MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Devin Townsend Project "Epicloud"

Epicloud

Epicloud

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 カナダ出身のヘヴィメタルシーンのマルチミュージシャン/プロデューサー・Devin Townsendのソロ通算15作目、Devin Townsend Project名義での5作目(2012年)。

 

 4部作構想とそれを実現するためのバンドとして新たに立ち上げられた本プロジェクトも、4部作の完成とその再現ライブをもって完走。しかしその後も同じ名義での活動継続を宣言し、僅か1年というインターバルでリリースされたのが本作。いやほんと創作意欲凄すぎやしませんか。そして内容も、過去4作のどれにも似ていない…というよりも、それらの要素を掬い上げ、新たなテーマで束ねることでまた一味違う世界観を完成させたような趣。ゴスペルクワイアの幕開けが示すように、今作では11人からなる合唱隊をフィーチャー。ここぞという部分以外ではそこまで大目立ちはしないけど、多重のコーラスワークとキーボードによって分厚く固められたヘヴィサウンドを全体の肝としています。メタリックな攻撃性や刺々しさはやや抑え気味なミキシングだけど、決してバンド感が希薄なわけではなく、Devin Townsendの十八番的な──ちょっと初期の頃を彷彿とさせるような──メロディックなヘヴィナンバーや軽快なロックナンバーも存在し、その中には09年作「Addicted」ぶりに参加した元The GatheringのAnneke van Giersbergenとともに男女ダブルボーカルを披露するパートも。逆にアコギやシンセを重用したアンビエント的な静寂曲、00年作「Physicist」収録の「Kingdom」の再録を始めとしたプログレッシブ風の楽曲などもあり起伏豊かで、曲間をシームレスに繋ぎ流れるように展開していきます。大仰でありながらキャッチーさに意識が配られ、特段長い楽曲もなく聴きやすくまとまっており、その完成度は流石の一言。壮大な "Epic" 、宇宙スケールの "Cloud" 、ヘヴィな "Loud" といった意味を重ねた造語タイトルも実に的を射た充実の一作。

 

 

 今回の記事に合わせ、Devin Townsendが結成し2007年まで活動していたエクストリームメタルバンド・Strapping Young Ladの3作目の紹介記事の文章を少々見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。

 

Stone Sour "Audio Secrecy"

Audio Secrecy + DVD

Audio Secrecy + DVD

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 SlipknotのCorey TaylorとJim Rootを擁するオルタナティブメタル/ハードロックバンドの3rdアルバム(2010年)。

 

 Slipknotの休止と入れ替わり活動再開、前作と同じメンバー・同じプロデューサー、約4年ぶり…と、条件で言えば前作と全く同じ形。しかしそれでも各人がしっかりと音楽活動を通じた成長を続け、前作の成功やその後の精力的なツアー/フェスの開催・参加など、Stone Sourとしても着実に階段を駆け上がっており、その成果が注がれた一作として非常に良質な出来かなと。Slipknotでのマスクを外した端正なCorey Taylorの素顔のように(えっ)端正なポストグランジ/ハードロックを今作でも貫いており、決して目新しいことはしていないとはいえ、彼らの中での表現として、新たな扉をいくつも開いて、より広く聴き手に浸透する楽曲やサウンドを達成しています。クリーンギターが活躍する「Say You'll Haunt Me」とか夕日が反射する水平線を思わせるようなスケールのアメリカンロックバラード「Hesitate」なんかは「うおお!」って思ったし、Slipknotをチラ見せするような激しめの曲も、ご愛敬というか余裕の中でやっている感じで、アコースティックバラードも大曲的な展開を見せつけるラスト曲もしっかり手の内、確信に満ち溢れていますね。Corey Taylorの歌とサウンドが乖離せず溶け合うように手を取り、一体感を増して(激しさとか速さという意味ではない)勢いにも乗っているのがありありと伝わるというか。流石でした。なお、本作は2010年初めに急逝したSlipknotのベーシスト・Paul Grayに捧げたアルバムでもあるとのこと。

 

 

 というわけで、聴いてみました彼らの3作目。恐らく初聴きだったと思うけど、いやー、とても良かった。今さらながらStone Sourに目覚めちゃったというか。これ以降の彼らの作品もゆっくりと追いかけてみようと思います。

 今回の更新に合わせ、Slipknotの4作目の紹介記事の文章を少し見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。なんかStone Sourと交互に聴いたりすると印象も変わるというか、より楽しめる気も?

 

Stone Sour "Stone Sour" "Come What(ever) May"

STONE SOUR

STONE SOUR

  • アーティスト:STONE SOUR
  • Roadrunner Records
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 Slipknotのボーカリスト・Corey Taylorとギタリスト・James Rootを擁するオルタナティブメタル/ハードロックバンドの1stアルバム(2002年)。

 

 Corey TaylorとJames RootがSlipknot加入前にやっていたバンドで、2000年に復活。過去にデモテープの制作歴はあったものの、本格的なアルバムは初となる本作がSlipknotと同じRoadrunner Recordsからリリースとあいなりました。最初はてっきり新しく始められたサイドプロジェクトだと思っており、いくらSlipknotが好きでもそこまで聴く余裕はあるだろうか…とか思っていたところたまたま「Bother」を耳にし、熱くて渋いアコースティックバラードという意外性とSlipknotとは異なる魅力を放つCorey Taylorの歌声にやられ、アルバムに興味を持ったという次第だったかなと。楽曲は概ね安定感のあるへヴィなロック、という感じで(雑だな)サビでメロディを聴かす曲、逆にサビはシャウトを叩き込む曲など織り交ぜながら進行。演奏面ではあまりエゴを出していないというか、あくまでもボーカルに寄り添いながら淡々と盛り立てていく形。1作目にありがちな粗さ・若さみたいなものは薄く、ある意味余裕すらも感じられるので、ストレートに言うとSlipknotとは一味違う "Corey Taylorの歌声" を聴かせるために設計されたようなアルバムというか。それ以上でも以下でもなく。当時はまだSlipknotではメロディアスな部分ってそんなに押し出されてはいなかったしアリではあるんだけど、そうなってくると曲数の多さが気になってくる…もうちょっと短くまとまっていれば(欲を言えば「Bother」みたいな曲もあと1、2曲あれば)もっと好きになれたかも。あ、ジャケットは好みです。すごく。

 

 

 

Come Whatever May

Come What(ever) May

  • アーティスト:Stone Sour
  • Roadrunner Records
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 SlipknotのCorey TaylorとJim Rootを擁するオルタナティブメタル/ハードロックバンドの2ndアルバム(2006年)。

 

 Slipknotの2005年末の休止を機に再々始動、翌年に1作目より4年ぶりとなる本作がリリース。当たり前だけどSlipknotと兼任するメンバーが要のためかそれぞれのバンドの休止と再開が交互に行われる形に。初期メンバーだったドラマーが家族の事情により脱退、後任はSoulflyなどで活動歴があり後にMinistryでも叩くRoy Mayorga。前作を踏襲しながらも楽曲の幅や拡げ方、聴かせ方などに工夫や進化がみられる一作で、現在においても彼らの中でセールス面や人気でも上位に位置するのだとか。歌モノとしての強化にはまず耳がいくところで、特に弾数の増えたバラードはどれも珠玉と言え、情感たっぷりに歌い上げる「Sillyworld」、決して派手ではないが沁みるフレーズを繰り返し熱を上げていく最大の人気曲「Through Glass」、締めに相応しいピアノバラード「Zzyzx Rd.」とどれもタイプが違い、かつシングル化されているというのも力の入り様が見て取れ、むしろ彼らの最大の強みはここではと思わせるほど。ロックしてる曲でも、時折Slipknotを若干彷彿とさせるシャウトが聴こえる瞬間はあれど、あくまでも聴きやすさを重視したバランスでまとめられており、かつ以前より練られたアプローチが多く飽きさせない。軽い挨拶に過ぎなかったような前作にてもうちょっと深掘りしてほしかった部分がしっかり抑えられた印象で、いよいよ本領を発揮してきた充実作と言えそう。もちろんその人の好みにもよるけど、Slipknotと比較すると激しくないという理由だけで捨て置くのは勿体ない優れたアルバムだと思います。何よりCorey Taylorの歌が素晴らしすぎるんだ…!

 

 

 前回記事に引き続きSlipknotを聴いていたらStone Sourの方も久しぶりに聴きたくなって、いざ聴いてみたら(主に2ndが)いいじゃん…!となってブログに感想を書いてみた次第です。リアルタイムで聴いていたときはSlipknot寄りだったし、もうちょっと激しめの音楽を好んで開拓していたので多少の物足りなさも感じたような覚えがあるのだけど(↑自分のことじゃねーか)、今聴くと…いやこっちも全然いいな!と手のひらくるりん。年月を経たせいなのかな。

 しかし管理人はStone Sourに関しては3作目以降はほぼ未聴だったり。今思うとSlipknotもそうだけど彼らのリリースペースが空いたことと管理人の興味がインダストリアルロックにどっぷりになった時期が重なったせいかも。というわけで、近々ちゃんと聴いてみようかな~と考えつつ、過去に書いたSlipknotの3作目の紹介記事の文章を見直したので、よろしければ合わせてご覧ください。

 

Slipknot "9.0: Live"

9.0: Live

9.0: Live

  • アーティスト:Slipknot
  • Roadrunner
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 アメリカ/アイオワ出身のニューメタル/オルタナティブメタルバンドのライブアルバム(2005年)。

 

 突然の自分語りですが、Slipknotは管理人がヘヴィミュージックにおける大きな洗礼を受けたバンドであり、初体験が音源とライブ映像がほぼ同時だったということもあって、その衝撃たるやもの凄かったわけです。なんせあの表情の読めないグロテスクマスクとお揃いのツナギを着用したメンバーが9人もいて、怒涛のライブチューンを連発しながら所狭しと圧巻のパフォーマンスで暴れ回るわけで。何よりも当時の管理人の思い込み──ニューメタル=地面にめり込みそうなくらい重たくした音をじっくりと鳴らしていく、みたいな価値観を一掃していく速さ・重さ・激しさの三位一体と、体を無条件に預けたくなるキャッチーさの不思議な同居がとても鮮烈で、一瞬で虜になってしまいまして。で、普段はよほど好きとか気になるとかコレクション癖が発揮された対象でもない限りはライブ盤まで追うことはあまりないのだけど、彼らの初のライブ盤である本作は、前述したライブ映像とのセットである思い入れも手伝って、そりゃもう迷わず手に取ったわけであります。これで脳裏に焼きついたライブ映像がいつでも脳内再生できる!(?)

 ここに収められたCD2枚分の楽曲は、28ヵ月に渡るワールドツアーの中から、衝撃のデビュー作やそれを上回るヘヴィネスの2作目、新たなアプローチを加え叙情性を高めた3作目と、ここまでの抜群の名作3枚のキラーチューンを等しく選出。ここだけでご飯3杯いける圧巻の代表曲連打の序盤、痛々しいまでの「Vermilion」、著作権問題でカットされた1st収録曲「Purity」、ドラムソロ、ライブ初演奏らしい「Skin Ticket」、6分半の長さに抑えられて気軽に聴ける長尺ドス黒曲「Iowa」、ライブならではのやり取りが垣間見える「Spit It Out」「Wait And Breed」…どこから何を再生してもこれ全て聴きどころ。ライブ効果で音源時では気づかなかった良さを発見するかも知れないし、黄金期のメンバーによるここまでの歩みの集大成としても楽しめそうな、ある意味ベスト盤よりベストしてるとも言える満足度の高さ。彼らの本質は奇妙な見た目やパフォーマンスではなく、ライブにおける底力だということを証明する逸品!

 

 

 ブログの過去記事の見直しをしていたところ、大昔(17年前…!)ちょっとだけ書いたSlipknotの記事に辿りつき一人懐かしく眺めながら久々にヘビロテし、今回の更新作業をしておりました。というわけで、よろしければ文章を少し直した過去記事のほうも合わせてご覧ください。

 

Hellsau "Vain"

Vain

Vain

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 元Swamp TerroristsのSTRを中心とするエレクトロニック/インダストリアルロックユニットの1stアルバム(1997年)。

 

 1995年にSwamp Terroristsからプログラマー・STRが脱退し、新たに結成した3人組のグループ。もの凄く大雑把に捉えると、Swamp Terroristsの延長というかエレクトロニック/打ち込みを中心としたインダストリアルダンスという点では共通しているけど、こちらではヒップホップ的な要素を無くし、4つ打ちのテクノ/ガバを基調とした直線的なビートを軸にグイグイと進む攻撃性がストレートに出ています。うち数曲ではSwamp TerroristsのAne H.がボーカルを執っているものの、あまりボーカルを全面に出すような形はとっておらず、インストもしくは半インストのような楽曲も多め。しかし、代わりに?より破壊力を増したスラッシュギターが主役のように陣取り、ジャングルビートやドラムンベースなどのアプローチを時折取り入れるなど、ソリッドな音使いや多彩な展開が秀逸。実験的というか色々手を出している・試している感はあるけど、決して途上ではなくこれはこれで一つの形を成し得ていると思えるし、退屈することなく聴き通せる…どころか、否応なく身体を突き動かされてしまいます。滾るゼ!Swamp Terroristsが好きであれば全く違和感なく入れるだろうし、CubanateやPitchshifterあたりにも通じるものを感じます。ポテンシャルを感じるだけに、本作限りで活動を終えたっぽいのが残念。

 

 

 このバンドはX(旧Twitter)で勧めていただきました。その時には「ああ、そう言えば音源持ってたっけな、結構好きだったし久々に聴いてみるかな」と思って後で確かめてみたら、HellsauではなくてHiltと勘違いというか混同していまして(なんじゃそりゃ)、Hellsauは未聴でした。しかしSwamp Terroristsのメンバーが違うバンドをやっていたというのは何となく知っていたので、昔どこかのレビューサイトで情報だけ知って、音源は未入手のままだったということなのかな多分。で、今回ちょろっと調べてみたら配信で容易に入手できるジャン!ってことで手を出してみました。良いきっかけを与えてもらい、有り難く思います。

 

 今回の記事に合わせ、過去に書いたSwamp Terroristsの紹介記事の文章を少々見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。久々にSwamp~を聴き直したらかなり格好良かったし、この勢いで未所持の音源揃えちゃおうかな。