US・ニューヨーク出身のKlaytonによるインダストリアルロックプロジェクトのリミックス/コンピレーションアルバム(1993年)。
本作はなんだかちょっと特殊な形態で、1stアルバムやBrainchild(レーベルの創設者と組んだユニット名であり、後の2ndアルバム名にもなる)名義の楽曲のリミックス曲や未発表曲、そして当時のレーベルメイトのスラッシュメタルバンド・Living Sacrificeの楽曲をCircle Of Dustとしてリミックスした楽曲、その3方向を寄せ集めたコンピレーション盤となっています。納得のいっていない楽曲の再構築への意欲と、すぐに新作をリリースできなかったレーベル事情、そしてLiving Sacrificeとセットでのプロモーションも兼ねるという複数の大人の事情が絡み合って生み出されたようです。とはいえ個々の楽曲そのものは確かな出来で、リミックス━━と言っても大きな改変はほとんどなく、ミキシングを整えたりちょっとしたパートを追加したりと元の楽曲を磨き上げたり少し角度を変えたくらいのニュアンスで選抜した楽曲を提供し直しているし、未発表曲はグラインドコアからHMバラードへと展開していくお遊び曲「Heldweller」や爛れた音像がひたすら続くという似つかわしくないダークエレクトロの実験的習作「Daraq」など興味深いものも。Living Sacrificeは聴いたことがないので原曲との比較という聴き方はできないけど、超高速スラッシュリフなどバンドの痛烈なまでのパワーをEBM風の枠に落とし込んだような楽曲が点在し、迫力十分な上にCircle Of Dustの楽曲との温度差もなく聴き応えも○。2016年にKlaytonがCircle Of Dustの権利を買い戻した際には他のアルバム同様に本作もリマスター盤がリリースされている通り、経緯はどうあれ本作もれっきとしたKlaytonの初期の重要なディスコグラフィの一つとして並べられています。ベスト盤的に聴ける代物ではないけど、気になるところだけかいつまんで聴いてみるのも結構面白いかも。
今回の記事に合わせ、過去に書いたCircle Of Dustの1stアルバムと2ndアルバムの紹介記事を、当時書いたときに欠けていた情報を織り込んだ形で書き直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。
