MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

girugamesh / 13's reborn

13’s reborn

13’s reborn

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 4人組ロックバンドの1stアルバム(2006年)。

 

 2004年から活動を開始し、2016年の解散まで籍を置いた事務所に所属してからの初となったフルアルバム。タイトルはそれまでに発表した配布/限定を含む13の音源の総決算を意味する…かどうかは定かではないですが(そもそも13かどうかもよく知らん)、いくつかの収録曲は引き継がれています。2000年台初頭に起こった海外ニューメタルのブームや、それに影響を受けた当時のヴィジュアル系シーンの血筋を受け継いだへヴィなロックを主軸とし、 "男魂" というバンドコンセプトを掲げる通りに媚びを感じさせない骨太さやシリアスさがあるし、親しみやすい歌と激しいシャウトを行き来する左迅のボーカルも既にバンドの大きな武器になっています。ただ、後に更にミクスチャーやメタルコア方面へ傾倒することでより彼ららしいスタイルを確立していくので、本作の打ち込みなどの音がほとんどなく生音メインでゴリゴリと押すムードは、後追いで比べるとサウンド面で言えば明らかに発展途上。楽曲面では光るものもあるけど、汎ヴィジュアル系臭さが抜けきれてない部分なんかもやはり若さを感じさせます。年季の入った彼らのファンは、本作を傑作と推す人も少なくないみたいだけど。後のベスト盤に収録された「遮断」、バンドの歴史を通しても最大クラスの人気曲「終わりと未来」あたりは要チェックの佳曲。

 

C.G mix / in your life

in your life

in your life

 

 I'veのクリエイター兼ボーカリストの1stアルバム。

 

 名だたるI'veの作家陣の中で、唯一I've内での歌手活動もしている彼。とはいえ彼が受け持つボーカル曲はかなり少ないし、ガールズコンピ盤には収録されないので(当たり前だけど)普通にI'veを追っているだけでは耳にする機会は非常に少ないです。本作はそんな彼の貴重なボーカル担当曲を収録しつつ、同時にアーティストとしての側面を表現したソロ作品となっています。内容に関しては彼の音楽的バックボーンであろうどこか懐かしい往年のシンセポップ的だったり(というかぶっちゃけ小室哲哉っぽい)健全な鍵盤バンドサウンドの歌モノだったりであまりこれといった尖り方はしてないです。I've参加のずっと前に歌手デビューの経歴がある割にはボーカルもあまり上手ではなく、難易度の高い高音や早口パートでは粗も見られたり。MVが作られた「version up」やI've歌姫のMELLがコーラスで参加した「DETECT」は攻撃的だけど、他の曲は平坦で印象薄。彼が手がけたI've曲は正統派から電波まで素晴らしい曲が多いのに、本作はそういうイメージがサウンドにも曲にも無いので、そういうのを期待する人が手に取る必要はなさそう。I'veとTM NETWORKの両方が好きな人は聴いてみては(謎)。

 

川田まみ / SEED

SEED(通常盤)

SEED(通常盤)

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 I've専属ボーカリストによる1stアルバム。

 

 KOTOKOに続きI've専属歌手から2人目のメジャーデビューを果たし、順調にシングルリリースを重ねた末に完成した記念すべき初のソロアルバム。その楽曲の多くは、歌手としてだけでなく作詞家としての顔も持つ自身による作詞、I've作家陣でも川田まみを重点的に受け持った中沢伴行による作編曲/メインプロデュースという、彼女の音楽活動において最後まで貫いたフォーマットが既に確立。自身のターニングポイントと語る名曲「IMMORAL」をほぼ中心に配置し、アニメに提供したタイアップ曲を始め完成度の高い曲が並びます。しかし、どうしても地味な印象から逸脱できないミドルバラードの存在が全体の流れや勢いを削いでしまう側面も。この感じは初期のKOTOKOソロを思い起こさせるけど、元々彼女の歌声を「昔はKOTOKOに似ていた」と評していた作家陣による意図なのか、それとも川田まみという個性がまだ芽吹き切ってないが故の無難な落としどころなのか、いずれにせよ少々物足りなさを覚えます。後にアニソン歌手として大成する彼女のパブリックイメージを持ったまま振り返ると、やや大人しいというか、まさにタイトル通り成長途中というか、そういう風に映るアルバム。決して悪くはないですが。

 

The Berzerker / The Reawakening

Reawakening

Reawakening

 

 オーストラリア出身のデスメタル/インダストリアルメタルバンドの5thアルバム。

 

 ここまで所属していたグラインドコア系の老舗レーベル・Earache Recordsから離れ、Berzerker Industriesという自主レーベルからのリリースとなった彼らの最終作。環境の変化やアルバムタイトルから、再出発という意気込みがあったのではと予想されます。超ハイスピードかつ暴力的な打ち込みグラインドコアという根幹は昔から一貫していながら、近々の作品ではメタリックなバランスに傾いた分、初期にあったインダストリアルメタルやテクノの突然変異のようなインパクトも喪失しつつありました。しかし本作では高速早回しガバビートやサンプリングを巧みに使った機械的サウンドに回帰し、かと言って1stほどデタラメ過ぎず程よく洗練された楽曲群で、彼らにしかできないエクストリームミュージックを取り戻し強化。ドドドドカカカカと容赦なく攻め立てる圧巻のサウンドにひれ伏さずにいられません。自分たちの持ち味を見失わず駆け抜け、ここにきて最高傑作に迫る勢いの作品で最後を迎えた彼らは、解散が非常に惜しいバンドだったと思います。デジパック盤の終盤に収録されたリミックス群も必聴の出来。

 

SHIHO / Divarats

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  I've出身のボーカリストによるソロデビューミニアルバム(2005年)。

 

 ソロデビューと言ってもKOTOKO川田まみのようなI've作家陣とタッグを組んでのメジャーデビューとは違い、この時点でI'veを卒業し、自身の実弟であり作曲/プロデュースなどを担当する共同作業者の¥utakaと立ち上げたインディーズレーベル・STARAVIDからのリリース。ユーロビート的なダンスナンバーからI've直系のシンセポップ、果てはデジロックからR&Bまで、四つ打ちを基調にしたデジタルポップな楽曲が並びます。タイアップにも対応できそうな優等生なアニソン/ゲームソング的ではあるけど、悪くないけど決め手に欠けるというか、楽曲を通して「I'veとは別の道で表現したかったもの」がいまいち見えてこない。唯一、自身の英語力を生かした全英詞の「Don't cry」がバックのアーシーなサウンドと相まっていい意味で浮いていて格好良かったです。KOTOKO川田まみも少しずつ成長していったものだし、彼女の今後にも要注目といったところ。