MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Devin Townsend Project 『Z² (Sky Blue / Dark Matters)』

Z

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 カナダ出身のヘヴィメタルシーンのマルチミュージシャン/プロデューサー・Devin Townsendのソロ通算16作目/Devin Townsend Project名義での6作目(2014年)。

 

 2009年に4部作構想のためにこのバンドプロジェクトが立ち上げられたその裏で、同時期からその4部作とは全く別のアルバムプロジェクトが動いていたようで、それが完成に至ったのが本作。内容は2007年のソロ名義作『Ziltoid The Omniscient』の続編であり、同様のコンセプチュアルなロックオペラアルバムになり、しかもダブルアルバムという形態でのリリースという要素の盛りっぷり。元々そういう人だとは分かってはいたけど、どれだけ多作でどれだけ働き者なんだよと改めて驚かされます。しかし2枚組と言っても一つの表現を分けたものではなく、Disc-1はDevin Townsend Project名義での『Sky Blue』というアルバムで、Disc-2がメインとなる『Dark Matters』という、まるで独立した別々の作品がパッケージされ、テーマも作風も異なる2作を対とすることで一つの壮大な世界観を浮かび上がらせるのが目的のようです。いやー、凄そうだなとは感じるけどもはや何がなんだか。とりあえず、一作品ずつ見ていくことにしましょう。

 

Sky Blue

Sky Blue

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 こちらは『Z²』のDisc-1で、Devin Townsend Project名義での『Sky Blue』というアルバム。前作『Epicloud』を制作した布陣や、2009年作『Addicted』からゲスト参加の女性ボーカリストとしてすっかりお馴染みとなった元The GatheringのAnneke van Giersbergenの存在が示す通り、一聴した印象としては『Epicloud』のコーラスを用いた壮大さと『Addicted』のポップでストレートな聴きやすさの折衷という感じ。境界をなくすように溶け合うシンセとコーラスによって重厚に塗り固められた、光り輝くような綺麗な音の壁とも洪水とも言えるサウンドや、囁きから咆哮まで自在に行き来しながら、Anneke van Giersbergenと主役を分け合うDevin Townsendの包容力抜群のボーカルなどは、特にDevin Townsend Project以降の彼の作風ど真ん中の芯にあたる部分とも言えるし概ね期待通り。ただ逆に言うと本作ならではの目新しさには若干欠けるかも。だけどそれが決して物足りないというわけではなく。特長の割にはヘヴィメタル/シンフォニックメタルに寄っているような激しさや仰々しさは控えめだし、かといって『Addicted』ほどコマーシャル特化というほどでもないバランス感覚はそれはそれで新鮮味があり、前々作『Ghost』にて色濃かったアコースティック/アンビエントなアプローチも織り交ぜながら、近々の作品の要素が程よい比率で融合したプログレッシブヘヴィポップ(?)という感覚で聴けてかなり好印象。タイトルに引っ張られているのは否めないけど、全体を通して雲を抜けて青空を飛んでいるような飛翔感が爽快。合唱隊のコーラスを背負ったボーカルと見事な曲展開で大団円を迎える「Before We Die」はもはや圧巻!

 

 

 

DARK MATTERS/STAND-ALONE

Dark Matters

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 Disc-2のこちらが、2007年作『Ziltoid The Omniscient』の続編であり、自身を投影した架空のキャラクター「Ziltoid」が主役のメタルオペラ作品『Dark Matters』。そのストーリーまで詳しくは追っていないけど、何やら宇宙規模のSF大戦争を描きながらもコメディやシニカルさなども詰め込んだユニークなエンタメものになっている…のだとか。しかしこれ、管理人のように“音だけ楽しむ”派にはかなり賛否が分かれそうな内容。というのも、本作は基本的にナレーションや作中の登場人物の演技/台詞が最も前面に出てくる形になっており、合唱隊や多数のゲストボーカル、著名な管弦楽団によるオーケストラとともに超がつくほど豪華絢爛に作り込まれたシンフォニックでプログレッシブでアヴァンギャルドなメタルの完成度(と変態度)は相変わらず凄いけど、それすらも「あくまでも物語を演出するBGMというパーツの一つ」という扱いでしかないことに2~3曲聴いたところで気づかされます。全体が僅かに奥まったところで鳴っていて、声劇のない場面であっても“いつ入ってきてもいいようにスペースを空けている”ような感覚。過去にもあったナレーションが挿入されるコンセプト作品では楽曲の最後の方で補足的に流れていたのに対し、今作は完全に主体。あー、そういうアルバムなんだ、と。Devin Townsendの演じ分けや歌い分けで、いつもよりダークなサウンド中での女性ボーカルとの絡みがちょっと美醜の対比的なゴシックメタルっぽかったり、低音の歌声とアグレッシブなサウンドの場面はRammsteinっぽかったりと部分的に割と珍しいアプローチもあったりするし、ラストへ向かっていく怒涛の超展開っぷりは本当に凄いことになっていて驚かされるんだけど、お話を理解する気がなければ心から楽しむのは難しいかも。

 

 

 なお本作のコレクターズエディションだと3枚組となっており、Disc-3には『Dark Matters』の声劇を除いたバージョンが収録されているようで。やっぱり確信的にそういう試みをしたということなんでしょうね。しかも翌年に『Sky Blue』と『Dark Matters』は単品で発売されたのに対し、Disc-3を単品で聴ける機会は現在も特にないっぽい。うーむ残念。そもそもこのアルバム自体、ラジオ番組やコミカライズ、映像や特別なライブショーなど色々な媒体で展開されたらしい「Ziltoid」プロジェクトの一部でしかない、ということなのでしょう。ある意味では、とても贅沢?

 しかしまぁ、4部作構想と並行してこんなスケールのものを作ってしまうDevin Townsendは本当に凄いというか何というか。活動休止前の多作っぷりやその振り幅は病気や薬物の影響も大きかったと述懐していたはずだけど、克服してからの活動も全くギアが落ちていないように見える。根っからの音楽人なんでしょうな。

 

 今回の記事に合わせ、過去に書いていたDevin Townsendのソロ9作目でありアンビエントアルバム2作目になる作品の紹介記事の文章を少々見直しているので、よろしければ合わせてご覧ください。それにしても、なんか彼の作品の紹介文はただ「凄い」を連発しているだけのような気もするけど(汗)、いやほんとにそれしか表現のしようがない、素直な(そして稚拙な)感想ということでひとつ。