MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Filter 『Remixes For The Damned』

 US/オハイオ出身のオルタナティブロック/インダストリアルロックバンドのリミックスアルバム(2008年)。

 

 4thアルバム『Anthems For The Damned』のリミックス盤で、オリジナル盤と同年に配信リリース。Richard Patrickが自らのルーツに立ち返るためという動機のもと、複数のミュージシャンを招聘し制作されています。ただ、インダストリアル界隈で名を馳せる人物はMinistryやRevolting Cocksに参加したClayton Worbeckくらいで、他は前作のプロデューサーを始め職業作家やレーベル所属のエンジニアなどで固められた、ある意味地味な布陣。しかしこれがなかなか侮れなくて、ありがちなデジタル/ダンス系に終始せず、しっかりと原曲の骨子を生かしながら別物として魅力的なリミックスに仕上げられています。ボーカル/メロディという彼らの強みをあえて封じて混沌とさせたノイジーなエレクトロ/インダストリアルロックもあれば、歌をほぼそのまま持ってきてリズムレスのアコースティック/アンビエントなど真ん中バラードに作り変えたもの、あるいはEBMを現代的に解釈した風やトリップホップを取り入れた軽快な打ち込みもあったりとアプローチの幅が広い。それでいてどれも派手な改変という印象はなく、音数を削いだ手堅いアレンジやアンビエント的な空間処理など割と共通するところがあり、しんみりと聴けるものからクラブ向けのものまで揃えつつ全体を通してバラバラに感じさせない工夫も上手い。Filterとして早くも盤石すぎる音楽性が固まってきたタイミングで、原曲の再解釈とバンドの可能性を同時に示したような、リミックス盤というよりも4thアルバムのVer.2.0と言い換えても遜色のない隠れた良作だと思います。

 

 

 今回の記事に合わせ、過去に書いたFilterの3rd~4thアルバムの紹介記事の文章を少々見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。