MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

SHIHO / Divarats

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  I've出身のボーカリストによるソロデビューミニアルバム(2005年)。

 

 ソロデビューと言ってもKOTOKO川田まみのようなI've作家陣とタッグを組んでのメジャーデビューとは違い、この時点でI'veを卒業し、自身の実弟であり作曲/プロデュースなどを担当する共同作業者の¥utakaと立ち上げたインディーズレーベル・STARAVIDからのリリース。ユーロビート的なダンスナンバーからI've直系のシンセポップ、果てはデジロックからR&Bまで、四つ打ちを基調にしたデジタルポップな楽曲が並びます。タイアップにも対応できそうな優等生なアニソン/ゲームソング的ではあるけど、悪くないけど決め手に欠けるというか、楽曲を通して「I'veとは別の道で表現したかったもの」がいまいち見えてこない。唯一、自身の英語力を生かした全英詞の「Don't cry」がバックのアーシーなサウンドと相まっていい意味で浮いていて格好良かったです。KOTOKO川田まみも少しずつ成長していったものだし、彼女の今後にも要注目といったところ。

 

anokthus / APOTHEOSIS

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 東京を拠点に音楽活動をする@anokthusさんの1stアルバム(2013年)。

 

 高密度に圧縮されたハードコアインダストリアル。歪んだキック、削岩機のようなビート、金属の擦れるような打撃音や機械的な効果音、ハーシュノイズなどが一体となって情け容赦なく襲いかかる破壊的なサウンド。Ant-Zen(ドイツのリズミックノイズ系の一大レーベル)から輩出されてそうな音楽で、けたたましく響き渡る轟音はコアなインダストリアルリスナーが歓喜するようなツボをビシバシ突いてきます。そう言いつつ管理人はAnt-Zen周辺やパワーノイズ等と呼ばれるジャンルに疎く、基本的にはポピュラーなインダストリアルロックが好き。では本作は難解で理解できないかと言うとそうでもなく、荒涼とした曲から壊れたコンピュータがエラーを吐き続けるような曲まで魅せ方も豊富で飽きさせないし、規則的かつフィジカルなビートで進行するためにどこか過激なダンスミュージックのようで、ある種の親しみやすさすらも感じ、全く無理なく楽しむことが出来ました。一定のジャンルに捉われず、刺激的な電子音楽を求める人への広い受け皿にすらなり得そうな作品。

 

Godflesh / Love And Hate In Dub

Love & Hate in Dub

Love & Hate in Dub

 

 UK出身のインダストリアルメタル/ポストメタルバンドのリミックスアルバム。

 

 4thアルバム「Songs Of Love And Hate」からセレクトされた楽曲のリミックスや別バージョンで構成されており、タイトル通り、ダブを中心としながらブレイクビーツアンビエント方面のアプローチでほぼ統一されています。過去にシングルやEPにリミックス曲を複数収録したりと彼らはこういう活動は積極的に行っているけど、1枚まるごとリミックスというのは今作が最初(で今のところ最後)。思い切ってる。そして過去のリミックス曲よりも更にGodfleshらしい重機のような凶悪さとの融合が図られているし、元になった4thアルバムは彼らの中で初めて人力のドラムで制作されたという異色作でもあったため、"本来のリズムマシンで改めて再構築した4thアルバム"という視点で捉えてもいいだろうし、いずれにせよ他のどの作品とも違った毛色で楽しめそう。冷たく響くドラムと濁りきったベースが、感情を排除したかのようなドゥームインダストリアルの世界に誘う。Godflesh以外の何ものでもないサウンドにはやはり問答無用で惹き込まれちゃいます。特に鋭利なノイズと散発的なドラムが撃ち込まれる「Almost Heaven (Helldub)」は文字通り地獄のBGM。リミックスだと侮るなかれ、マストなアルバム。

 

Nine Inch Nails / Year Zero

Year Zero

Year Zero

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  US出身のTrent Reznorを中心としたインダストリアルロックバンドの5thアルバム。

 

 すっかり寡作の大物というイメージがついていた当時の彼らにしては、約2年振りという比較的速いスピードでのリリースとなった本作。詳しくは知らないけど、終焉した近未来を描くことで(当時の)米国政府を批判するというコンセプトがあり、アルバム以外でも色々な仕掛けを施した一大プロジェクトだった模様。過去を清算したお陰か速やかに伝えたいメッセージがあったからか、いずれにせよ創作意欲に溢れていたのは良いことだと思います。その作風は前作の比較的ストレートなバンド路線を踏襲することなく、全面的に打ち込みのサウンドへ移行。ただし90年代インダストリアルロックへの回帰では全くなく、尖りに尖ったエレクトロニックやノイズを駆使して骨組み重視で構築された新境地といった感じで、巧みを凝らしたリズムトラックやビープな電子音やキリキリと鳴らされるノイズが抑揚をつけながら入り乱れる様は、狂気や暗黒美というよりは純粋な音楽的欲求や実験から生まれたような風通しの良さが感じられます。分かりやすいキャッチーな曲があまり無いことや、全体的にコンピュータ制御されたような無機質な作りは好みを分けそうだけど、根幹の部分はあくまできっちりポップに作られているし、やはり唯一無二の存在感は健在。そしてNine Inch Nailsらしさを失わないまま新しいものを生み出そうとする姿勢は素晴らしいと思います。個人的には結構好き。