BUCK-TICK / 或いはアナーキー

或いはアナーキー(通常盤)

或いはアナーキー(通常盤)

 

 5人組ロックバンドの19thアルバム。

 

 先行シングル「形而上 流星」にしても本作にしても、タイトルにまず妙に気を引かれますね。しかも本作、本来は「(  )-或いはアナーキー-」と"表現不可能なモノ"の副題的存在なんだとか。入り組んだ設定にそそられます。そしてテーマは"ダダイスム"と"シュルレアリスム"。なるほど、わからん。初っ端の「DADA DISCO -G J T H B K H T D-」からして、演奏も歌唱も歌詞も人を食ったようなオープニングでクラクラ。そういった暗号めいた仕掛けや芸術/思想に関連するワード(「キャバレー・ヴォルテール」とか)が全体に散りばめられ、サウンドの方も近年ではやや控えめだった実験志向やエレクトロ/デジタル要素が盛り込まれている部分にまず目(耳)がいきます。それは15th「天使のリボルバー」以降、分かりやすさに軸を置いてきた展開を自ら放棄するかのようでもあり、それを"(既存の常識の)破壊"という前述のテーマにもなぞらえているようです。しかしそこに固執した難解な作品という訳では全くなく、多彩な楽曲があり、その聴き心地はあくまでもポップ。こんな音楽を平然と(見えるように)やってのけるのは、もう脱帽と言う外ない!粘っこいシンセベースとハンマービートで珍しく?実直にEBMへアプローチした「Devil'N Angel」は特に好きな1曲だし、森岡賢が弾くピアノと共に逆説的に希望を歌う「世界は闇で満ちている」から詞曲ともに広大な「ONCE UPON A TIME」へ続き、アルバム名じゃないけど"得体の知れないモノ"が櫻井敦司に憑依したかのような「無題」でその空気が塗り潰され、「形而上 流星」の別アレンジ版でエンディングという終盤の流れも、数あるB-T作品の中でも格別で、間違いなく傑作だと確信せずにいられない。

 

I've / Evidence nine

I've Girls Compilation vol.9 「Evidence nine」

I've Girls Compilation vol.9 「Evidence nine」

  • 出版社/メーカー: I've
  • 発売日: 2014/09/26
  • メディア: CD
 

 アニメ/ゲーム系の楽曲を中心に制作するクリエイターチームによるGIRLS COMPILATIONの第9弾。

 

 I'veの本線とも言えるガルコンシリーズとしては約2年振りの9作目。パワフルかつアッパーに突き抜けていく頭のKOTOKOラッシュは掴みとしてかなり良いと思いつつも、あ、そうか、彼女はI'veから「卒業」したのではなくあくまで「独立」したのであって、だから今後もこうやってI've名義の作品に収まる歌手活動も並行するんだなと改めて気づく。頼もしく思う一方、一通り聴き終えると、結局最初のKOTOKOに対抗できる曲の少なさに物足りなさも抱く。思えば前作は、I'veベスト盤を挟み、黄金期を支えた専属歌手の主力の多くが卒業/独立した後の1作目でもあり、そこで"新しいI've"を体現するような仕掛けやラインナップが感じられたけど、今回はそこに続くまでに至っていないかなぁ。まぁ前作で重要なピースを担った詩月カオリMAKOがこの間にI'veから離脱したというのも大きいのだけど、その穴を埋め切れてないというか。楽曲の方にしても、川田まみによる良メロバラード「Timeless time」など良い曲はあるものの、手堅い楽曲がズラーっと並ぶ中盤以降は集中力が切れてしまう。1つ1つの曲は決して悪くないけど、それが集まったときの化学反応──1作品としての魅力はちょっと物足りないかな。唯一、KOTOKOと渡り合えていたと言っていいのはラストを飾る新人・柚子乃で、ガシガシとギターを効かせ間奏ではラップまで披露する高速4つ打ち「サブリミナル・アジェンダ」、じっくりと腰の据わったエレクトロニック/ダンスロック「Evidence nine」と「これこれ!」と喜びたくなる攻撃的な楽曲を連発する幕引きが格好良く、早くもその存在感を証明してくれました。

 

Celldweller / Soundtrack For The Voices In My Head Vol. 02

Soundtrack For The Voices In My Head Vol.02

Soundtrack For The Voices In My Head Vol.02

  • アーティスト:Celldweller
  • 出版社/メーカー: Fixt
  • 発売日: 2014/03/01
  • メディア: CD
 

 US出身のKlaytonによるインダストリアルロック/エレクトロニックロックプロジェクトのインストアルバム第2弾。

 

 映画やゲーム等での使用等を目的とした楽曲を中心とするインストアルバム「SVH」シリーズの4年ぶり2作目。制作は(本線の)2ndアルバムと並行する形で始まり、2010年から2ndと同様に数曲ごとにパッケージしてリリース展開し、2012年に最終的に1つの作品として完成。シングルで別途先行発表されていた楽曲までも含めると、既発曲が大部分を占める形になっています。まぁそこまで細かく追っていないので全て新曲感覚で聴くとして、前作(Vol. 01)と比較すると、Klayton節としか表現しようのない期待通りの良曲の連続という点は共通ながら、前作はまだロックバンド的だったのに対し、こちらはダブステップ/トランス色が濃くなり、よりエレクトロ重視になっており、本線のボーカルアルバムと同じようにアップデートされているのが分かります。あとは全体の見せ方として、前作の特徴でもあった同じ曲の別アレンジを定期的に挟む演出や、後に2ndに収録された純ボーカル曲「Birthright」のデモやリミックスやインストを盛り込むサービス?なんかも今回は無く純粋に楽曲集という感じになっているけど、潔くて良いと思うし、そこで物足りなさを感じさせないっていうのも本作のクオリティの証明かと。何と言っても派手な楽曲がひしめいた後、終盤にCelldwellerとしては過去あまりなかったアンビエントバラード(未発表曲)が連なり、雰囲気を落として切なく終わっていく流れがめっちゃ心に来る。実はここが本作の要なのかも。さすがに20分間ずっとシンセノイズが続くラスト曲はどうかと思うけど。思わずDevin Townsendかよ!と突っ込んでしまった。

 

harshrealm / [fahrenheit/vers la flamme]-integrated-

EP[fahrenheit/vers la flamme]-integrated-

EP[fahrenheit/vers la flamme]-integrated-

  • アーティスト:harshrealm
  • 出版社/メーカー: LEGITIMACY records
  • 発売日: 2014/11/30
  • メディア: CD
 

 4人組インダストリアル/エレクトロニックバンドのミニアルバム。

 

 約3年前にリリースされた同名EPの改訂盤。本作より、以前からライブやレコーディングに参加していた人物を正式メンバーに迎えるなどし、FINNのソロプロジェクト状態から4人組のバンド体制に。…多分。情報が少なかったり残ってなかったりでよく分からん。いずれにせよ新たなスタートを切る作品と解釈できるけど、実際に聴いてみると「note」みたいに曲構成に大きく手の入った曲もあるにはあるけど、その他は一部のアレンジに若干手が加えられたり、リミックス曲が1曲追加されたくらいで、中身はほとんどそのまま。編成はともかく音楽面では前作の(インダストリアルロックからテクノ/エレクトロへ移行した)時点で線は引かれていたということなのかな。ただ、ミックス?を見直したのか、各楽器が段違いなまでに前面にグッと出て迫力が向上したのは嬉しい。この頃から中心人物・FINNの嗜好や影響元としてUnderworldDaft Punkが色濃くなったようで、その辺りがストレートに反映されたとのこと。あまり詳しくないけどUnderworldは何となく分かる気が。当時、本作と並行して配信された過去曲の大胆なリアレンジ版と合わせて聴くと、彼らの真意というか決意がより明確に感じられます。陰鬱さを和らげスタイリッシュに…同じ楽曲なのに闇と光って感じで。それでも"ハーシュイズム"とでも言うのか、日本のアーティストながらRazed In BlackやFiXT系アーティストにも通じるようなサウンド/メロディセンスは健在で、個人的には以前の作風の方が好きなのに変わりはなくとも、やっぱり心惹かれる音楽ですね。 

 

Ray / Milky Ray

Ray/Milky Ray<通常盤>

Ray/Milky Ray<通常盤>

 

 アニメソング系ボーカリストの2ndアルバム。

 

 I'veが全面的にプロデュースした1作目からきっちり1年ぶりのリリース。今回はシングル2曲をI'veの中沢伴行が手掛け、それ以外は全てI've外の作家によるもの。もともとが専属ではないので、そういう意図の制作も自然な流れだと思います。ただ、I'veほどこってりしたサウンドではないだけで、シンセや打ち込み等を駆使したアイドルポップ/ガールポップという軸に大きな変化はないし、参加した作家の総数も前作比で1人しか違わないので、作品の紹介文で「より多彩なサウンド」等と書いてあったりするのはちょっと大げさじゃないかなと(笑)。いや、それ自体はいいんですけどね。そんな中でもテクノポップの「Magical革命Girl Rainy Ray」やUKハードコア調の「twin portion」なんかは、前作になかったタイプな上に飛び抜けて印象に残り、本作に幅を与えた佳曲と言えます。さすがに前作の金属ぶっ叩きまくってた「Recall」には及ばないけど(あれはおかしい)。それから「ebb and flow」でタイアップのシリアスバラードに台詞を挟んだのもチャレンジングだし、アルバムの頭と終わりを同じ曲「lull」の異なるバージョンで挟んでいるのも、本作ならではの流れって感じでかなり良いですね。そしてライブで映えそうな曲や掛け合いを想定したようなパートが地味に増えているのは、前作以降でのワンマンライブを経た自信や収穫の表れかも。個人的にはどうしても大好きな1作目に軍配が上がるけど、そこで彼女を知った人にとっても期待を裏切らない、初めて聴く人にも聴きやすそうなバランスの良い一枚だと思います。