MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Devin Townsend Project / Ki

Ki

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 カナダ出身のヘヴィメタルシーンのマルチミュージシャン/プロデューサー・Devin Townsendのソロ通算11作目、Devin Townsend Project名義での1作目(2009年)。

 

 Strapping Young LadやThe Devin Townsend Bandといった自身のバンドを解散させ、完全ソロで制作した前作を境に音楽活動を一旦休止したものの、僅か2年のインターバルを経て復活。なんと自身の人生や音楽のアイデンティティをテーマにした4部作を展開する新プロジェクト "Devin Townsend Project" を発表。その1作目となる本作は、それまで共に演奏したことがなく、かつヘヴィな音楽ともほぼ無縁だったようなメンバーを集めたのだとか。そしてそれも頷けるような音楽性で、しっとりとしたギターインストの幕開けに続く「Coast」はブルージーなギターとウィスパーなボーカルが印象的だし、続く「Disruptr」も最小限の歪み演奏と呟きのような歌で進行し、徐々に盛り上がってもすぐに静かなトーンに戻っていくという。ほぼ全曲がこのように意図的に抑制され、音の隙間を活かすアンサンブルと、地中に沸々と存在するマグマのような爆発しきらないラウドなパートを行き来しながら、どこか物憂げで退廃的な美すら感じさせる独特な音や曲を形成しています。強烈な分厚さや高速連打によるエクストリームメタルを得意としていた過去作との乖離を思うと驚きを隠せないけど、アルコールやドラッグの影響もあったというそれら過去作との訣別(克服)、4部作の序章という壮大なる位置づけが、本作の特殊性を生み出したと言えるのかも。それに音への神経質なまでのこだわりや追求は、今も昔も方向性が違っても全然変わらないという証明でもあるかのよう。単なるアコースティックやアンビエントでは括れない、彼ならではの新しい音世界「氣」。興味深い一枚です。

 

 

 今回の記事に合わせ、だいぶ前に書いた彼が主宰するエクストリームメタルバンド・Strapping Young Ladでも名作と名高い2作目と、Devin Townsend名義での1作目となるソロ通算3作目の紹介記事の文章を少々見直していますので、よろしければ合わせてご覧ください。