MAKO / THIS IS HOW

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 I've専属ボーカリストの2ndミニアルバム(2013年)。

 

 コミックマーケット85限定販売。同じくコミケ流通の前作から丸1年ぶりの音源で、全5曲という部分も前作を踏襲するものだけど、今回の新曲はすべて彼女の手によるもの。1曲だけ作詞作曲していた前作から明らかに手を広げており、シンガーソングライターとしての素養を固める作品となっています。ノンタイアップかつコミケ流通というマイペースな展開もあいまって、終始リラックスした空気で一貫しているのも特徴的。編曲はI've作家が均等に参加し、全体的にクラブ向けのアレンジを施し彼女の楽曲をサポート。ストリングス/ピアノを重用した透明感のあるシンセポップも安定の出来だけど、R&B風に仕上げた「Happy Ever After」や、彼女がI'veのみならず人生で初めてレコーディングしたという約13年前(!)の代表曲とも言える楽曲のリアレンジ「bite on the bullet -Acoustic ver.-」など、I'veのイメージをちょっとはみ出た感じの楽曲も、彼女の雰囲気のあるハスキーな声との相性を再確認させられて捨てがたい。I'veの中でも確かな実力と稀有なポジションを証明するかのような一枚だし、それだけに今後にも期待を寄せずにいられなかったのだけど、リリースは本作が最後となり、2015年のイベントを境に活動を休止。どうやら海外に移住されたようで、そこは仕方のないことか。結果短期間にはなったものの、10年ぶりにI'veで歌ってくれただけでも有り難いことでした。願わくば、また彼女の歌を聴ける日が来たらいいなと。

 

Vampire Rodents / Lullaby Land

Lullaby Land

Lullaby Land

 

 US出身の実験音楽/サウンドコラージュユニットの3rdアルバム(1993年)。

 

 彼らについては詳しいことを全く知りません。どこで存在を知ったのかも覚えていない…で、何故いきなり3作目なのかと言うと、これを1作目だと勘違いして入手したのと、当時他の作品が入手困難だったため(現在は配信されている模様)。ただ、BabylandやChemlabのボーカルのゲスト参加や、音楽的にもピークということもあって高評価作のようです。でも、初めて聴いたときは頭の上に「?」がひたすら浮かぶだけだったんですが、今聴き直してもやっぱり全容は掴みにくい。まず耳につくのは乾いたギターや重めの弦楽器の無軌道なフレーズが表立つアンサンブルだけど、何の前兆もなく急にスパッとテンポチェンジしたり転換したり。更にはラジオの周波数が微妙に合わないときみたいに全く別の民族音楽やジャジーなフレーズが薄ら聴こえる瞬間もあったり。何となしに聴いていると「ん?いま曲変わったのかな?」と勘違いすること必至。つまり曲構成そのものが継ぎ接ぎな構造なのかと思ったら、そもそもサウンドも即興や別演奏からのサンプリングも多いとかで、何から何までコラージュで出来ているっぽい。そして全21曲と曲数もやたら多く、もう何が何だか。そりゃ「?」も浮かぶわ。でも改めて聴くと、やっぱり他にはない音楽だと痛いほど感じます。彼らの場合ただのアプローチとかのレベルではなく、もう音楽を作る発想や動機からして「実験」であり、映画音楽の制作歴やクラシック/前衛音楽などのルーツを背景とした、彼らにしか作り得ないモノだという揺るぎない説得力があるんですね。一歩間違えばグチャグチャなのにそう感じさせない不思議さ。そして手法や表現の柱としてインダストリアルにも強く通じている。一口に言い表せない存在感があるのは間違いないです。覇気のないボーカルやホラーな雰囲気はどことなくSkinny Puppyにも似た混沌があるので、そこに馴染みがあると実は聴きやすいか。というか「生音Skinny Puppy」だなこれ(謎)。他の作品も気になるのでそのうち聴いてみます。

 

BUCK-TICK / 夢見る宇宙

夢見る宇宙

夢見る宇宙

 

 5人組ロックバンドの18thアルバム。

 

 メジャーデビュー25周年イヤーに発足された自主レーベル・Lingua Soundaより発売された最初のアルバム。曲数の多い傾向にあった近々のアルバムに比べると全11曲とコンパクトな上に、先行シングル2枚からAB面の4曲を(別アレンジで)収録ということもあり一見ボリュームは控えめに映るけど、作品が醸し出すスケールは決して見劣りすることなく、期待を裏切らない一作に仕上がっています。中盤辺りまでは直球ポップな曲、ロックンロールに振り切った曲、ライブで活躍しそうなクラップ全開の曲など比較的明るく突っ走っており、同時に作品のイメージも牽引。ファンには古くから馴染みのあるフレーズを楽曲名に冠した「CLIMAX TOGETHER」、アルバム収録に際して賑やかなブラスロックに変貌した「ONLY YOU -WE ARE NOT ALONE-」等は特に印象も強烈。また、猛禽(raptor)の生態と(同名の)戦闘機の存在意義をダブルミーニング的に紐づけた「INTER RAPTOR」は、そのサウンドのみならず発せられるメッセージも攻撃的。そしてこの曲に限らず、一歩踏み込んだ死生観を匂わせる歌詞が多い部分には3.11の影響も見え隠れするし、幻想的なジャケットや空間/余韻を強調するような音作りもあって、ただポップなだけでない、シンプルなフレーズを丁寧に紡ぎながらも捻りのある世界を構築しているのは正にB-Tならでは。そしてノイズと浮遊感を増したアレンジが光るラストの「夢見る宇宙 -cosmix-」にて、包み込むような展開から最後に飛散していく流れが感涙もの!重厚なサウンドや世界観のアルバムでは決してないし、そういうものを期待する人には不満も残るかも知れないけど、個人的にはかなりお気に入り。

 

KOTOKO / 空中パズル

空中パズル(通常盤)

空中パズル(通常盤)

 

 I've出身ボーカリスト/シンガーソングライターの6thアルバム。

 

 独立/移籍後のアルバムとしては2年ぶり2作目になり、全曲書き下ろしかそうでないかの違いはあれど、I've内外の作家から提供を受けた楽曲群に自作曲を添えた自己プロデュース盤という構造は共通。多数の作家が参加した前作からは齋藤真也とDECO*27が続投し、特に齋藤真也はリード曲を含め数曲の作編曲を担当。そして彼と関係も深いfripSide八木沼悟志による楽曲も3曲収録。この2人のカラーが作品のイメージに大きく貢献しており、新風を吹き込むと共にクオリティもグッと底上げしています。特にロック系の楽曲は、これまでのKOTOKOに多かった"I'veサウンドとロックの摺り寄せ"ではない明快なアプローチに徹したものが多く、「Light My Fire」(これはsupercellのryo作だけど)を始め、ライブでの盛り上げを見据えたようなパワフルさが爽快。一方、八木沼悟志の楽曲はそれだけで一枚通すとちょっとクドいけど(えっ)、これくらいの曲数だと丁度いいし、ラストを「→unfinished→」で飾るのは流れとしても意味としても最高。そして高瀬一矢によるこれぞI've!と唸る楽曲も負けじと冴えを見せています。全体としてはバラードどころかミドルナンバーすらも僅かに留まり、アップテンポな楽曲がほとんどながら、バランスに気を配られていて飽きないし楽しい。KOTOKOのメジャーでの活動は、シンガーソングライターとしてのエゴを出したり、逆にI'veに特化したりといった面を見せてきたけど、もしかしたら本作こそが彼女の魅力が最もニュートラルに伝わるかも。メジャーデビュー10周年目前の6作目、というキャリアながら、ここに来て最高傑作と言えるくらいの内容。何かと中途半端だった前作から一転、一気に突き抜けまくった快作!

  

Wiseblood / Dirtdish

Dirtdish

Dirtdish

 

 FoetusことJG Thirlwell(本作ではClint Ruin名義)とSwansの元ドラマー・Roli Mosimannによるインダストリアル/ノイズロックユニットのアルバム(1987年)。

 

 Foetusが活動の拠点をロンドンからニューヨークに移した際に結成されたユニットの唯一のアルバムで、セッションプレイヤーとして活躍していたRobert QuineやSwansのNorman Westbergの両ギタリスト等も参加。何とも通好みのしそうなコラボだし、個人的にSwansは初期の方しか知らなくて、とてつもなく遅くて重い怨嗟の音楽というイメージがあったけど、本作に関してはそこまでマニアックなわけでもなく、小粋なギターやシンプルながらも存在感を放つジャンクなドラムで小気味よくロックンロールしてます。これ以前のFoetusの音楽よりも噛み砕かれフィジカルが強調されたような感覚があり、素直に入り込みやすい。そしてFoetusの型破りで奔放なボーカルは流石としか言いようがなく、一時も耳を離させないばかりの歌と咆哮。特に「Someone Drowned In My Pool」は彼の独壇場。前半はジャジーなムードに浸りきり、終盤で一気に音が増え怒涛の展開の中で同一のフレーズを叫びながら混沌としていく流れは鳥肌もの。また「0-0 (Where Evil Dwells)」は個人的にFear Factoryの強烈なカバーを先に聴いていたので、原曲の(これはちょっとSwansっぽい)抜き身のような迫力を確認できて満足(凄い曲!)。インダストリアル(ロック)に限らず、様々な影響を与えたレジェンドの共演とNYアングラシーンの熱量を記録した稀有な作品。ちなみに1995年の再発盤にはシングル盤の音源も収録。ミニマルビートが心地よい「Motorslug」は大好きな一曲。んで、あちこちで名曲とかFoetusのお気に入りとか言われていた「Death Rape 2000」の方は…これは…