川田まみ / SAVIA

SAVIA (初回限定盤)【DVD付】

SAVIA (初回限定盤)【DVD付】

 

  I've専属ボーカリストの2ndアルバム。

 

 前作より2年振りで、その間の彼女の成長が刻み込まれた作品。楽曲に関しても、ギターをより前面に押し出した曲や、流麗かつ重厚なトランス風の曲、時に勢いのあるパンキッシュな曲と幅が広がり、染み入るようなバラードもその分顕在化。そんな楽曲群を、彼女自身も「まみぶらーと」と呼ばれる独特のビブラートや、ウィスパー気味な歌い方、羽目を外したかのような歌声と、溌剌とした歌唱で堂々と乗りこなす。その相性の良さや飛躍っぷりは見事という他なく、その道のりやそこに裏づけられた自信はアルバムタイトルにも確信的に表れています(前作「SEED(種)」に対し今作が「SAVIA(葉脈)」で、発芽/成長の意味を込めたとか)。全体的にインダストリアルロックのエッジな部分が上手くアニソン/ポップスに落とし込まれ、聴く人が聴けば諸手を挙げてガッツポーズしそうなトラックの作り込みがとても良いです。収録曲の大半がタイアップ曲であり(しかも殆どは同一シリーズ)、派手な耳当たりの曲が続くことがちょっと大味に感じる面も無くはないけど、I've愛好家以外にも広くアピールできそうな良作だと思います。個人的には「翡翠 -HISUI-」が大好きで…あの字余り気味なメロディとストリングスで切迫感いっぱいに展開していく流れでご飯3杯いけます。これぞC.G mixマジック。

 

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ギルガメッシュ / MUSIC

MUSIC

MUSIC

 

  4人組ロックバンドの3rdアルバム。

 

 初のヨーロッパツアーを通過した収穫か、ここで音楽性が大きく変化。シーケンシャルなビートに乗っかった従来型のラウドなサウンドが、シンセやサンプリングを山盛り取り込んでパンキッシュかつスピーディに駆け抜けていく。その突き抜け方や開き直り方は爽快ですらあり、Tシャツ革パンでモッシュにダイブといった新しいライブの図も浮かぶよう。しかし迷走したバンドにありがちな安直な脱ヴィジュアル系や路線変更では決してなく、彼らがそれこそ初期から少しずつ推し進めていたミクスチャースタイルの進化形であり、デジタル/ラウド/ダンサブルのバランスや構築、直接的な日本語詞を用いたダサカッコ良さを伴うシャウト/ラップを自在に操るボーカルも合わせて、とても頼もしい完成度。曲によってはLinkin Park、Static-X、THE MAD CAPSULE MARAKETSなどを思い起こさせるし(彼らもそういった影響を公言している)、一部にはインダストリアルメタルとして聴ける/カテゴライズできる要素も含んでいると(個人的に)思います。彼らの音楽性の激しい移り変わりの中で、後にも先にもここが最もニュートラルだと思うし、カッコ良さと聴きやすさを兼ね備えているんじゃないでしょうか。

 

Halo In Reverse / Halo In Reverse

Halo in Reverse

Halo in Reverse

 

 US出身のJoshua Steffunによるインダストリアルロックプロジェクトの1stアルバム。

 

 どう聴いてもNine Inch Nailsです。本当にありがとうございました。…で終わってもいいくらいにNine Inch Nails(以下「NIN」)に似ています。ピアノの音色を際立たせ、一音一音が重く響き渡る暗黒世界に、突如感情が高ぶったかの如くノイジーなギターが炸裂する様だったり、場面に応じてテンションを自在に変化させる歌い方だったり。強いて言うなら「The Downward Spiral」「The Fragile」あたりを彷彿とさせるものがあり、分かりやすくあの曲のオマージュだろうなという曲もチラホラ。かつて山ほどいたNINフォロワーバンドと違い「影響」ではなく「再現」レベルだし、フラットに聴いても唸るほどの完成度。これには脱帽。そもそも、NINはオフィシャル作品に独自に「Halo」のシリアルナンバーをつけていて(現在はHalo 30まである模様)、彼のプロジェクト名はそこからつけられているであろうだけに、確信犯的な意志があったのだろうと思います。2ndアルバムは出ていないようだけど、一発ネタで終わらせるのは惜しい。Skinny Puppyのハイレベルな再現で度肝を抜いたNecro Facilityと合わせて、感心しながら聴きたいリバイバル・インダストリアル。

 

Pitchshifter / Deviant

Deviant

Deviant

 

 UK出身のインダストリアルロックバンドの5thアルバム。

 

 エリザベス女王ローマ法王の顔を合体させたジャケットがインパクトのある本作。しかしそこまでバンドを引っ張っていたギタリストJohnny Carterの脱退が影響してか、前作で魅せたドラムンベース/ジャングルを下地としたデジタルサイバーロック感が消失し、全体的にややスローダウンしたインダストリアル風ヘヴィロックになっちゃいました。サンプリングも目立たない位置に引っ込み、サウンドの有りようがすっかり没個性化。それなりに軽快なスピード感を残す曲もあるにはあるし、元Dead KennedysのJello Biafraが参加した「As Seen On TV」も聴きどころだけど、テンションの低い曲もちょいちょい挟まるので全体の印象がパッとしない。これは個人的に後期のStatic-Xに感じたガッカリ感に似ていると思いました。単体で見るとそんなに悪い作品ではないとは思うけど、アメリカ型インダストリアルロックとは異なる魅力を確立させた傑作の前作とどうしても比較してみてしまうし、なんならもっと遥かにコアな音楽性だった初期を思い返すと、その変化に尚クラクラしてしまいます。

 

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I've / I've MANIA Tracks Vol.I

 北海道に拠点を置き、アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによる編集盤。

 

 2007年のコミックマーケット及び通信販売で限定発売されたもので、その内容はI'veの膨大なアーカイヴから、通常のガールズコンピ盤には収録不可能な楽曲や、当時では既に入手困難になっていた貴重音源などを詰め合わせたレアコンピ盤。何と言ってもKOTOKOが謎のボーカルという設定のバンドユニット「Outer」のオリジナル楽曲が複数収録されたというのは非常に大きく、I've内では群を抜いてダークで攻撃的、かつ挑戦的な作風を披露。他にも、細かいバージョン違いや古いレパートリーのボーカル違いなどの曲でコアなファンが原曲との違いを楽める部分もあるし(しかも軒並み出来が良い)、川田まみの「Lythrum」を始め、こういう主旨の作品にしか収録が叶わなかったであろう隠れた名曲の存在も嬉しく、I've歌姫総出演のSpecial Unitによるバラードで大団円の〆という流れも最高。女性ボーカルという制約すら存在しないため、ゲームキャラ名義やC.G mixのソロなど男性ボーカルの曲すらも混在し、作風にしろ年代にしろ、全体的な振れ幅はいつも以上。しかし全体像としては、そういう凸凹が逆にI'veというチームの魅力を色んな面から浮き立たせているのが面白い。タイトル通りマニアックなアイテムながら裏ベストとしても楽しめそうな逸品。

 

harshrealm / [lies/cold display]

[lies/cold display]

[lies/cold display]

 

  福岡を拠点に活動する2人組エレクトロニック/インダストリアルロックバンドのリミックスアルバム。

 

 1stアルバム「[she/underwater]」からのリミックスアルバム。このアルバムにもボーナストラック的にリミックスが収録されていたけど、それらとはまた異なった趣が楽しめます。リミキサーはUS、カナダ、ドイツ、スウェーデンなど様々な海外のクリエイター/アーティストを起用。EBM/フューチャーポップ/トリップホップなどにアレンジされた色とりどりなダンストラックが楽しめる前半もいいし、より硬質/マニアックなインダストリアルメタルに変貌した中盤のセルフリミックスを経て、音数を絞られたアンビエント/トランスが展開する後半という流れもいい。彼らの曲がもともと幅広いエレクトロニック音楽に深い造詣を持つので、リミックスの懐が深いというのもポイントかも。あえてかどうかは知らないけど、沢山の候補があったであろう1stの中から5種の曲のみ選出と簡潔だし、無駄に長かったり自己満足なリミックスもなく、全体のボリュームも全9曲と抑えめなので、散漫にならず聴けるのがとても良いです。ラストを飾るのはSybreedのメンバーが手がけたリミックス。本隊バンドほどマシーナリーなメタルではないけど、どこかそれを彷彿とさせる奥行きのあるシンセが加わり心地いい。

harshrealm / [she/underwater]

[she/underwater]

[she/underwater]

 

 福岡を拠点に活動する2人組エレクトロニック/インダストリアルロックバンドの1stアルバム。

 

 1stシングル収録の2曲を含み、それらの先行して発表した楽曲を軸に拡充した世界を提示。大別すると、例えばCrossbreedや彼らと親交のあるProfessional Murder Musicにも似たシンセ主体/ゴス風味/インダストリアル要素を持つロックだけど、ありがちなニューメタルをベースにした大味なものではなく、あくまでもEBM/トランス/エレクトロニカ/へヴィロック等を巧みに通過した上での多彩さ、重厚さ、また相反する浮遊感を感じさせます。アグレッシブなリフを繰り出す攻撃的な曲から、ピアノ/エレクトロで静謐に聴かせる曲まで幅があり、デジタル/プログラミングも多用していながらも、流れ良く、また泰然と紡がれる芯の通った退廃的で陰影の深いサウンドは「ヨーロッパの湿気」とも称されたそう。ダークネス/へヴィネス/メランコリーのバランスが見事で、かつちゃんとポップなのが嬉しいところ。ちなみに元KMFDMのEn EschやGünter Schulzが一部ゲスト参加しているというインダストリアルロックファンには注目のトピックも。初めて聴いたときは、彼らの情報の少なさから来るミステリアスな印象、魅惑的なアートワーク、また日本のバンドからこんな作品が生まれるんだという驚きもあって、相当な衝撃を受けたものでした。全体的な水準はかなり高いと思うし、そういう個人的な思い入れや相性も手伝って、何年も経った今でも色褪せない作品として君臨しています。当ブログ推奨盤。