ギルガメッシュ / gravitation

gravitation

gravitation

 

 4人組ロックバンドのミニアルバム。

 

 ベスト盤「LIVE BEST」でバンドのディケイドを走り終えた彼らの再スタートを告げるミニアルバム。1つ前の傑作盤「MONSTER」の手応えや、近年のラウドロック勢との対バン等の収穫を足掛かりに、より"激しさ""重さ"に焦点を合わせて一点突破。二部構成だった「MONSTER」の前半部分──音楽的にも精神的にも吹っ切れ、攻撃性に特化していた部分を更に突き詰めたバンド史上最重量級のサウンドインパクト大で、ヘヴィなリフが繰り出される中に道玄坂下り隊による女性コーラスとシンフォニックなシンセが谺する1曲目「Go ahead」からその印象は強烈。そんな形でメタルコアやポストハードコア(そしてインダストリアルメタル)の影響を昇華しながらも、これまで同様に愚直な日本語詞やJ-Pop的なメロディを大事にするという彼ららしいスタンスは健在で、比率や迫力を増したシャウトに埋もれることなく強みとして一層際立ち、総体としてはあくまでポップ。それが最も顕著なのがリード曲の「gravitation」で、彼らが一段上のステージへ上がったようなスケールアップを感じさせる、新たな代表曲に相応しい一曲。聴かせる曲を下手に混ぜず、攻めの手を緩めない曲だけをミニアルバムならではのサイズ感で一気に聴かせる部分も、本作の位置づけや彼らの決意が表れているよう。もはやヴィジュアル系なんて出自はどこ吹く風で、むしろCrossfaithやSiMなどが好きな人にこそ受けが良さそう。個人的にも「MONSTER」に続くバンドの進化が大いに感じられ、とてもとても好きな作品です。

 

Ray / RAYVE

RAYVE (初回限定盤)

RAYVE (初回限定盤)

 

 アニメソング系ボーカリストの1stアルバム。

 

 デビュー曲「sign」がとても好きだった。「Kanon」の主題歌や「鳥の詩」などの名曲を生み出した伝説のタッグ「作曲:折戸伸治 × 編曲:高瀬一矢」が数年振りに手掛けて話題になったし、タイアップ作品に重なる真夏の季節感や清涼感に溢れた情景を見事に描写した紛れもない名曲だったのである。続く2ndシングル「楽園PROJECT」ではド頭からサビの2段目で始まる曲構成がウルトラCだし、3rdシングル「Recall」では攻撃的なリフの裏で金属音がガキンガキンと大胆に鳴らされる(風)アレンジにひっくり返った。そして注目していたこの1stアルバム「RAYVE」。これは彼女のワンマンライブの名前なのだけど、本作に限って言えば「Ray + I've」なのは明白で、ここまでのシングル同様にI'veの作家陣が全面的にプロデュース。またKOTOKO川田まみ黒崎真音も詞を提供するなど、I've非所属ながらも完全にI'veが全力で力添えする形で制作。シングル曲に加えクールなダンスチューンや直球バラードあり、唱歌のような清純ソング「向日葵」(サビ3回とも歌い回しが異なるこだわりが最高!)、また電波ソングの「baby♥macaron」やラスサビ前に劇中台詞を発する「Sweet Days」など、アニソンとしてもI'veとしても見せ場の多い幕の内弁当的な構成で、散漫にならず器用に歌いこなすのもあってド安定の仕上がり。"夢見る乙女"的な甘い詞世界はかなりアイドル寄りでもあるけど、そこを正面から楽しめる人やI'veファンにとってはまず期待を裏切らない出来でニッコリ。流石に川田まみMELLのように「ロック好きにもお勧め」などとは口が裂けても言いません。でも個人的には、当時I'veへの興味が薄れかけていたのを一気に引き戻してくれた作品であり、2013年ベストアルバムに数えたいくらいお気に入りの一枚になったのでした。割とマジで。

 

Pitchshifter / PSI

Psi

Psi

 

 UK出身のインダストリアルロックバンドの6thアルバム。

 

 前作より約2年振りで、その間にもバンドの創設メンバーでもあったギタリスト・Johnny Carterの脱退~完全離脱、そして前作では空白だったドラムには、後にBullet For My ValentineのメンバーになるJason Bowldが加入するなど、細かいメンバーチェンジの続いた彼ら。新体制で完成した今作は、作風としては平坦なヘヴィロック化をしてしまった前作の延長ではあるけれど、出世作となった前々作「www.pitchshifter.com」(以下:.com)の勢いを取り戻そうとする気概も見られ、それを示すように「.com」のプロデューサーが再び共同プロデュースにクレジットされています。ギターの密度が高まったことや、大小様々なジャングルビートを乱れ打ちしていた「.com」ほどではないにしろ、同程度には複雑なリズムパターンを展開する場面が増えたことで、楽曲がビシっと締まり、スピードとダイナミズムに溢れた音像が戻ったのは非常に嬉しいポイント。歌メロも前作以上に意識され、そこを際立たせる構成/サンプリングも職人芸とも言える域で、それが如実に表れた先行シングル曲や後半の楽曲はまさに出色。一流どころのUSインダストリアル系ヘヴィロックに引けを取らず、一方でUKデジロック風の持ち味も失わず上手く折衷した上で完成度も高めてきたのは見事という外ないです。しかしこの後、バンドは活動を休止。これまでに何度か復活の噂が立ったり、自主レーベル・PSI Recordsを立ち上げ単発のリリースがあったものの、新作に関しては制作への意欲的な言及もありつつも未だに完成には至っていない模様。個人的にも興味津々だけど、本当に出るのかな?

 

SCHWEIN / SCHWEINSTEIN

Schweinstein

Schweinstein

 

 BUCK-TICK櫻井敦司今井寿、PIGのRaymond Watts、KMFDMのSascha Konietzkoによるプロジェクトバンドのアルバム。

 

 PIGことRaymond WattsはKMFDMの初期メンバーでもあるし、90年代中盤~後半ごろにはそれぞれお互いの音源制作にちょっとずつ関わることもあったりと、何かと縁のあったインダストリアルな3アーティストの中心メンバーにより結成されたプロジェクト。日・英・独の才能が集結ということでそりゃあもう夢が膨らむわけですよ。しかし、出来上がったものはその実恐ろしく地味!センス良く組み込まれるメタリックなギターリフ、小気味よいリズムトラック、巧みなエレクトロ/ノイズを駆使した楽曲はキャリアに根差した流石の安定感があるのだけど、既視感があるというか持ち寄った各々の特徴を掴んでいる分だけ想像以上の驚きもなく、根底にあると思われる官能・本能・醜さのようなテーマのせいか、どうもねっとりしたテンポ感や暗めのムードが先立つ。ボーカルにしても、Raymond Wattsはいつもの潰れたような唸り声だし、櫻井敦司も時折表情を変えつつも、基本はウィスパー~ローボイスで応戦するので、楽曲の華の無さに拍車を掛ける。つまり、遅い・暗い・低いと見事に三拍子揃っているのである。うーむ。決して出来が悪いわけではないのだけど、ちょっと肩透かし。120点を期待したら75点だった、みたいな。こういう楽曲がスパイス程度に挟まれるなら逆にニヤニヤするんだろうけど、まるっと1枚だとキツイ。勝手なモンですね。とは言え、この手のジャンル又は構成メンバーが好きなら一度は聴いておくべきアルバムだとは思います。ボーナストラックの「My Sanctuary」(PIGの代表曲のSCHWEIN版、当時車のCMで流れたとか)は、櫻井敦司の声が重なるサビが鳥肌モノ。あとはBUCK-TICKの中でも「97BT99」が大好きだという(アレな)人(管理人含む)にも(オイ)お勧め!色んな意味で、もう二度とないでしょうこんなの。  

 

MELL / Entrust ~the name of MELL~

Entrust ~the name of MELL~

Entrust ~the name of MELL~

 

 I've専属ボーカリストの編集盤。

 

 本作をもってI'veを卒業し歌手活動の休止となったため、初のベストアルバムにして同時にラストアルバムにもなった作品。大きく分けると「メジャー以降のシングル/タイアップ曲の多く」「インディーズ時代の代表曲や再テイク」「新曲2曲などの初CD化曲」で構成。既存曲の総括としてみるならアルバム曲からの選出が非常に少ないといった片手落ち感はあるけど、体調不良などもあり恐らくは想定外の休止となってしまった彼女の「3枚目のアルバム」としての価値も意識したようなラインナップは魅力十分。鮮烈なメジャーデビューを飾った「Red fraction」に始まり、大海のような包容力とスケールを感じさせる森岡賢作曲「MY PRECIOUS」を中心に配し、集大成的な「In The Name Of Love」に繋がっていくなど、曲順もアルバムの流れも実によく考えられているし、初CD化の楽曲も彼女の得意とするスタイルが散りばめられた期待通りのもので、その濃密な活動の成果が込められた充実の内容。彼女の発言からは「Red fraction」のような攻撃的なイメージ「だけ」が独り歩きすることを望まなかった節があるけど、事実、優しく包み込むような母性的な愛情や、凛とした歌唱の中で一瞬覗かせる可愛らしさなど色んな表情を見せてくれる人であり、もちろんそれは本作でも満遍なく感じ取ることができます。でも、インダストリアルロック同然のアングラ/ハードな英詞曲を堂々と歌いこなすあの衝撃も決して薄れるものではなく、改めて素晴らしい歌手だったとしみじみ。本作のキャッチコピーになぞらえて言えば、彼女の"堂々たる完結"のために、最後であり最良の一作を目指したまさに珠玉の作品。「インダストリアル・アニソン」よ永遠なれ!