PIG / Pigmata

Pigmata

Pigmata

 

 UK出身のRaymond Wattsによるインダストリアルプロジェクトの7thアルバム。

 

 PIGではなく新たにWatts名義で2004年にUKで発表したアルバム「Pigmartyr」をリマスター&新曲を3曲追加し、「Pigmata」に改題してPIG名義で翌年USでリリースし直したもの。リアルタイムで追った人にはお騒がせな作品かも知れないけど、どうやら「Pigmartyr」の方はレーベル側の不備で音質や販売等の面で不遇だったようで、再発によってその辺りが救済されたような格好らしいです。そんな本作、確かに音が良いというかクリアで迫力十分で、自然に耳がいくのがラウドなギターとドラム。近々の制作陣に新たにKMFDMのドラマー・Andy Selwayを加えたことで、ほとんどKMFDMになり まずドラムが目立つ。タム回しからバスドラ連打、そしてクラッシュをバシバシ打ち鳴らす仕事ぶりは、過去の打ち込みメインのPIGには無かったアグレッシブさ。そしてギターに関しても、以前までの"PIGの音像を作り上げるパーツ"的な取り入れ方とは異なり、本作では完全にサウンドの要で、総じて「バンドサウンド」「ライブ感」が強調されたかのようなスタイルに。ダークで激しめのサウンドはそれだけで一定の格好良さがあるけど、元来の低く潰れて唸り声同然のボーカルと同化しまくってやたらヘヴィだし、オーケストレーションのアレンジやラテン系の楽曲などのお家芸アプローチも影を潜め、テンポもそう速くないので、全体としてはその統一感が裏目になり地味な印象が先行してしまうのは否めないところ。そこがやや残念ではあるけど、個人的には結構好きな一枚。ちなみに、藤井麻輝と共作しSCHAFTで発表した「Arbor Vitate」と、櫻井敦司のソロ作に提供した「YELLOW PIG」のセルフカバーも収録されているので、興味がある方は聴き比べると面白いかも。

 

101A / LETHE

lethe

lethe

 

 3人組ポストロック/シューゲイザーバンドの3rdアルバム。

 

 サポートドラマーとして参加していたSallyが2007年に正式に加入、3人体制となってからは初となるアルバム。だからというわけでもないだろうけど、まさに満を持したというか、バンドの本領発揮を感じさせる力作となっています。オープニング「雪の世界」から、軋むようなギターや変則的なリズムの妙、そしてそこに乗るnoahの溶け入るようなボーカルによって幽玄な空間が作られ、いきなり緊張感はMAX。その後も、アルバムの世界観を露にする朗読のトラック「LETHE」を挟み、ラフでヘヴィなグランジをバックにnoahが挑発的なボーカルで暴れる中盤にしても、相反したギターによるサウンドスケープに甘いウィスパーボイスを乗せたシューゲイザーを放つ終盤にしても、楽器の鳴りや響きの細部まで気を払い、混沌・虚無・恍惚といった具合に表情を自在に変化させるサウンドメイクと流れの良さで、聴き手の心を侵食していくかのような魅力を放ち続けます。ラストの「lull」は1stアルバム収録曲「mekuraauwo」のリメイクにあたるのだけど、それを聴き比べると彼らの進化具合がよく分かるし、本作には、例えば前作で言う「grief coast」「corona」のような歌メロが立っていて比較的聴きやすい曲はないと言えばないけど、個人的には全く物足りなさを感じないほどに惹き込まれました。acid androidyukihiroも絶賛したという逸話もあるようで、その界隈のインダストリアルやポストロック、あとは睡蓮とかが好きな人にはとっても相性が良さそうな一枚(ただし入手困難)。

【23:00追記】iTunesで購入できるとのご指摘を頂きました。ありがとうございました。

 

川田まみ / MAMI KAWADA BEST BIRTH

MAMI KAWADA BEST BIRTH (通常盤)

MAMI KAWADA BEST BIRTH (通常盤)

 

 I've専属ボーカリストの編集盤。

 

 キャリア初となるベストアルバム。その内容はメジャーデビューから本作発売前後までの約8年間におけるシングル曲を"ほぼ"網羅し、終盤にインディーズ時代の楽曲と新曲を収録したもので、実質的にはシングルコレクション+αという形。それを彼女のベスト盤と呼んでいいのかという疑問はさて置くと、一つの作品としては文句なく素晴らしいもの。それは別に彼女のアルバム曲が不要だとかそういう意味ではなく、大型タイアップと二人三脚でじっくり作り上げてきた彼女のシングルヒストリーが、そのままI'veサウンドの進化の歴史とリンクしたという事実。既に同I'veで活躍中だったKOTOKOとの差別化も(初期は似ていたと評されていた)恐らくは課題だっただろうけど、1stシングル「radiance」でその回答を見せ、バラード「赤い涙」で落とし、パンキッシュな「Get my way!」やハードロッキンな「JOINT」で加速し、テクノロジーとロックが高次元で融合した名曲「No buts!」に繋がるなど、彼女とI'veの音楽性が完成していく様が手に取るように感じられるんですね。そこにはシングルをただ並べただけとは思えない聴き応えがあり、彼女の成長譚を追体験するようでもあり。特に中盤以降の楽曲の並びは圧巻の完成度。インディーズ(PCゲーム)曲も、彼女のボーカルデビュー曲の再録や代表曲「eclipse」等、最低限ながらも抑えるべき曲が並ぶ。後に引退に合わせた3枚組のベスト盤も出たけど、手軽さや入門用としての価値は依然高いし、選択肢の難しさから悩ましい出来になりがちなI've専属歌手のベスト盤としては1、2を争う程にお勧めできます。

  

Pain / Dancing With The Dead

Dancing With the Dead

Dancing With the Dead

 

 スウェーデン出身のメロディックデスメタルバンド ・Hypocrisyのボーカリスト/ギタリスト・Peter Tägtgrenによるインダストリアルメタル/シンフォニックメタルプロジェクトの4thアルバム。

 

 1曲目「Don't Count Me Out」のズンズンと刻まれるギターという始まりからして、過去作の音像とは一味違うような印象を抱かせる幕開け。より重心を低くしてヘヴィな質感を強化し、時にうるさいくらい耳に刺々しく響く轟音メタルサウンドがベースにあるというだけでも、かなりサウンド面でのインパクトは増しましたね。このプロジェクト自体、Peter Tägtgrenが一人で全てのバックトラックを制作しているのだけど、よりバンドサウンドが頼もしく強固になったというか。その他でも、デジタル/エレクトロニックな装飾は要所要所で目立ちすぎない程度に、かつ絶妙に楽曲を補強し、一方で前作から全面的に表に出始めたシンフォニックなストリングスも、曲によってはバンドサウンドを包み込むかのように遠慮なく存在感を示す。PainをPainたらしめる1つ1つの要素に対し磨きをかけた結果、楽曲に更なる広がりや深みが生まれ、独自のメロディセンスも相まって、より進化を遂げたような格好になっています。ヒットシングルの「Same Old Song」や、ピアノも取り入れた叙情的なアップチューン「Not Afraid To Die」などの佳曲には、それが顕著に表れています。彼自身、高い評価を受け広い分野で活躍するミュージシャンであり、Painという単位でも特に2作目以降はここまでどれも優れた作品(特に2ndはキャッチーさで言えば本作以上)なのだけど、本作では総合的にそれらを超え、1つのピークを迎えたと言っていいでしょう。 インダストリアル/シンフォニックメタルの名盤!

 

BUCK-TICK / RAZZLE DAZZLE

RAZZLE DAZZLE

RAZZLE DAZZLE

 

 5人組ロックバンドの17thアルバム。

 

 本作の制作時に前作「memento mori」が一種の集大成だったいう気づきがあったり、そのツアーにおける収穫等も反映し、本作の方針を固めたというエピソードがあるようです。その結果、より単純にライブでノれるものだったり、ダンサブルなビートを追求しつつ、「ディスコ」をキーワードに下世話な喧噪や80年代風のアプローチも盛り込んだ意欲的なサウンドの構築に成功。いかにもB-Tらしい世界を打ち出した黒い曲を始め、そこから逸脱した曲をいくつかは挟みつつも、CUBE JUICE長尾伸一)の手によってアルバム用にチューニングされたシングル曲も含めベースとなる作風は一貫されており、「馬鹿騒ぎ」というタイトルが付けられたのも納得のダンスロックアルバムに。文字通り緊張感や刺激というよりは快楽的ムードや遊び心の方に耳が行き、中でも受精をモチーフにした「狂気のデッドヒート」における櫻井敦司の絶叫までもを歌詞の一部にするという離れ業や、「BIBBIDI-BOBBIDI-BOO」なんてワードが飛び出すラテンナンバー「Django!!! -眩惑のジャンゴ-」辺りは特に痛快極まりなく、コミカルの域にまで行った表現には驚きさえも覚えます。櫻井敦司今井寿が歌詞を持ち寄ったという「TANGO swanka」も、そんな本作ならではの試みという感じ。一概に全てがそうではないとはいえ、絞ったテーマで15曲というボリュームはさすがに中ダレしてしまう面は否めないけど、集大成的な作品の後でもその勢いをとどめない彼らのバイタリティには敬服するばかりです。