MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Circle Of Dust 『Circle Of Dust』

Circle of Dust

Circle of Dust

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 アメリカ・ニューヨーク出身のKlaytonによるインダストリアルロックプロジェクトの1stアルバム(1992年)。

 

 後にCelldwellerとして大ブレイクし、独立系レーベル/オンラインストアのFiXTを立ち上げ多数のアーティストを輩出するなど、この界隈での著名なマルチミュージシャン・Klayton(当時は本名のScott Albert名義)の個人ユニットの記念すべき1stアルバム。Celldwellerの前身であるCircle Of Dustというプロジェクト名でのリリースであり、全ての作詞作曲や演奏/プロデュースに至るまで自身で行うという完全ワンマンスタイルは当時から一貫していました。

 もともとスラッシュメタルバンドを組んでいたという出自や、その後にDepeche ModeSkinny Puppyといったエレクトロ(インダストリアル)ミュージックに強い影響を受けたというバックボーンを持つようで、それをそのまま具現化したような、メタルギターとエレクトロニックを掛け合わせたインダストリアルロックを展開。EBMリスペクトなリズムパターンを駆使する一方で、ロック感みたいなのにも十分に気を配ったハイブリッドなサウンドが特徴的。打ち込みの色が強いことや、ボーカルのアンドロイドのような加工の妙、人の血が通っていないようなギターの無表情さなどもあいまって、全体的には無機質かつスペーシーでかなりSFっぽい雰囲気でまとまっていて、そこが独特の持ち味と言えるかも。Nine Inch Nails『Pretty Hate Machine』と共通する部分も散見されるという評価もあるようで、個人的には単なるフォロワーというよりは(もちろん意識はしたかも知れないけど)影響元の近しさから自然発生した類似性という感じ。あるいはKMFDMからソウルやダブの色を抜いてもっとシリアスに、もしくはゴシカルな色を加えたようだとも思います。Celldwellerほど凄くキャッチーというわけではないし、平均点が高い代わりに強い楽曲がなくてやや中弛みもするけど、歌をないがしろにはしていないし、その細部まで詰め込まれたサウンドだけでも十分楽しめちゃいます。インダストリアルロック史の超重要作であるNIN『Broken』とほぼ同時期のリリースという事実を踏まえると、その先見性が伝わりやすいかも。

 ではなぜこのアルバムが、当時のインダストリアルロックシーンでアングラ的な評価に留まったのかというと、もともとCircle Of Dustが“クリスチャンロック”という属性を持って、そういった音楽を扱う小規模レーベルからデビューしたという経緯にあるようです。この辺りあまり詳しくはないのだけど、本人としてはそこまで宗教色の強い音楽を元から標榜してはおらず、サウンドは上々でも歌詞の面で「その界隈から」批判を受けたり、レーベルとの契約の問題で活動が思うようにいかないままリリースを迫られたりと、周辺の環境との軋轢や齟齬がかなり障害になった模様。このアルバムも、1992年にリリースされたものの「思うように制作が進まず内容に不満が残る」ということで、一部楽曲の入れ替えと再録音をしたものを1995年に改めて再発。以降1992年盤は廃盤/入手困難になり、後のリマスター盤も1995年盤がベースになっています。聴き比べた感じだと、劇的な違いはないにしろ、ミキシングが相当に向上して一体感の強い洗練されたサウンドになっており、作品の質量がギュッと締まったように思います。あとは一部楽曲に見受けられたテンポチェンジの多用がちょっと稚拙だと思ったけど、それも減ったような気も?

 ともあれ、Celldwellerから入ったようなリスナーであっても、遡って聴く価値は十分にあるKlaytonの原点にして、90年代インダストリアルロックの傑作の一つではないかなと。