MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

girugamesh / MUSIC

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 4人組ロックバンドの3rdアルバム(2008年)。

 

 初のヨーロッパツアーを通過した収穫か、ここで音楽性が大きく変化。シーケンシャルなビートに乗っかった従来型のラウドなサウンドが、シンセやサンプリングを山盛りに盛り込んでパンキッシュかつスピーディに駆け抜けていく。その突き抜け方や開き直り方は爽快ですらあり、Tシャツ革パンでモッシュにダイブ!といった新しいライブの図も浮かぶよう。しかしこの界隈の迷走したバンドにありがちな安直な脱ヴィジュアル系や路線変更などでは決してなく、彼らがそれこそ初期から少しずつ推し進めていたミクスチャーロックスタイルの進化形であり、デジタル、ラウド、ダンサブルといった要素のバランスや構築、具体性の強い日本語詞を真正面から用いた "ダサ格好良さ" から逃げずに伴うシャウト/ラップを自在に操るボーカルも合わせて、とても頼もしい完成度。曲によってはLinkin Park、Static-X、THE MAD CAPSULE MARAKETSなどを思い起こさせるし(彼らもそういったバンドからの影響を公言している)、一部にはインダストリアルロックとして聴けたりカテゴライズできるくらいの領域にもあると思います。彼らのバンド歴を通した音楽性の激しい移り変わりの中で、後にも先にもここが最もニュートラルだと思うし、バンドを代表する2大楽曲「Break Down」「evolution」が収録されていることからも、彼らを語る上で絶対に外せない傑作。

 

Halo In Reverse / Halo In Reverse

Halo in Reverse

Halo in Reverse

 

 US出身のJoshua Steffunによるインダストリアルロックプロジェクトの1stアルバム。

 

 どう聴いてもNine Inch Nailsです。本当にありがとうございました。…で終わってもいいくらいにNINに似ています。ピアノの音色を際立たせ、一音一音が重く響き渡る暗黒世界に、突如感情が高ぶったかの如くノイジーなギターが炸裂する様だったり、場面に応じてテンションを自在に変化させる歌い方だったり。特に「The Downward Spiral」「The Fragile」あたりを彷彿とさせるものがあり、分かりやすくあの曲のオマージュだろうなという曲もチラホラ。かつて山ほどいたNINフォロワーバンドと違い「影響」ではなく「再現」レベルだし、フラットに聴いても唸るほどの完成度。これには脱帽。そもそも、NINはオフィシャル作品に独自に「Halo」のシリアルナンバーをつけていて(現在はHalo 30まである模様)、彼のプロジェクト名はそこからつけられているであろうだけに、確信犯的な意志があったのだろうと思います。2ndアルバムは出ていないようだけど、一発ネタで終わらせるのは惜しい。Skinny Puppyのハイレベルな再現で度肝を抜いたNecro Facilityと合わせて、感心しながら聴きたいリバイバル・インダストリアル。

 

Pitchshifter / Deviant

Deviant

Deviant

 

 UK出身のインダストリアルロックバンドの5thアルバム。

 

 エリザベス女王ローマ法王の顔を合体させたジャケットがインパクトのある本作。しかしそこまでバンドを引っ張っていたギタリスト・Johnny Carterの脱退が影響してか、前作で魅せたドラムンベース/ジャングルを下地としたデジタルサイバーロック感が消失し、全体的にややスローダウンしたインダストリアル風ヘヴィロックになっちゃいました。サンプリングも目立たない位置に引っ込み、サウンドの有りようがすっかり没個性化。それなりに軽快なスピード感を残す曲もあるにはあるし、元Dead KennedysのJello Biafraが参加した「As Seen On TV」も聴きどころだけど、テンションの低い曲もちょいちょい挟まるので全体の印象がパッとしない。これは個人的に後期のStatic-Xに感じたガッカリ感に似ていました。単体で見るとそんなに悪い作品ではないとは思うけど、ありがちなアメリカ型インダストリアルロックとは異なる魅力を確立させた傑作の前作とどうしても比較してみてしまうし、なんならもっと遥かにコアな音楽性だった初期を思い返すと、その変化に尚クラクラしてしまいます。

 

I've / I've MANIA Tracks Vol.I

 北海道に拠点を置き、アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによる編集盤。

 

 2007年冬のコミックマーケット及び通信販売で限定発売されたもので、I'veの膨大なアーカイヴから、通常のガールズコンピ盤には収録不可能な楽曲や、当時では既に入手困難になっていた貴重音源などを詰め合わせたレアコンピ盤という内容。何と言ってもKOTOKOが謎のボーカルという設定のバンドユニット「Outer」のオリジナル楽曲が複数収録されたというのは非常に大きく、I've内では群を抜いてダークで攻撃的、かつ挑発的な作風を披露。他にも、細かいバージョン違いや古いレパートリーのボーカル違いなどの曲でコアなファンが原曲との違いを楽める部分もあるし(しかも軒並み出来が良い)、川田まみの「Lythrum」を始め、こういう主旨の作品にしか収録が叶わなかったであろう隠れた名曲の存在も嬉しく、I've歌姫総出演のSpecial Unitによるバラードで大団円の〆という流れも最高。女性ボーカルという制約すら存在しないため、ゲームキャラ名義やC.G mixのソロなど男性ボーカルの曲すらも混在し、作風にしろ年代にしろ、全体的な振れ幅はいつも以上。しかし全体像としては、そういう凸凹が逆にI'veというチームの魅力を色んな面から浮き立たせているのが面白い。タイトル通りマニアックなアイテムながら裏ベストとしても楽しめそうな逸品。

 

harshrealm / [lies/cold display]

[lies/cold display]

[lies/cold display]

 

  2人組エレクトロニック/インダストリアルロックバンドのリミックスアルバム。

 

 1stアルバム「[she/underwater]」からのリミックスアルバム。このアルバムにもボーナストラック的にリミックスが収録されていたけど、それらとはまた異なった趣が楽しめます。リミキサーはUS、カナダ、ドイツ、スウェーデンなど様々な海外のクリエイター/アーティストを起用。EBM/フューチャーポップ/トリップホップなどにアレンジされた色とりどりなダンストラックが楽しめる前半もいいし、より硬質/マニアックなインダストリアルメタルに変貌した中盤のセルフリミックスを経て、音数を絞られたアンビエント/トランスが展開する後半という流れもいい。彼らの曲がもともと幅広いエレクトロニック音楽に深い造詣を持つので、リミックスの懐が深いというのもポイントかも。あえてかどうかは知らないけど、沢山の候補があったであろう1stの中から5種の曲のみ選出と簡潔だし、無駄に長かったり自己満足なリミックスもなく、全体のボリュームも全9曲と抑えめなので、散漫にならず聴けるのがとても良いです。ラストを飾るのはSybreedのメンバーが手がけたリミックス。本隊バンドほどマシーナリーなメタルではないけど、どこかそれを彷彿とさせる奥行きのあるシンセが加わり心地いい。