MECHANICAL FLOWER

機械、金属、肉体、電子、幻想、前衛…そんな音楽が好き。

Devin Townsend 『Ziltoid The Omniscient』

Presents: Ziltoid The Omniscient

Presents: Ziltoid The Omniscient

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 カナダ出身のヘヴィメタルシーンのマルチミュージシャン/プロデューサー・Devin Townsendのソロ通算10作目、Devin Townsend名義での6作目(2007年)。

 

 過去作とは全く毛色の異なるジャケットが目に付きますが、ここに描かれているのは自身を模したZiltoidという宇宙人のキャラクターで、この人物が「タイムマシンの燃料である究極のコーヒーを求め地球を侵略する」というコメディストーリーを描いたロックオペラアルバムという内容。架空の物語を題材にした作品作りは実質初のソロ作『Cooked On Phonics』以来で、それと同じように曲間の一部で物語のナレーションが入る部分もあるけど『Cooked~』ほど冗長にはならず、お得意のプログレッシブな楽曲展開でしっかりとシナリオを具現化。その分1曲の中での曲調の切り替わりも激しいけど、ドラムマシンを用いるなどし全てを自身が演奏したというサウンドはかなりシンプルな作りで、ボーカルも激しいシャウトなどはあまり多くなく、曲ごとの主張よりは全体で語るべき部分に注力しているような良い意味でのマイルドさが勝り、決して重すぎない聴き心地。特に中盤に位置する「Hyperdrive」は一際目立つというか、過去曲でいう「Life」「Christeen」ばりにメロディアスに疾走する看板的な楽曲なんだけど、全編を張り上げず囁くような低音で歌うボーカルや、決して装飾過多にならない一歩引いたサウンドが新境地を思わせ、新たな代表曲になり得る名曲に仕上がっています。全体的にもコメディ色は音だけだとあまり伝わらず、これまでのソロ作品と並べても違和感なく聴ける鉄板の一枚。当時の彼はツアーなどの活動に疲弊しバンド活動の休止、前年に誕生した息子や家族との時間を優先したいという意向があり、そんな事情もやや特殊な本作の制作に繋がったようです。

 

 

 Devin Townsendはインダストリアル界隈との関わりや影響もあってその方面でも重要人物とされているけど、本質的にはもっと総合的にヘヴィメタル界の大物という感じだし、かつて管理人が影響を受けたCDレビューサイトで絶賛されていなければ興味を持つ機会もなかったかも知れません。しかし初めて聴いた瞬間から一発で心を奪われた感覚を今でも鮮明に覚えています。後づけで格好良く言えば、Strapping Young Ladで「音」と「曲」に、ソロ名義で「歌」と「声」に衝撃を受けたというか、そんな気がします。しかも驚くほど多作な上にどれも完成度が高く、今に至るまで一つ一つを楽しみにしながら追いかけさせてもらったアーティストです。

 そんな彼の作品も過去に紹介記事をいくつか書いており(古いものは16年前…!!)、今回を機に最初期の異なる名義での3作の文章を少し見直していますので、よろしければ合わせてご覧ください。