MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Geezer / Black Science

Black Science

Black Science

  • アーティスト:Geezer
  • Tvt
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 Black Sabbathのベーシスト・Geezer Butlerを中心としたヘヴィメタル/インダストリアルメタルバンドの2ndアルバム(1997年)。

 

 1stアルバムの名義「g//z/r」から打って変わって本作では「Geezer」名義でのリリース。ジャケットの不気味な手はBlack Sabbathの楽曲「Hand Of Doom」からきているようです。約2年のスパンを経てリリースされた本作では、ボーカリストが交代。本隊に専念するということでFear FactoryのBurton C. Bellが離脱し、代わりにClark Brownという新人?らしき人物を起用しています。聴いた感じだと無名とは思えない巧さというか、激しいサウンドに全く引けを取らない安定感と熱さが感じられ相性は良好。グルーヴメタルに詳しくはないので自分の好きな範囲で強引に例えると、Die KruppsのJürgen Englerにも通じるものが。もうちょっとその言で続けると、今作は全体的なサウンドメイクも変化がみられ、厚みがいくらか減った分より不気味な存在感を放つベースラインや、端々でアクセントになるメタリックな打ち込み/ドラムの音色などがフィーチャーされるなど、Die Kruppsが好きならばまず外さないインダストリアルメタル寄りになっていると言えます。とは言っても凄く似ているだとか、例えば当時ありがちだったNine Inch NailsやMinistryを手本にしたんだろうなーというのが透けて見えるようなタイプでもなく、元々備わっている重苦しい雰囲気を生かしながら程よく底上げしているのがとても良い感触。Geezer Butlerやヘヴィメタルのファンにどう映るかは分からないけど、インダストリアルメタルとしてはなかなかの注目作かと。

 

101A / one day

one day

one day

 

 2人組(当時)ポストロック/シューゲイザーバンドの2ndアルバム。

 

 バンドが始まってからこの作品まではボーカル/ギターとベース/プログラミングの2人体制で、本作のドラムにはセッションドラマーを複数人迎えて制作された模様。前作から2曲をリテイク収録していることも示す通り、轟音と浮遊感を行き来する冷たいポストロック/シューゲイザーサウンドは、前作の路線を継承したと言えるもの。2005年以降はヨーロッパ方面でも活動を開始したとのことで、そこに海外での活動もフィードバックし、改めてバンドの音楽を形にした作品といった趣き。激しさを押し出した楽曲はライブだといい感じにトリップしそうだなと思わせるダイナミズムが備わり、ダウナーな楽曲はブリストルサウンドに接近することで、新たな領域に踏み込んだかのよう。背景に溶け込むような儚い囁き声や、一気に感情を暴発させるような叫びを使い分けるnoahのボーカルも相まって、全体に通底するのはとことんまでディープな空気感。それは本作中では比較的流麗なメロディを聴かせる「corona」や、サックスを取り入れたインプロ風のラスト曲「neo」まで一貫したものがあり、揺るぎないバンドのスタンスを証明しています。acid androidとDEF.MASTERを兼任するメンバーも好意的なコメントを寄せていた(と思う)し、 インダストリアル系が好きな人にも響くものはあるかも。

  

Outer / Outer

Outer / Outer[DVD付]

Outer / Outer[DVD付]

 

 I'veのクリエイターとKOTOKOによるI've派生パンク/ロックバンドのミニアルバム(2011年)。

 

 コミックマーケット80で限定販売された、発表済みのOuter名義の楽曲に新曲を加え一枚にまとめた「最初で最後のミニアルバム」。当初Outerは謎に包まれた存在とされ、後にKOTOKOとI've作家陣によるバンド体制のユニットだと判明。実はKOTOKOのボーカルデビューはソロとしてよりもこちらが先だったという事実も示す通り、I'veの中でもかなり初期から存在していました。音楽的にはI'veのパブリックイメージからほど遠く、ギターを効かせたシンプルなロックや勢いあるパンク風ロックがメイン。恐らくKOTOKOの作風としてはほとんどここでしか聴けないもので、ある意味貴重。ドラムは基本打ち込みだろうけど、パンキッシュに2ビートで疾走したり、ギターをズンズン刻んだりは普段のI'veではまず見かけないバンド感全開のアプローチだし、I'veのお家芸のエレクトロニックな楽曲もマニアックかつ攻撃的なアレンジで(Sonic Youth「Dirty Boots」のインダストリアルメタル風カバーは特に顕著)、「ソロ名義ではやれない尖った曲をやるユニット」みたいな異色さが、一枚にまとまることでより際立つものになっています。ファンアイテムの域を出るものではないけど、KOTOKOのボーカルが好きなら聴く価値は多いにあるかと。

 

KMFDM "Opium"

Opium

Opium

  • Metropolis Records
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 ドイツ出身のインダストリアルバンドの幻のデビュー作(1984年/2002年)。

 

 当時カセットテープで密かに流通したものらしく、それを再編集/リマスターし2002年に(その後2013年に再度)CD化したアイテムで、12thアルバム「WWIII」の国内盤には特典として付属していました。お得!彼らはインダストリアルメタル/ダンスの代名詞的存在に上り詰め一時代を築いたけど、実は意外にも "出がThrobbing Gristle" のようで、最初期はアートパフォーマンス集団として実験的な音楽やライブをやっていたようです。そんな出自が最も反映された本作は、サンプリングや雑音に近い電子的な残響音などが跋扈するなかなかマニアックな世界。普通に歌われる曲は少ないけど、全体的にダブ/レゲエ的な要素が早くも散見される点は後のKMFDM(特に「UAIOE」)に繋がるものがあるし、PIGとしてデビューする前のRaymond Wattsがボーカルを執った楽曲はまるでPIGの原型。他にもまんまDAFなハンマービート曲、いかにもThrobbing Gristleな不気味なノイズ曲などもあり、総体としては結構カオス。音楽的にもだけど、バンドの進む道がいかにも模索中という部分でもまさに実験的というか。それ故に後に確立していく音楽性の面影も掴みどころもないけど、一部のトラックや音質の調整の甲斐もあって、個人的には今聴いてもグッとくるものがある一枚です。興味深さしかない…!

 

harshrealm / [a beautiful game/prologue for films]

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 FINNを中心としたエレクトロニック/インダストリアルプロジェクトのUSBシングル(2011年)。

 

 未発表の新曲「a beautiful game」と、映画へ提供したサウンドトラックの2種をパッケージしたUSBメモリ限定作品。前者は「インダストリアル回帰」を謳った楽曲で、2009年にはライブで披露されていたらしく、その頃──ダンス/エレクトロニック系へ移行する前の作風の延長を感じさせます。等間隔で鳴り響く前奏/後奏の金属音や、複雑なリズムパターン、珍しくゴリゴリに迫りくるヘヴィなギターリフの応酬がインパクト大で、なるほどライブ感に溢れた過去最高にアグレッシブな楽曲。もちろんテクノロジーの魅せ場も大小問わず全編に存在し、その均衡のとれたサウンドの完成度やTim Sköldを思わせるさりげなくもメランコリックな展開と歌メロは、さながらMDFMK(KMFDMではなく)のようで文句なしに格好いい。個人的には彼らの中でも1、2を争うほど好きな曲だし、日本のインダストリアルロックとして見ても名曲に指定したい。しかし他のCDへの収録や配信は一切行われておらず、何本限定生産か知らないけど現在入手不可能のこのUSBでしか聴けないという。このまま存在が忘れられてしまうのは非常に惜しい一曲なのであります(2015年には現体制によるリメイク版が配信されたけど、原曲の荒々しさやバンド感は消失)。「prologue for films」の方はピアノの独奏の全16曲。こちらは特に何てことはないけど(えっ)、余韻を大切にした物静かなサウンドが心地よいです。