度とアイデンティティを生み出していると思います。Apoptygma Berzerkにも同じことを思ったけど、シンプルに聴かせる明るいフューチャーポップはメロディの流れや音色の美しさでインパクトを出せれば勝ちだなと。そしてその到達点の一つがこの作品じゃないかなと。

 

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