MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

THE MORTAL 『I AM MORTAL』

 BUCK-TICKのボーカリスト櫻井敦司によるソロプロジェクトの1stアルバム(2015年)。

 

 2004年の櫻井敦司名義の活動スタイルとは真逆とも言える、固定メンバーによるバンド編成のソロプロジェクトバンド・THE MORTALの同年発ミニアルバム『Spirit』に続くフルアルバム。テーマを「ゴシック」に定め、黒い衣装をまとい、バンド名に冠した単語通りに生と死のあらゆる場面/表情を歌うという徹底的にコンセプチュアルなスタンスを貫いています。メンバーのJake Cloudchairと村田有希生は前ソロにて楽曲提供を行い、三代堅はライブに参加、秋山タカヒコのみ初対面ながらも音楽的にはお互いに以前から共鳴していたようで、前ソロを踏まえた上での次なる一手として、櫻井敦司の核となるルーツや世界観をより深く追求すべく集まった仲間たち、という感じ。音楽的には『Spirit』で見せたまま80年代のゴシックロック/ポジティブパンクを彷彿とさせる妖しさや暗黒っぷりが表出しており、BUCK-TICKの『十三階は月光』とはまた異なる──なんというかもっと不気味かつ不穏な空気が支配する、そしてバンドの方法論や一体感に立ち返ったような荒くヒリついたサウンド。そしてその中を演じるように歌う櫻井敦司の詞やニュアンスまで含めた表現はやはり見事という他なく、『Spirit』から一気に幅の広がった楽曲群を華麗なまでに自らの闇に染め上げています。それでもあまり敷居の高いものになっていないというか、割と気楽に聴けてしまうのは、メロディの良さだったりライブ感も感じられるラフな演奏など、楽曲の魅力がシンプルに届くからなのかなと。実際、本作から受ける印象は魔王降臨!みたいな仰々しいものではなく、生と死を見つめる愛の詩人の物語…うーん、上手く言えないけどそんな感じだし。個人的にですけど。いずれにせよゴシックというジャンルの奥の深さや、櫻井敦司のより一層の魅力を存分に味わえる作品です。

 

 

 このバンド自体、テーマ的にどうしても「生と死」が頭をちらつくので、櫻井さんの逝去に深く傷ついた人にとっては、時と場合によっては聴くのにまだちょっと辛いものがあるかもしれないので、そこは要注意かも。

 本作の1ヵ月前にリリースされたミニアルバムと、ソロ名義でのフルアルバムの紹介記事はこちらから。それと、ソロとは異なるBUCK-TICK本隊の“闇”を今一度ということで、BUCK-TICKの7thアルバム『darker than darkness -style 93-』の紹介記事の文章を少々見直しています。よろしければ合わせてご覧ください。

 

 

 また、先日「櫻井敦司オフィシャルサイト」の開設が発表されました。THE MORTALやソロ名義の音源を始め色々な情報がまとめられ、今後も発信されていくようなのので是非ともチェックしておきたいです。